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060 竹林の卑弥呼さま
しおりを挟む姫は姫でも、私は神秘を司るシャーマンな巫女姫だった!
「きゅうきゅうにょりつりょう、おんあびらうんけんそわか、ひとふたみよ、いつむよなな、やここのたり、ふるべゆらゆら、ふるべゆらゆらと、ふるべふるべ。
あぶらかたぶら、リグニンパワー、一粒万倍日、ご利益来々。
えーいっ! 逆らうヤツは呪っちゃうぞ、テヘ」
と怪しげな呪文を唱えれば、たちまち相手はヘロヘロになり、味方はパワーアップ……
な~んてことはもちろん起こらない。
生じた現象は、対象がちょびっとライトアップされて、ほんのり燐光を帯びることぐらいであった。
祝福であろうが呪いであろうが効果は同じ。
ただそれだけ。
ホタルにも負けそうな弱々しい明かりにて、何がしかのプラスなりマイナスなりの効果が付与されることもナシ。
その小さな輝きも、ほんの十分ほどで消えてしまった。
使い道としては、足下がおぼつかないほどの闇夜に、仲間を見失わないことぐらいしか、私には思いつけない。
とどのつまり、竹姫ちゃん(中)は竹林の卑弥呼さまに成り損ねたという次第である。
ちぇっ、もしも強力な呪術がバンバン使えたのならば、遠くからパンダクマどもを「もげろもげろ、もしくはハゲ散らかさせ」と呪ってやったのに……
「うーん……竹玉をもっとちゃんと作ったらまたちがうのかしらん? もしくは私がもっと大きく強くなったら、本当にゲームに登場する卑弥呼さまみたいに、呪術とか使い放題になるのかなぁ~」
この世界にはマギアという魔法みたいなモノが存在している。
禍々たちの使う超常の力、異能なるモノが存在している。
だから呪という摩訶不思議な力が存在したとておかしくはない……のか?
今度、ジュドーくんと竹通信をする時に訊いてみよう。
というか、そもそもの話、私の竹関連の能力は、禍々たち寄りの能力だとはおもうけど、連中とはちょっとちがう気がするんだよねえ。
なんていうか汎用性や拡張性において他の追随を許さない。ズバ抜けている。
もちろん私に前世の記憶が残っていたことと、竹に対するなみなみならぬ情熱および愛と知識があったればこそだけど。おかげでアイデアと工夫次第で壮大な竹文明を築けそうだし。
竹の可能性は無限大である。
「……使えないと断じるのは、いささか性急過ぎるか。いまはちょっとヤルことが多すぎて手が回らないけど、いずれ落ちついたらじっくり検証してみるとしますか」
というわけで、呪術に関してはいったん保留とする。
「どれ、そろそろ休憩を切り上げて戻るかな。あんまり竹瀝造りをサボっていると、ウンサイさんからドヤされるからね。
おーい、ヘミ~、そろそろ帰るよ~」
前世で庭師の祖父にべったり、じいちゃん子だったせいか、私はお年寄りにめっぽう弱い。
よって熟練した職人然とした雰囲気のウンサイさんには、頭があがらない。自分の方がえらいのにもかかわらず、ついヘコヘコしちゃう。なにげに彼だけ『さん』付けだし。
呼んだら、ハッハッと駆けてくる竹イヌ。
「おっ、今日は素直に言うことを聞くじゃん。えらいえらい」
と感心したのも束の間のこと。
ヘミは飼い主のところで止まらずに脇を通り抜けていった。
まだまだ遊び足りないとばかりに、軽快に駆けていくその背を、私は「待てこらーっ!」とリード片手に懸命に追いかけていく。
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