竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~

月芝

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073 姫、動く

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 溢れ出るマグマが、じわりじわりと荒れ地を浸蝕していく。
 瓦解した山頂跡より黒煙を吐き続けている。
 空をぶ厚い雲が覆い、地には火山灰が降り、砂塵と硝煙が垂れ込め……
 荒涼なる景色の中、発射音と爆発が間断なく続いている。

 銃弾と砲弾の嵐の中をハートは駆けていた。
 5メートルを優に越える巨体が四つん這いとなっては、ブルドーザーのごとく突き進み、真っ直ぐにこちらへと向かっている。
 ハートにはわかっているのだ。
 倒すべき敵のボス――竹姫ちゃん(中)こと、私のいるところが。

 目元や鼻先などのみを庇っては、近くへの着弾にて生じた爆発の余波に顔をしかめつつ、ときには直撃コースの弾頭を豪腕で叩き落とし、ねじ伏せ、払いのけ、迎え討ちながらハートはひたすら前へ前へと。

 ハートが止まらない。

 もっともこれは想定内にて。
 なにせスエッコですら止められない時点で、もっとも手強いハートをどうにかできるとはおもっていない。

「まぁ、さすがに徹甲弾を見切られたのには肝が冷えたけどね」

 このまま砲撃を続けてもムダ撃ちになる。私はイスケに中止を命じた。
 続けてお客さまを歓迎すべく次の準備に入るように指示する。
 自陣に踏み込まれるのは計算のうちだ。
 わざわざ目立つように竹要塞を建てて、三連山を遠くからチクチク攻撃していたのは、パンダクマ三兄弟を荒れ地より引きずり出し、私のテリトリーである竹林および竹要塞へと招くため。
 その第一の目的は、達成されつつある。

 竹要塞の周辺に敷いた第一陣、第二陣はスエッコにより突破されている。
 配置していた部隊はすでに下がらせており、ハートの進軍を止める者はいない。あの勢いならば、ほどなくして竹要塞の麓に到着するだろう。
 ヤツのことだ立ち塞がる罠の数々を蹴散らし、本陣まで来るはずだ。

「さてと、私もそろそろスタンバイするか」

 どっこらせと床机しょうぎから腰をあげるなり、近寄ってきた三人竹官女らがいそいそと世話を焼き、身支度を整える。
 それが終わり歩き出したところで、竹女武将マサゴ、竹僧兵ベンケイらが合流し、共に向かったのは、今回の戦いのために用意した『とっておきその一』が置いてあるところ。

  〇

 竹要塞の内部に設けられているのは、造船所のような場所。
 いわゆるドック……ようは格納庫だ。
 内部では大勢の竹工作兵らが、忙しなく動き回っては作業に従事している。

 格納庫を占めるようにして鎮座するモノ。
 これこそがウンサイさん率いる黒鍬衆、渾身の力作にして、我らカイザラーンが保有する最大級の大型決戦兵器である。
 いちおう自律可動はするが、コクピットにパイロットが乗り込み、操作することでこそ真価を発揮する。
 でもってそのパイロットを私が務める。

 あー、べつに出しゃばりとかじゃないよ。ちゃんと理由がある。
 いろいろあるけど、一番の選出理由は私に内蔵されている膨大なリグニンパワーだ。
 高出力かつ大きな機体を動かすのには、当然ながら莫大なエネルギーが必要となる。
 エネルギーについては充分すぎるほどストックがある。
 が、問題はそれを供給するための手段。
 このサイズになると、とてもではないが通常のリグニンコードでは供給が追いつかないのだ。
 家庭用と産業用では電源の規格がちがうようなもの。
 通常のコード複数での同時接続も可能だが、それをするとバランス調整がたいへん、処理すべき手順がぐんと増える。その分、反応や機動性に遅延が生じる。
 遅延といっても、ほんの一拍程度にも満たないものだが、実戦ではこれが怖い。

 これらの問題を一挙に解決するのが、私だ。
 私という存在は、いわば歩く大容量バッテリーみたいなものにて、これを搭載することでリグニンパワーをジャンジャン直接送り込める。

 ちなみにパイロットは私だけではない。
 大型決戦兵器は、その大きさゆえに操作系が非常にややこしい。
 がんばれば、ひとりでもやれないことはないが、それこそウンサイさんみたいに六本腕でもないと厳しい。
 より滑らかに、効率よく運用するにはメインパイロットだけでなく、サポートする者が必須。
 そこで複座式を採用した。
 手分けして協力し動かす。
 私といっしょに乗り込むのは、タマキ、ヒコノ、オヨウら三人竹官女たち。

「どう? すぐにイケる?」

 ウンサイさんに声をかけたら、無言のまま親指をビシっとOKサイン×6にて。
 問題ない。準備は万全にて、いつでも出られるようだ。
 だから私たちはコクピットに乗り込むべく、竹ハシゴのタラップに足をかけた。
 が、その前に……

「マサゴ、ベンケイ、あとは手筈通りにお願いね。イスケにはすでに準備に入ってもらっているから」

 立ち止まりふり返れば、竹女武将と竹僧兵が揃って力強くうなづく。
 互いにカンっと二の腕同士を軽く打ち合わせて鳴らし、別れの挨拶を済ませたところで私はハシゴを登った。


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