竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~

月芝

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264 お月さまとヘソのごま

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 ごくり……

 じっと見つめていると吸い込まれるような感覚に襲われるときがある。
 あの流れに身を任せたいという衝動が、ふつふつと湧く。
 その度に強く念じて、己を保つ。
 これは視えない繋がり、私のリグニンコードと似たような存在だ。
 ただし規模も桁も内包されているパワーも、お月さまとへそのゴマほどもの差があるけれど。

 努めて冷静に観察を続けるうちに、私は気がついた。
 いま自分が視ている光景が、通常の地下とはちがうということに。

(……たんに地面を掘り進めても、きっとここには辿りつけない。もしもそれで発見できるのならば、とっくに私たちやフルフラールたちが発見しているはずだもの)

 我らカイザラーン、なんだかんだで、けっこう地面をほじくり返している。
 フルフラールら、シャンピニオン・ロードに至っては地底の大空洞に居を構えている引き篭もりだ。
 だが、彼女たちもこんなモノがあるなんてひと言も口にはしていない。
 つまりこの膨大なエネルギーの奔流である光の帯は……

「ひょっとして特定の場所からしか至れないのか!?」

 パワースポット、あるいは龍穴……霊的な力が満ちているとされる地点。
 前世でも「ここに行ったら運気アップ!」みたいなことを謳っている、うさんくさい観光地はごまんとあったけど。それとはちがう。
 正真正銘、本物だ。
 そしておそらくは……

「……これが、これこそがイーカリオス国の……いや、赤目のイペアンスロポスの目的だったんだ。きっとそうにちがいない」

 すごい力である。
 なにせその土地に竹を植えたら、森林限界なんぞは知ったこっちゃねえとばかりに、わさわさになる。
 膨大な鉱床もたぶんこいつの影響だ。ちょろちょろ漏れ出ている分だけで、お宝ざっくざく。
 広範囲に渡って大地の在り方そのものを変質させるほどの力。
 恩恵というにはあまりにも過剰すぎる。
 もしもあの力をコントロールして、利用できる術があるとしたら、とんでもないことである。
 それこそ天変地異を自在に操れるのではなかろうか。

「だからこそずっと封印されていたのかしらん。たしかに、これはヒトの手にはあまる。
 ……ん? いや、ちょっと待てよ。もしかしたら……」

 あることを思いつき、私はサーっと血の気を失った。
 とはいえ、もともと血なんて通ってないけどね。なにせ竹人形の身の上なもので、あくまで感覚的なことである。

 まぁ、それはさておき、何に私が戦慄したのかといえば、それは「そもそも論として、あんなの制御できるの? さすがに無理じゃね? だとしたら最初からコントロールなんてするつもりがなかったりして」という考えである。
 とどのつまり、連中の狙いはこの力を我が物にすることなんぞではなくて、暴走させることだとしたら……

「なんだかやれそうな気がする……地上と繋いでやったら、いっきに噴出しそう」

 それこそ間欠泉のごとく!
 もしもそんなことになったら、いったいどのような影響や被害が出るか想像もつかない。

「……あれ? なにげにクグノチの騒動レベルの世界の危機なのではなかろうか」

 と考えたところで、タイムアップ。
 さすがにこれ以上、光の帯の近くに留まるのはマズイ。
 ここには時間の感覚がないせいか、想像以上に精神を消耗するのだ。
 なのでいったん引きあげることにする。

  〇

 意識が本体に戻ったとき。
 私はマサゴにひざ枕をされていた。
 すぐに起き上がろうとするも、うまいこと体が動かせない。
 かろうじて首は動くが、体の方はカタカタと変な痙攣をしており、手足が言うことをきかない。
 光の帯と同じ空間にいて、長いこと凝視していた余波だ。
 リグニンコードや体内の力の流れ、情報の伝達がかき乱されている。
 再接続と修復作業に入っているみたいだけど、復旧するのに少しかかりそう。

「う~ん、まいったねこりゃ。強力な電磁パルスみたいなものかしらん。さいわい断裂したり壊れたわけじゃないから、しばらくしたら元に戻るとおもうんだけど……――っ! しまった!」

 視界の片隅をサッとよぎった小さな白い影。
 寝かされている状態だから気がつけた。
 あれは紙の人形が変じた小鳥だ。
 ぬかった! こっちが向こうを探っているのと同じく、向こうもこっちの動向を探っていたのだ。もしくはあえて泳がすことで、探偵役をやらされたのかもしれない。
 くそっ、いいように利用された。

 この事態にすぐさま反応したのはイスケである。
 腰のホルスターから竹鉄砲を抜き、ズドン――
 目にも留まらぬ早撃ちにて、狙いあやまたず。
 紙の小鳥を撃ち落とす。
 でも、それに前後してカササササという音が地面の方から、かすかに聞こえた。
 どうやら鳥型以外にもネズミを模したモノも隠れ潜んでいたらしい。
 すでに姿はなく、私の探査網にも引っかからない。
 まんまと逃げられてしまったらしい。

「マズイ、向こうにお宝の場所がバレた。なんとしてもここは死守しないと」

 まだ動けない私は、寝たままですぐに防衛拠点を構築すべく指示を出した。


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