水色オオカミのルク

月芝

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245 集いし者たち

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 まっすぐに大地を駆ける青い姿がありました。
 水色オオカミの子どものルクです。
 北の極界と外界を隔てる海峡を越えてすぐに、海鳥たちに声をかけられました。そして知らされたのは、「緊急事態につき、すぐに戻れ」との西の森の魔女エライザからの伝言。
 なんでも白銀の魔女王のせいで、野ウサギの兄妹の身に何かが起こったらしいと聞いて、ルクはすぐに走り出しました。
 本気となった水色オオカミ。
 野を越え山を越え、湖や川の上すらもシュタタと駆け抜け、風をも追い越し光へと届くかという勢い。
 そんな調子にて草原を疾走しているルクへと、並走するかのようにして近づいてきたのは緑色のかがやき。
 ルクの師である翡翠(ひすい)のオオカミのラナです。

「ラナ! ひさしぶり。でもどうしてここへ?」
「トリたちがずいぶんとさわいでいたからね。ガロンのこともあるし、何より弟子が白銀の魔女王とことをかまえると聞けば、黙ってはいられないよ。私もいっしょに行く」
「ありがとう。すごくココロ強いよ」

 並んで走りながら再会をよろこぶルクとラナ。
 じきに陽が暮れて夜になりましたが、それでも二頭は足をとめません。
 月明かりの下で夜通し駆けつづけました。
 夜が明けてからも足を動かしつづけます。
 それでも地の国は広大です。フィオたちの住む森につくまでには、まだまだ時間がかかりそう。
 ふいに、陽がかげり影がさしました。
 とてもおおきな影です。それが三つも。
 長い首におおきなツバサを持つ影の形におどろいて、空を見上げたら、そこには三頭のドラゴンの姿がありました。

「よう、ルク。しばらくみないうちに大きくなったな。まぁ、つもる話はあとにして、とりあえず乗りな」

 赤サビ色のドラゴンのフレイアが自分の背を前足にて指し示す。
 すぐさま宙に水色オオカミのチカラで足場となる氷を造りだし、これを軽快にかけあがって、ルクはドラゴンの背に飛びのりました。

「そちらの方はわたしの背へ」

 黒いドラゴンのレプラにうながされて、ルクと同じようにしてその背に飛び乗ったラナ。
 水色オオカミたちがしっかり乗ったのを確認してから、前に躍り出たのは春の到来をおもわせるような、うすい桃色の花のような色をしたキレイなドラゴンのラフィール。
 彼女を先頭にして、まるで三角形を描くかのように後方の位置取りをしたレプラとフレイア。
 とたんに気流の流れが産まれて、グンと一行の飛行速度が加速する。
 渡り鳥たちの編隊のようですが、そこにドラゴンの、それも皇龍の一族の特別なチカラがこめられているらしく、加速がまだまだとまらない。
 それこそ夜空を流れる星にせまる勢い。まるで世界のすべてを置いてけぼりにしているかのよう。
 これに目を白黒させている水色オオカミの子どもに、彼をのせているフレイアが言いました。

「たぶん一対一で本気の勝負をしたら、いくらドラゴンのツバサでも水色オオカミには勝てないかもしれない。だけれどもこうなったら、まずだれにも負ける気はしないね」

 その声はどこか誇らしげにて、ドラゴンたちのすごさにあらためて感じ入るルクなのでした。



 ドラゴンの背に身をゆだねて、空を征くこと五日あまり。
 たったそれだけの時間にて、ついにルクたちは目指す場所へと到着しました。
 あまりにも速い移動速度、すさまじい移動距離、なによりその常識外れな移動手段。
 なにもかもが桁はずれ。その三つが合わさったからこその結果。
 しかしそれがルクたちにとって、とてつもなく有利に働いたことを彼ら自身も気づいてはおりません。
 なにせ白銀の魔女王側からすれば、北の極界からもどった水色オオカミの子どもの姿が、突如として消えてしまったようなものですから。
 いくら手下を分散して網を張ろうとも、トリたちの世界よりもなおずっと上の空を駆るドラゴンたちの姿はとらえられません。よしんばとらえたところで追いつくなんてとてもとても。
 せっかく人質を手に入れて、あとは水色オオカミの子どもをおびきだしてワナにはめるだけであったのに、その肝心のルクがどこにも見当たりません。これでは計画が進められません。
 コークスらも自分たちが手をこまねいているうちに、よもや相手が着々と逆襲の準備を整えていようとは予想だにしておりませんでした。
 もっとも、予想だにしていなかったのは、あれこれと反撃の一手を整えていたエライザたちも同じ。ただしこちらは次々と舞い込む幸運にいささか戸惑ってのことです。
 いきなりドラゴンを三頭も率いてあらわれたルクに度肝を抜かれ、その隣には翡翠のオオカミの姿まで。
 しかも同じタイミングで槍を手にした女性をのせたグリフォンまで駆けつけてきたものですから、森はけっこうな騒ぎになってしまいました。


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