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440 竹姫探検隊がゆく! ― 希望への架け橋
しおりを挟む未開のジャングルをビクビクしながら進み、野を越え、山を超え、谷をまたぎ、川を渡り、ときに穴倉に引っ込み、悪質ななすりつけ行為をくり返した末に、ようやく辿り着いたのが半島の北部域に広がっている湿地帯であった。
ここまで来るのに11日もかかった。じつに過酷かつ遠い道のりであった。
だがここさえ抜ければ、いよいよ本土である。
湾の海岸線に沿って移動していけば、いずれはあの霞の奥に見えた塔へと辿りつけるはず。
「しっかし、だだっ広い湿地だなぁ」
「くぅ~ん」
ふむ、向こう岸の様子がまったくわからんな。
霞ヶ浦ほどもあるのではなかろうか。
一帯にはつねに白い霧が垂れこめており、視界もあまりよろしくない。
しかも地面は泥濘にて、深くなっているところもあるだろう。
うっかり足をとられたら、そのままズブズブと……
水辺にもかかわらず静かなものである。
これまでの喧騒がウソのようだ。
不思議とここにはあの凶悪な怪獣たちも近寄ろうとしない。
だからとてセーフティーゾーンなんてわけもなく。
推察するに、ただの湿地というわけではないのであろう。
――では、そんな怪しい場所をどうやって進むつもりなのか?
ふっふっふっ、心配ご無用。ちゃんと考えてある。
はじめは竹の小舟でも浮かべて、悠々と渡ろうかとおもったんだけど、やっぱり止めた。
それだと転覆したらおしまいだからである。
命を預けるのに小舟ではかなり心許ない。
そこで浮き橋を架けることにした。
とはいってもそんなに上等なモノではなくて、単に竹を十本ばかり並べて、湿地の上を這うように、にょきにょきのばしただけの簡素なモノにて。
私こと竹姫ちゃんの能力は『竹を自在に操ること』である。
今回は初心にかえって、その能力を活かす。根元のところで直角に曲げてから、対岸までゾウタケをうにゅ~んとのばすのだ。
ゾウタケは私の前世では最大級の竹である。
日本の竹みたいに地下茎では繋がっておらず、株立ちし一ヶ所で叢生(そうせい・その場で群がりしげること)しながら繁殖する、自立心旺盛なスゴイヤツなのだ。
これをベースにして、私が存分にリグニンパワーを注ぎ込んだ竹姫印のゾウタケは、そこいらのコンクリートの陸橋なんぞは目じゃない耐久性を誇る。
もっともちゃんと橋脚で固定していないから、安定性にはいささか疑問が残るけどね。
竹の浮き橋を架けたら、足からリグニンパワーを注入しつつ進む。
こうすることで進みながら、橋になっている竹もずんずんのび続けることで、向こう岸まで安全に行っちゃおうという算段にて。
とどのつまりは、線路を敷きながら進む列車みたいなものかしらん。
「さてと、それじゃあ一丁、気合いを入れて橋を造りますか。ヘミは周囲の警戒をお願いね」
「わぉん」
私は湿地の岸辺から、目をつけていた場所へと移動すると、そこで「はぁあぁぁあぁぁぁぁーっ」
息吹を発し、下っ腹に意識を向ける。
とたんに丹田の辺りにてギュルギュルと回転をはじめたのは、リグニンパワーだ。
渦となり、寄り集まっては濃度を増すリグニンパワー。
集中……集中……集中……
練られたもの同士がさらに結びつき、絡まり合うことで、より高濃度体へと至る。
その過程でいっさいのムラやムダを排除し、より純粋かつ強靭なリグニンパワーを構成していく。
そうして充分に機が熟したところで――
「むむむむむ、滾れリグニンパワー! のびろゾウタケ! おいでませ、希望への架け橋!」
ひょこひょこと顔を出した芽たち。
それがみるみる大きくなっては、タケノコとなり、皮がむけて若竹となったところで、「そーれっ!」
腕を振り合図を送れば、生えた竹たちが一斉にお辞儀をして、ザブンと着水。
ずんずんと水や群生している葦をかき分け、押しのけ、にょきにょき育っていく。
たっぷりとリグニンパワーを注いでおいたので、あとはひたすらのびるにまかせておけばいい。
ひと仕事終えた私は「ふぃ~」と額の汗を拭った。
〇
尾瀬の木道を彷彿とさせる竹道。
我ながらいい橋を架けたと自画自賛する。
あくまで水に浮かべているだけだから、ヘミが踏むたびにぽよんぽよんと上下するのはご愛敬だ。
その反動を利用することで、ヘミは上手に橋の上を飛ぶように駆けている。
でもそんな順調な渡りにいらぬ茶々を入れるものがあらわれた。
「カァカァ」
鳴き声がするなと空を見上げてみれば、カラスがくるくる旋回していた。
さすがはカラスだ。こんな過酷な環境でもどっこい生き残っているだなんて。
などと感心していたら、そいつがみるみる降下してはこちらへと近づいてくる。
で、大きさが私の知るカラスとはぜんぜんちがうことに、遅まきながら気がついた。
翼竜サイズ!
空からの襲撃だ。
身を隠す場所も、逃げ道もない。
うーん、私が作ったのは希望への架け橋どころか、とんだ地獄橋であったのかもしれない。
だがこうなったらもう覚悟を決めるしかない。
「さて、どこまで通用するかわからないけど」
私は背負っていた竹ライフルを持ち直しては、向かってくるカラスへと銃口を向けた。
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