213 / 475
213 滅亡までのカウントダウン ― 五日目、その五
しおりを挟む大量の真珠と大きな貝柱をゲットし、私はホクホク顔。
予備のバラストにワイヤーで括りつけては、プシュウゥゥゥ。
重しとて貯蔵していた水を抜けば、即席の浮き袋の出来上がり。
あとは勝手に海の上まで運んでくれるので、回収はあちらで待機している別班にまかせるとして……
「沈んでいる船の積み荷のなかにも、金銀財宝とかのってないかしらん?」
沈没船でのお宝探し。
これぞ海洋冒険ロマンの醍醐味であろう。
いや、もちろんちゃんとわかっている。
第一目標はクグノチの木片にて。
でも、こんだけがんばっているんだもの、ちょっとぐらい楽しんだっていいでしょう。
「にしても、よくもまぁ、短期間にこんだけあちこちに分散させたものだよ。おかげで付き合うこっちも勢いのままに、大陸一周をしちゃいそうなんだけど」
でも、そうやって付き合っているからこそ、よく理解できる。
これは行き当たりばったりの犯行じゃない。
旅程とか、ルート選定とか、緻密に組まれた上での行動だ。
でなければ、ここまで拡散されていないだろう。
かなりの難易度である。
なにせこちらの世界には、私の前世にあったような情報網も流通網も交通手段もないのだから。
加えて過酷な自然環境、文明圏を一歩出れば危険な生き物がうようよ。
いかに魔法みたいなマギアが使えたり、それを応用した便利な道具や、種族ごとの特殊能力があるからとて、生半可なことではない。
その他、今回の活動を通じて感じた諸々を吟味すると……
「すくなくとアイツには、こんな絵図面、天地が引っくり返ったとしても描けやしないよ」
アイツとは愚王――イーカリオスのざんねんな王さまのことだ。
このヒト、私が知るだけでも大きな失策をいくつも重ねている。
何かと口うるさい忠臣らを遠ざけて、身の回りをイエスマンだけで固めての、贅沢三昧の日々。
怒りの感情に任せて、樹海へパンダクマことシロクロコムの討伐軍を派遣するも、全滅させたのを皮切りにして、落ちた求心力と批判の矛先をかわすためだけに、ケラスィアに戦争を吹っかけたとおもったら、ゴタゴタのさなかに辺境の領主らが一斉に蜂起して反旗を翻し内乱を勃発させる。
しばらく北と南に別れて争ったあげくに、よもやの勝ちを拾ったとおもったら、さっそく始めたのが国内情勢の安定化をはかることではなくて、自分を裏切った者たちへの苛烈な報復であった。
そのせいでただでさえ混乱していた国内は、さらなる混乱へと陥り、優秀な人材やら技術を多数国外へと流出させてしまう。
それがさらなる世情不安を煽り、あちこちで紛争を誘発し、ついには世界大戦をも引き起こした。
ぶっちゃけここまでやって、まだ国が滅んでいないのは、腐っても大国だったことと、これまでの貯金、あとはアンスロポス族至上主義が根強い風潮のおかげ。
チカラでねじ伏せても反発するし、懐柔しようと甘い顔をすればすぐにつけあがる。
プライドだけは一丁前で、ちっとも言うことをききやしない。
そんなやっかいな土地を統治するとか、ほとんど罰ゲームみたいなものであろう。
だから、各国ともにちょっかいは出すし、有益そうな人材を保護の名目で引き抜いたりはすれども、直接乗り込もうとはせず……
「残った奸臣のなかに、ひとりぐらい頭の回るのがいて、そそのかされている可能性も否定はできないんだけど、う~ん」
それならそれで、やはり意味がわからないのだ。
クグノチをブチ切れさせて、いったい何がしたいのやら。
などと考えているうちに、ついに見えてきました、目標の沈没船。
「うわ~、おもってたよりも大きいじゃない。これは短期間でのサルベージはちょっと無理かも」
なにせ全長300メートルほどもあり、型幅は40メートルぐらい。
推定十万トン級にて、超大型豪華客船ほどもあるではないか。
うーん、氷山にぶつかって沈没したあの船を彷彿とさせる立派な外観である。
だがしかし……
「だからこそ妙なんだよねえ。こっちの世界ってば、外洋に出られないから船舶の運用はもっぱら、内地の湖とか河川になるのに」
ゆえに海での船は、陸地に沿って移動する「沿岸航法」により航行されている。
なのに大型船は世界の海を股にかける外航仕様なのだ。
技術と実態が不自然に乖離している。
「ひょっとしたら、これもまた空白の千年期とやらの影響なのかもしれないねえ」
などとつぶやきつつ、潜水艇を操作しては沈没船の周囲をぐるぐる。
すると船底付近に大きな穴が開いているのを発見した。
どうやらこれが致命傷になったとおもわれるんだけど。
「まるで、でっかいサメにでもかじられたかのような痕なんですけど……。えー、比較的安全とされている、近海でもそんなのがいるの!?」
だとすれば、ますますうかうかとはしていられない。
さっさとクグノチの木片を回収しないと。
私は二号艇には周囲の警戒を、三号艇にはワイヤーで沈没船を固定し、これ以上海溝側へと滑り落ちないように処置することを頼み、船底の大穴から内部へとゆっくり侵入していく。
22
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
【流血】とある冒険者ギルドの会議がカオスだった件【沙汰】
一樹
ファンタジー
とある冒険者ギルド。
その建物内にある一室、【会議室】にてとある話し合いが行われた。
それは、とある人物を役立たずだからと追放したい者達と、当該人物達との話し合いの場だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる