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078 黒雷
しおりを挟むガブリ――ブチリ!
壊れて動かなくなった第六の首を喰い千切ったのは、第八の首である。
ぷらんぷらんと邪魔だったので排除した。
「やってくれる。まさかあんな奥の手を隠していただなんて……にしても、真っ先にこの首を狙ったということは、それだけ厭だったということだよね」
ハートが溶解液を危険視したということ。
それだけに真っ先に第六の首を破壊されたのが悔やまれる。
だが、のんびりと反省している暇はない。
これまでの守勢から一転して、攻めへと転じたハートの猛攻が始まった。
黒い稲妻が地を駆ける。
それを第一の首の砲撃にて狙うも、あまりにも動きが速すぎてハートの姿を捉えきれず。
ならばと第三の首による火炎放射により進路を塞ぎ、さらには第七の首より大量の竹ヘビを放っては包囲網を形成し、その足を封じようと試みるも、そのことごとくが通用しない。
黒雷となったハートは、摂氏1500度を越え、マグマよりもなお熱い青い炎の壁を物ともせずに突き破っては、網の目のように張り巡らされた竹ヘビたちの間をすり抜ける。
第二の首全体をギュルギュルと回転させては、生えている剣刃たちにて巻き込み切り刻もうとするも、当たった端からバリン! バリン! と刃がへし折られ砕かれる。
巨大な槍である第五の首にて刺突を見舞うも、これは正面から拳ではじかれたばかりか、逆に掴まれゴキリメキリとねじ切られてしまう。
ここでハートがさらに追撃に出た。
いっきに接近、懐に飛び込んできては、こちらの胴体は胸の辺りを抉りにくる。
おそらくは奥にあるコクピットを狙ってのこと。
ギィイィィィィィン!
重たい衝突音が鳴り、生じた衝撃波にて周囲に垂れ込めていた粉塵が一斉に散った。
胸への一撃は辛うじて第四の首にて防ぐ。
だが雷撃までは防ぎきれず。
突き出されたハートの右前足、その爪を伝って黒い雷が向かってきた。
タケノヤマタオロチの表面を幾筋もの黒い稲光がめったやたらと駆け回り、疾駆する。
刹那、超体がビリビリと震え、あちこちで小爆発が発生しては、火が出て、黒煙をあげた。
「ちょ、ちょっと、ウソでしょう!? 竹は電気をろくに通さないはずなのに!」
幸いにもコクピット内にまでは届かなかったものの、私は「ありえない!」と大きく目を見張る。
なぜなら竹は絶縁体……とまではいかないけれども、伝導性はかなり低いから。
発明王さんが電球のフィラメントに日本の竹を使ったことは有名だけど、あれってば炭化したモノを活用したのであって、生の竹ではない。
タケノヤマタオロチの体表には様々な種類の竹がびっちり植生している。
ゆえに数千万から一億ボルトと云われている雷の直撃を喰らったとて、散らすから通常ではこれほどの被害は出ないはずなのだ。
それなのに……
「くそっ! あの黒い雷、いったいどれほどの威力なのよ? かすっただけでコレだなんて……もしも直撃を喰らう、もしくは直接体内にねじ込まれたら、さすがにヤバい」
想像しただけで、私の背を冷たい汗がつぅと流れる。
これ以上、組み付かれるのはマズイ。
私は操作にて機体を横回転させた。
これにより、ブゥンとしっぽの大薙ぎを放つ。
地を舐めるようにして極太の尾が迫る。
その姿はさながら走る城壁にて、いかに黒雷とてまともに当たればただではすむまい。
ハートもそう判断したのであろう、いったん退いて距離をとった。
雷光が閃き、一瞬にしてハートの姿は離れたところへと移動する。
これにより仕切り直しとなったものの、第六の首に続いて、第五の首も使い物にならなくされてしまった。
本体にも少なからずダメージを受けた。
被害状況の把握と、影響を最小限に留めるための復旧作業については、三人竹官女らががんばってくれているので任せておき、私はヤツにのみ集中できるのはありがたいけど……
「なんなのよ? あのいかれたスピード……破壊力もやっかいだね。
追い詰められて変身するとか、まるでヒーローみたいじゃない。しかもちょっとカッコいいし。
これじゃあ、まるで私たちの方が悪役みたいじゃないの。
でもね……」
第二形態の黒雷となったハート。
これまでとは別物である。
己が身を黒い雷と変えては目にも留まらぬ速度で移動しては、瞬く間にタケノヤマタオロチの首のうちの一本を斬り、胴体にも深々と爪痕を刻む。
いまのハートならば、たとえ至近距離から徹甲弾を撃ち込んだところで、ひょいと余裕で躱すだろう。こっちの攻撃がひとつも当たりそうにない。
はっきり言って、最強だ。
悔しいがそれは認めよう。
ハイボ・ロード種のようは優良種ではない、ただの禍々の身でありながら、ここまでの高見にまで至ったことは賞賛と尊敬に値する。さすがは私たちの宿敵だ。
でも、だからこそ私は気づいてしまった。
黒雷の弱点に……
強いチカラを行使するには、相応の対価、原資が必要だ。
私たち竹生命体においてはリグニンパワーがそれに該当する。
では、ハートの場合は?
地下茎もなければ、リグニンコードのような供給システムもない。リグニンパワーをじゃんじゃん作り出す動力炉の役割りを担っている私のような存在もない。
外部から取り入れる術がない以上は、蓄えていた分を放出するしかない。
「とどのつまり、ハートの第二形態にはタイムリミットがあるということ。あれほどの高出力だ。いかにヤツとてそれほど長い時間は持続できないはず」
だからこそ最初からあの姿にならなかったのだ。
じきにガス欠を起こす。あれだけムチャクチャな動きをしていれれば、いかに頑丈な体とて悲鳴をあげるはず。
そこに活路を見い出す!
ただし、こちらにも問題がある。それは……
「問題は、それまでこっちがもつかどうかなんだよねえ」
五分? 十分? 十五分?
さすがに三十分以上とかではないと信じたい。う~ん。
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