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100 月下の会談
しおりを挟む月の明るい夜であった。
待ち合わせ場所の丘へと私はおもむく。
お供は竹女武将のマサゴと竹女官ヒコノのみ。
サクタとどちらにしようか悩んだんだけど、竹侍将軍だと貫禄と威圧が凄すぎて先方をビビらせてしまうと考えて、彼女を連れていくことにした。
なおヒコノはおもてなし要員にて。
えっ、二体だけ? いくらなんでも油断し過ぎじゃないの……
心配ご無用、そこはそれ、ちゃんと考えてある。
じつは丘の周辺にはコウリン麾下の竹忍者軍団が潜んでおり、何か異変があればすぐに私のもとへ駆けつける手筈となっている。
また、さらに離れたところからは竹砲兵のイスケが目を光らせている。狙撃班がスナイパー竹ライフルを構えて、いつでも射撃できるようにスタンバイしている。
さらにさらに丘の下には地下茎が張り巡らされてあるので、ここはすでに私のテリトリー。その気になればどうとでも……といった次第にて。
丘の上に朱色の大きな竹染布を敷き、長椅子を並べ、赤い傘を立て、茶箱を設置する。
茶箱はお茶の道具一式が収納されている長櫃で、それ自体が調理台にもなり、いつでも茶釜で湯を沸かせるようになっている。なお火力はワイヤレス竹電式を利用した、なんちゃってIH式だ。三人竹官女のリクエストでウンサイさんが作ってくれた竹漆の逸品。
なお竹漆は、竹で編んだ文様と漆塗りぼかしを組み合わせたモノで、刷毛目のない美しい仕上がりと深い艶が特徴だ。漆を塗り重ねて竹の風情を表現する、めずらしい漆器工芸である。
屋外でお茶を楽しむ野点っぽく会場をセッティング。
本来であれば呼びつけたほうが饗応するのが筋なれども、まぁ、細かいことは気にすまい。
〇
月がちょうど丘の真上へと差しかかった頃。
ひゅるりと穏やかな西風が吹く。
それとともに上空より何かが、こちらへと近づいてくるのが目に入った。
飛ぶ……というよりかは、空に浮かんでいるかのよう。
水中を遊泳するクラゲを連想させる動きにて、ふわり、ゆらり、ぷかり。
十ほどの小集団にて。
「待ち人来たる、か。にしても、これはまた……」
やがて目の前に降り立った面々に、私はしばし言葉を失う。
雅な集団を率いていたのは、ひらひらと波打つドレスをまとった女性であった。
月の明かりを受けてきらめく長い髪は白銀色にて、肌もまた白い。
というか、目も唇もドレスも、何もかもが白い透明感のある貴婦人。
彼女の背後に控えている者たちも色こそはちがえども、みな美麗にて。
「こちらの呼びかけに応じてくださり、ありがとうございます」
貴婦人がドレスの裾をつまんでは、優雅にお辞儀をする。
配下の者たちも一斉にカーテシー。
これがまた絵になる。まるで歌劇のワンシーンを見ているかのようだ。
「わたくしはヒドロキシ・メチル・フルフラール。シャンピニオン・ロードの長ですわ。以後、お見知りおきくださいませ」
「あっ、これはどうもご丁寧に。私は竹姫、よろしくね」
なんと、貴婦人は女王さまであった。
が、それよりも驚いたのは彼女の発した単語である。
シャンピニオン・ロード!
ロードの名を冠する者。
それすなわち私と同じハイボ・ロード種だということ!
優秀であるがゆえに自己完結している。
だから他者との交流を必要としない。
用がないので、めったに人前にはあらわれず。
引きこもりが過ぎて半ば伝説・神格化しているような存在、それがハイボ・ロードという種族だ。
いろんなタイプがいるらしいとの情報は、ジュドーくんから聞いていたけれど。
よもや向こうから接触してくるとはおもわなかった。
ちなみに私は竹のハイボ・ロードにて、彼女はキノコなんだってさ。へー。
いわれてみれば、ひらひら具合とかが、どことなくキノコの傘の裏のひだっぽく見えなくもない。
……そういえば白いキノコで見た目はキレイだけど、食べたらイチコロゆえに「殺しの天使」とか「死の天使」なんて呼ばれていた物騒なのがあったっけか。
というかキノコを見た目で判断したら痛い目をみる。
素人がけっして手を出してはいけないモノの筆頭がキノコだ。
見た目にダマされてはいけない。
私は気を引き締めつつ、表向きは努めてにこやかに。
「まぁ、立ち話もなんですから」
彼女たちを茶席へと誘った。
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