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281 カイザラーン鉄道史
しおりを挟む現在の世界情勢はちょっとしたインターバルみたいなもの。
赤い目のイペアンスロポスも蠢動している。
どうもあの赤目たちは、世界に騒乱の種をまき散らしては、あわよくば……みたいなことを企んでいるっぽい。
クグノチによれば「アレはタダのセイソウイン」とのことだったけど。
清掃員――
わかっているのは連中がなんらかの形で世界に関与しているということだけ。
ハイボ・ロード種とはちがうらしい。
それ以上は禁則事項に触れるとかで、教えてもらえなかった。
この世界の住人たちは、私の前世の世界と比べてもけっして愚鈍ではない。
優れた技術を持つ者、知識が豊富な者、賢い者などが多々。
そんな者たちが、何も考えつかないわけがない。
マギアなんて魔法みたいな力があり、道具に付与して応用する技術があり、種族ごとの固有能力もある。禍々たちはやっかいだけれども、あれらの異能から参考にすることは多い。
発展すべき芽はあるはずなのだ。土壌だってそれなりに整っている。
なのにちっとも育っていない……
いや、ある程度まで育ったところでピタリと止まって、足踏みしているかのよう。
ひょっとして何者かに邪魔をされているのか?
技術や文明の発展、歴史の流れなどが意図的に捻じ曲げられたり、断ち切られたりしている。
それこそがどこか歪なこの世界の原因にして、関与しているのが清掃員ではないかと私はにらんでいる。
「ぐははははは、汚物は消毒、消毒ぅ! この穢れた世界を浄化するのだーっ!」
とかみたいに、あの赤目たちってば妙なテンションで悪ノリしているっぽいんだよねえ。
本来はこの世界にとって害になるものを排除するだけの役割だったはずなのに、いつの間にか話が大きくなって、自分たちのことを世界の統括者みたいに勘違いしているとか。
「環境保護のいっかんかもしれないけど、あれはあれで難しいんだよねえ」
よかれとおもってやったことが、裏目に出るなんてしょっちゅうだ。
むしろ余計なことをせずに、じっとおとなしくしていることこそが一番環境に優しいのでは? と首を傾げることも多々にて。騒いだら騒いだ分だけ、いろんなものが浪費されているし。
エコバックとか理念は理解できるけど、結果として大量のゴミを量産しただけのような気がするし。
あれを使うぐらいならば、風呂敷を活用した方がずっともっと環境に優しいと思う。
再利用うんぬんじゃなくて、大量生産と大量消費の文化をまずどうにかしたほうがいい。
先人たちの知恵の宝庫、江戸時代を学ぶといいよ。
「まぁ、それはさておき、なんじゃこりゃーっ!?」
地の底で私はおもわず叫んだ。
場所は第二都市スズタケの地下にある秘密のステーション。
ここから竹の都に直通の地下鉄が通っているものの、利用者は私と私の周囲のごく一部のみにて都市の住人たちは存在すら知らない。
ジュドーくんからいろいろ話を聞いた後。
フルフラールはもう少し幼女を愛でてゴロゴロしていくというから、苦笑いしているジュドーくんに預けてひとり帰路についたんだけど。
地下鉄で帰宅しようとおもって駅にやってきたら、駅構内や車両がすっかり様変わりしており、びっくらポンや!
駅そのものがSFちっくになっている。
竹で組んだ「これぞ地下鉄」というデザインで、ガタンゴトンと走っていた車両が、青竹の筒を三本連結したシンプルかつスタイリッシュなモノになっていた。
さらに車輪はなく、線路までも見当たらないではないか?
「というか……よくよく見ってみたら、ちょっと浮いてるじゃない!?」
超電導磁気浮上式鉄道――リニアモーターカー!
少し出かけている間に、カイザラーンの鉄道史がとんでもなく進化しちゃってた。
地下鉄は時速100キロぐらい。
比べてリニアは時速500キロオーバーだ。
ちなみに新幹線は時速300キロほど。
いきなり五倍である。
何事にも順序というものがある。
これはいくらなんでも、間をすっ飛ばしすぎであろう。
「うぅ、うちの子たちが優秀すぎる。ちょっと目を離しだけでこれだもの……というか、こんなの清掃員どもにバレたら、確実に抹殺対象にされちゃうじゃない!」
私は頭を抱えた。
なお竹リニアの乗り心地はとても良かった。
ビューンと滑走して、あっという間に目的地に到着である。
振動はほとんどせず、静かなものである。
乗車時間はわずか十分。
おかげでのんびり腰を落ち着ける暇もありゃしない。
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