竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~

月芝

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213 滅亡までのカウントダウン ― 五日目、その五

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 大量の真珠と大きな貝柱をゲットし、私はホクホク顔。
 予備のバラストにワイヤーで括りつけては、プシュウゥゥゥ。
 重しとて貯蔵していた水を抜けば、即席の浮き袋の出来上がり。
 あとは勝手に海の上まで運んでくれるので、回収はあちらで待機している別班にまかせるとして……

「沈んでいる船の積み荷のなかにも、金銀財宝とかのってないかしらん?」

 沈没船でのお宝探し。
 これぞ海洋冒険ロマンの醍醐味であろう。
 いや、もちろんちゃんとわかっている。
 第一目標はクグノチの木片にて。
 でも、こんだけがんばっているんだもの、ちょっとぐらい楽しんだっていいでしょう。

「にしても、よくもまぁ、短期間にこんだけあちこちに分散させたものだよ。おかげで付き合うこっちも勢いのままに、大陸一周をしちゃいそうなんだけど」

 でも、そうやって付き合っているからこそ、よく理解できる。
 これは行き当たりばったりの犯行じゃない。
 旅程とか、ルート選定とか、緻密に組まれた上での行動だ。
 でなければ、ここまで拡散されていないだろう。

 かなりの難易度である。
 なにせこちらの世界には、私の前世にあったような情報網も流通網も交通手段もないのだから。
 加えて過酷な自然環境、文明圏を一歩出れば危険な生き物がうようよ。
 いかに魔法みたいなマギアが使えたり、それを応用した便利な道具や、種族ごとの特殊能力があるからとて、生半可なことではない。

 その他、今回の活動を通じて感じた諸々を吟味すると……

「すくなくとアイツには、こんな絵図面、天地が引っくり返ったとしても描けやしないよ」

 アイツとは愚王――イーカリオスのざんねんな王さまのことだ。
 このヒト、私が知るだけでも大きな失策をいくつも重ねている。

 何かと口うるさい忠臣らを遠ざけて、身の回りをイエスマンだけで固めての、贅沢三昧の日々。
 怒りの感情に任せて、樹海へパンダクマことシロクロコムの討伐軍を派遣するも、全滅させたのを皮切りにして、落ちた求心力と批判の矛先をかわすためだけに、ケラスィアに戦争を吹っかけたとおもったら、ゴタゴタのさなかに辺境の領主らが一斉に蜂起して反旗を翻し内乱を勃発させる。
 しばらく北と南に別れて争ったあげくに、よもやの勝ちを拾ったとおもったら、さっそく始めたのが国内情勢の安定化をはかることではなくて、自分を裏切った者たちへの苛烈な報復であった。
 そのせいでただでさえ混乱していた国内は、さらなる混乱へと陥り、優秀な人材やら技術を多数国外へと流出させてしまう。
 それがさらなる世情不安を煽り、あちこちで紛争を誘発し、ついには世界大戦をも引き起こした。

 ぶっちゃけここまでやって、まだ国が滅んでいないのは、腐っても大国だったことと、これまでの貯金、あとはアンスロポス族至上主義が根強い風潮のおかげ。
 チカラでねじ伏せても反発するし、懐柔しようと甘い顔をすればすぐにつけあがる。
 プライドだけは一丁前で、ちっとも言うことをききやしない。
 そんなやっかいな土地を統治するとか、ほとんど罰ゲームみたいなものであろう。
 だから、各国ともにちょっかいは出すし、有益そうな人材を保護の名目で引き抜いたりはすれども、直接乗り込もうとはせず……

「残った奸臣のなかに、ひとりぐらい頭の回るのがいて、そそのかされている可能性も否定はできないんだけど、う~ん」

 それならそれで、やはり意味がわからないのだ。
 クグノチをブチ切れさせて、いったい何がしたいのやら。
 などと考えているうちに、ついに見えてきました、目標の沈没船。

「うわ~、おもってたよりも大きいじゃない。これは短期間でのサルベージはちょっと無理かも」

 なにせ全長300メートルほどもあり、型幅は40メートルぐらい。
 推定十万トン級にて、超大型豪華客船ほどもあるではないか。
 うーん、氷山にぶつかって沈没したあの船を彷彿とさせる立派な外観である。
 だがしかし……

「だからこそ妙なんだよねえ。こっちの世界ってば、外洋に出られないから船舶の運用はもっぱら、内地の湖とか河川になるのに」

 ゆえに海での船は、陸地に沿って移動する「沿岸航法」により航行されている。
 なのに大型船は世界の海を股にかける外航仕様なのだ。
 技術と実態が不自然に乖離している。

「ひょっとしたら、これもまた空白の千年期とやらの影響なのかもしれないねえ」

 などとつぶやきつつ、潜水艇を操作しては沈没船の周囲をぐるぐる。
 すると船底付近に大きな穴が開いているのを発見した。
 どうやらこれが致命傷になったとおもわれるんだけど。

「まるで、でっかいサメにでもかじられたかのような痕なんですけど……。えー、比較的安全とされている、近海でもそんなのがいるの!?」

 だとすれば、ますますうかうかとはしていられない。
 さっさとクグノチの木片を回収しないと。
 私は二号艇には周囲の警戒を、三号艇にはワイヤーで沈没船を固定し、これ以上海溝側へと滑り落ちないように処置することを頼み、船底の大穴から内部へとゆっくり侵入していく。


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