竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~

月芝

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462 竹姫探検隊がゆく! ― ペッカム

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 まるで壊れた吊り橋のようにのたうち、襲いかかってくる妖怪ムカデ女。
 これをヘミは前足の爪でもって迎え討つ。

 ジャッ!

 すれ違いざまに一閃。
 引っ掻いたのはムカデの女体の腹部だ。
 ひょうしに緑色した体液が飛び散る。

 ヘミはそのまま波打つ相手の背をシュタタと器用に駆けては、上へと向かう。
 ムカデ女はすぐさま身を翻して追いかけてこようとするも、そこをバン!
 私が竹鉄砲を放つ。
 弾丸はヤツの女体部分の左肩へと当たった。額を狙ったのだけれども、はずしてしまった。続けてもう一発放つも、そちらは身をひねってかわされてしまった。

 ムカデ女が自分の背にいる私たちを振り落とすべく、長大な体をいっそう暴れさせる。
 吹き飛ばされる前にヘミは離脱。
 最寄りの壁を蹴っては、エレベーターシャフト内をぴょんぴょん飛び回る。

「こっちの攻撃が通用する、イケるよヘミ!」
「わぉーん」

 ムカデの体の方は黒光りしている甲殻に覆われており、ちょっと難しそうだが、女体の方は防御力が低い。
 だから以降はそちらを重点的に攻めることにしたのだけれども……

「おかしい。ひょっとして見た目だけで、たいして効いてないの!?」

 ヘミの背にまたがった私たちは縦横無尽に飛び回りながら、隙をみて反転攻勢をかけること七度にもおよぶ。
 ヘミの爪により切り裂かれ、私の竹鉄砲に撃ち抜かれ、ムカデ女の女の部分は、穴だらけ体液まみれでひどい有り様となっている。
 にもかかわらずムカデ女はかわらず元気に暴れている。
 ばかりか口から「シャーッ」と毒霧をまき散らしたり、緑の痰みたいなのをプッと吐きつけてきたりと、下品な攻撃をくり返す始末。
 ちなみに緑の痰みたいなのは強酸性らしく、触れた箇所がしゅわしゅわ煙を吹いてじんわり溶けていた。

 さらには尻尾の先の二股も危険だ。
 先端が尖っており、内側は研いだ刃のようになっており、ハサミみたいにチョキンとしてくる。
 さらにさらに長い触覚をムチみたいに振り回したりもする。

「くそっ、意外と攻撃方法が多彩だ。やりにくいったらありゃしない。
 えーと、ムカデの弱点って何だったっけ」

 前世のこと、フィールドワークをしていればムカデに遭遇することなんてしょっちゅうであった。
 だから記憶を探ってみれば……

 ムカデの弱点について。
 その一。
 ムカデは熱にとても弱い。五十度以上のお湯をかけると即死する。
 その二。
 洗剤をぶっかける。ムカデの皮膚には気門という穴があり、そこで呼吸をしている。洗剤をかけると薄い膜がはって、息ができなくなってしまい、やがて窒息する。
 その三。
 ムカデは寒さにとても弱い。冷却スプレーをかけられたら、たちまち動けなくなってしまう。

 あらためて知識を絞り出してみると、けっこう弱点が多いな……ムカデ。
 とはいえ、どれもいま手元にない!
 あとは物理的に頭を叩き潰すぐらいしか思いつかないけれども、それならばさっきからずっとやっているのに、ちっとも死なない!

 攻撃そのものはちゃんと通ってる。
 なのに倒れないということは、効果がないということ。
 効いていないということは、あそこは弱点じゃないということになる。
 ということは……

「……はっ、まさか擬態か!」

 それもただの擬態じゃない。
 これは変態型擬態だ、それもペッカム型の。
 擬態は昆虫たちが生存するための重要な生存戦略のひとつ。
 変態型擬態は、自分の体を変化させて他の生物に似せること。
 ペッカムは攻撃に特化したタイプ。
 他にも隠蔽型や標識型になどもあるが詳細は割愛する。

「うわっ、ダマされた!」

 これみよがしに晒されていたセクシーな女体部分はフェイク。
 獲物を誘き寄せる囮だったり、敵の目を惹きつけたりするための飾りにすぎない。
 ようはチョウチンアンコウの提灯みたいなものだ。
 ムカデ女にとってはオデキみたいなもので、そんなところをいくら攻撃されたとて屁でもないという次第。

「……となれば、狙うべきは本当の頭部だ」

 場所はおそらく女体部分のすぐ下、ムカデの体との結合部あたりのはず。
 ならばあとはそこを重点的に攻めるのみ。
 というところで、しゅるしゅるり。
 のびてきた触覚がヘミの後ろ足にからみついたもので「あっ」

 という間に一本釣りされた私たちは宙をぶん回され、そのまま壁へと叩きつけられてしまった。
 壁にめり込むほどの衝撃にて、私とヘミは動けない。
 そこへ紅い目をした女体がゆるゆると近づいてくる。

 至近距離となったところであらわとなったのは、ヤツの真の頭部。
 予想した通りの場所にあって、じつに凶悪そうな面構え。
 うれしそうに牙をカチカチと鳴らすのが、とても耳障りであった。


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