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128 仮面プロジェクト始動
しおりを挟む「いや~、なんだかんだで、やっぱり我が家がいちばんだねえ」
緑風が薫る竹林の邸宅。
自室の縁側にて庭を眺めては、熱い竹茶をすすり、私はほっこり。う~ん、落ち着く。
地底にあるキノコの国より帰還した私は、昼下がりのひと時をまったり過ごしつつ、留守にしていた間に起きたことや、集めた情報をまとめた報告書の束に目を通していた。
「ふむふむ……、あちゃ~、イーカリオスってばやっぱり下手を打ったか」
イーカリオスというのはアンスロポス族の国だ。
私の前世でいうところのホモサピエンスっぽい連中の集まり。けっこうな大国にて栄えているものの、プライドが高くて選民思想が強めなのが困りモノ。
マギアの扱いに長けていることを鼻にかけて、「自分たちこそが優れている」とかんちがいをしており、他の種族を見下しては方々でトラブルを起こしている。
身分制度がっちがち、男尊女卑にて奴隷制度まであって、ぶっちゃけいけ好かない。
うちとしては今後も積極的に関わるつもりはまったくない。
そんなイーカリオスの王さまがこれまた酷かった。
感情にまかせての短慮が多く、失策に次ぐ失策を重ねたあげくに、ケラスィアという多民族国家に戦争をふっかけた。
損した分を略奪にて取り戻そうとしたのである。あとは国民からの批判の矛先をそらす狙いもあった。
が、結果は引き分けに終わる。
急な天候の変化により、両軍ともに戦いどころではなくなったのだ。
そして悪い事は重なるもので、これに前後してイーカリオスでは叛乱が勃発する。国軍の主力が出払っている隙を突いて、圧政に苦しんでいた辺境の諸侯らが一斉に蜂起した。これによりイーカリオスは内乱へと突入し、他国との戦争どころではなくなってしまったという次第。
まぁ、愚王の自業自得と言えなくもないけれど。
ただし、この騒動の裏には手引きした第三国の影がちらついているという。
おー、キナ臭いったらありゃしない。
で、この騒乱なんだけど、現在は国を真っ二つに分けてのにらみ合いになっているそうな。
愚王が率いる北イーカリオス。
叛乱軍がどこぞより見つけてきた、王家の血筋を引く青年を旗頭にした南イーカリオス。
互いが自分たちの正統性を主張しては、相手を詰り攻撃している。
だがこの状態は一国に二つの政府が存在しているようなもので。
「まるで南北朝時代、もしくはローマの分割統治しらん。どっちにしろ巻き込まれる民草こそがいい迷惑だよ」
この内戦の影響は周辺諸国にも及んでいる。
戦火に追われて逃げてきた難民たちのみならず、物流も滞り、その他もろもろ、経済も混乱気味。大国の揺らぎは、時に余波を誘発する。
対岸の火事だと油断していたら、おもわぬ飛び火を貰って延焼しかねない。
だから各国ともに、イーカリオスの動向には目を光らせている。
おかげで情報収集のために派遣された目――諜報員どもがひしめき合っており、現在のイーカリオスはスパイ天国さながらなんだと。
けれども、そう悪い事ばかりじゃない。良い事もあった。
それは知識と技術の流出である。
難民の中にはマギアの扱いに長けた者や、職人なども混じっていたのだ。
これまでは国によってガッチリ囲われており手が出せなかった。それが向こうからやってきてくれたのだ。これを逃す手はない。
ゆえに周辺国は積極的に難民を受けれては、有益な人材や情報の確保に努めている。
「やれやれ、この分だとイーカリオスがほぼ独占していた特別な武具や装備類の製造法を、他国が手に入れるのも時間の問題だね」
国家的損失どころではない。
そして新しいオモチャを手に入れた者は、きっと遊びたがるだろう。
どうやら本格的に混迷の時代が始まろうとしているようだ。
まったく……イーカリオスの愚王は、とんでもないヘマをやらかしたものである。
「……にしても難民か。うちとしてはどうでもいいけど、もしもそのなかに芸術家とかお面職人とかが混じっていたら欲しいかも」
我らカイザラーンはハイボ・ロード種にて、他の勢力とは一線を画した存在。
自称・優良種とはちがう、本物なのだ。
が、悩みがまったくないわけではない。
それは顔――
みんながみんな、棒線でピッピッと描いたモブ顔をしている。
竹姫であるこの私ですらが手抜きのモブ顔。
これは誕生から現在に至るまで、ボディ性能の向上と自陣営の強化を優先するあまり、顔の造形を二の次にしてきたせいだ。
「今後のことを考えたら、そろそろ着手すべきか」
しかしこのお面造りが、いっとう難儀にて。
幾多の発明と開発を成し遂げ、我らカイザラーン陣営を裏から支えてきた、匠の技を有するウンサイさんの六本腕をもってしても、お面造りだけはむずかしい。
たしかに、それっぽくは造れる。
けど芸術分野となると、まるで門外漢にて。
竹林や庭園などは整えられても、こういうジャンルに必要とされる技量やセンスは、まったくの別なのだ。
あいにくと、うちの陣営には芸術的感性に特化した子はいなかった。
「アンスロポス族の装飾品とかを見た限りでは、美的センスはまぁまぁなんだよねぇ。とりあえずジュドーくんに探らせてみるかな。もしかしたら掘り出しモノがあるかもしれないし」
希望は腕のいい能面師だけど……はて、こっちの世界にも能面師っているのかしらん?
もしもお眼鏡に適う人材がいたら、パトロンになるのもやぶさかではない。
見つかったら、いいな。
というわけで、いまから仮面プロジェクトを始動します。
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