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323 天下一武闘会・四番目
しおりを挟むボーン、ボーン、ボーン……
霧の中に響くのは古時計の音。
それにともなって崩れた楼閣や、割れた石舞台、都内のあちこちに生じていた陥没などが回復していき、元通りになっていく。
ボーン、ボーン、ボーン、ボーン……
それにしても映像を逆再生しているかのような光景は、何度みても気持ちが悪い。
どうにも怖気が走る。
蘇った亡者たちよりも、よほど嫌悪感を抱かせる。
不変であるはずの時の流れ、それを逸脱している現象のせいであろうか。
ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン――
古時計の音が止まった。原状回復も完了する。
(……にしても、また同じ回数か。再生には法則なり、決まりでもあるのかしらん)
時計の音がしたのは、きっかり13回であった。
深愛のディレクティオの能力なのだろうけど、あの女は時を操る魔女なのか?
だとしたら、とんでもないこと!
(でも、なんでもかんでも自由自在にとはいかないみたい。個人? 故人? とか特定の場所とか、限定した対象にしか力を使えないっぽいし。もっともそれでも充分に脅威なんだけどねえ)
戦いの合間に、こそっと観察やら考察を重ねているけれども、まだまだ情報が足りない。
一方で、こちらは一戦ごとの手の内を晒すことになっており、手札がみるみる減っていくばかり。
「う~ん、このままいくと五番目を終える頃には、丸裸にされちゃっているかも。それはいささかマズイよねえ」
とはいえ、じつは光明というか、ディレクティオの能力の穴みたいなのも発見してある。
それを教えてくれたのは神殺しのケルトだ。
あの古強者……なんだかんだで最後まで自分の流儀を貫いていたようにおもう。
その前に戦った天弓のミライアは、ただただ『獲物を狩る』『敵を倒す』のみに徹した行動にて。そこに熱はなく、おそろしく淡々としていた。
一方でケルトは完成された騎士として、あくまで剣での勝負を求めた。
「ぶっちゃけ、サクタ以外、あまり眼中になかったみたいだし」
あー、つまり私が何を言いたいのかというと、英霊の亡者たちってば召喚主であるディレクティオの命令には従っているけれども、必ずしも絶対服従しているわけじゃないということ。
ひょっとしたらディレクティオの気まぐれひとつで、体の自由とかを奪われて言うことを聞かされるのかもしれないが、少なくとも心や魂のすべてまでもが支配されているわけじゃないっぽい。
ディレクティオが厳選した英霊たち。
強さはもとより、魂の輝きも他とは一線を画す。
彼女の誘いに応じ、差し出された手をとったとはいえ、だ。
そんな魂の持ち主が、他者にいいように使われ続ける?
本当に?
……私はそうはおもわない。
いろいろと制約を受ける中にあってさえ、我を貫いていたようにおもえる。
ミライアはミライアなりに、ケルトはケルトなりに。トムラウシは……ちょっとわからない。
この考え……希望的観測といえばそれまでだけれども、じつは私には確信めいたものがある。
目だ。
砂漠にて再び相まみえた不倶戴天の敵。
その双眸、奥底には以前と変わらぬ、いやそれ以上にも増した強い妖光があった。
唯我独尊。
何人とも並び立たず、また何人の下にもつかず。
天上天下、あるは自分のみ。
傲岸、不遜、暴慢、渇望、執着……
それらが凝り固まったものを、私は確かに視た。
(アレが……あの暴虐なる王が、いつまでもおとなしくしているもんか)
従順なフリをして、おそらく隙を伺っている。
はめられた窮屈な首輪を引き千切り、再び自由を得るための機会を虎視眈々と。
そして案の上というか、予定調和というか。
残りが二枚となった対戦カード。
ディレクティオが引いたのは、禁忌なる者『人工生命体ムジーナ』の名が記されたカードであった。
ムジーナは、私たちがこの都を訪れた際に出迎えてくれた、のっぺらぼうの宮女であった。
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