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042 ただいま難航中
しおりを挟む市役所の環境課とやらがすでに調査に乗り出している。
だとしたら、ほどなくして動物たちがイキリ立っている原因――フライドチキン抗争に辿り着くかもしれない。
いや、それを別にしてもあれほどの騒ぎだ。
とっくにゴミ問題として、近隣住民からクレームが役所に寄せられていてもおかしくない。
もはや動物同士で争っている時ではない。
だから和香はさっそくジョーと共に行動を起こすも、案の定であった。
とりあえずカラスたちは一定の理解を示す。
少数ながら反抗する者もいたが、そこは隻眼のジョーが脅し――もとい説得をした。
コテツを通じて自制を求めると、ノラネコたちは了承してくれた。
カラスともども、彼らはわりと人間に近しいところで生活をしているがゆえに、役所の怖さを、本気になった大人たちの酷薄さをちゃんとわかっていた。
タヌキたちには、どんぐり山一帯を縄張りにしている茂勢組と梅津組の頭領らの連名による、タヌキ文字の手紙が効いた。サンとパウロに頼んだら、すぐに用意してくれたので助かった。なお組同士のわだかまりはゆっくりとだが、着実に解消しているそうで、どんぐり山の夜明けは近いとのこと。
と、順調だったのはここまで。
当初の予想通り、ネズミ、イタチ、アライグマらとの話し合いは難航する。
このうち、イタチの感触はおもいのほか悪くない。
彼らは感情よりも損得勘定を優先するらしく、前々から抗争は割が合わないと考えていたようだ。
なのに素直にこちらの提案に乗らないのは、少しでも有利な条件を引き出そうとの魂胆であろう。
が、そこまで本気でゴネるつもりはないらしい。
なにせイタチたちは頭数が少ないもので。
それに比べて、初っ端からつまづいているのがネズミとアライグマたちとの会合。
ネズミはとにかく数が多い。多産で一度に八匹ぐらい産むし、わずか一か月程度で成長しては、せっせと励んでポコポコ産む。
ひたすらそれの繰り返し。
とにかく凄まじい繁殖力にて、ネズミ算といわれるだけのことはある。もっともその分、寿命は短いのだけれども。
六つの勢力中、ネズミは最大派閥を誇る。
数は力だ。
もしも総動員をかけたらシャレにならない。町はパニックホラー映画さながらに、大混乱に陥るだろう。
それをバックに、ネズミたちは強気な態度を崩さない。
アライグマたちについては……
カラスたちがケンカっ早い江戸っ子気質だとすれば、彼らは外来のマフィアである。
とにかく我が強く、荒っぽくて、排他的。
ファミリーを大切にする一方で、それ以外はどうでもいい。
外部からの流れ者ということもあってか、地元の連中との抗争はむしろ歓迎している節すらある。これを機に地盤を固める気マンマンだ。
そのくせこの土地にさして思い入れもないから、都合が悪くなったらさっさと逃げ出すつもりだから困りもの。
六つの勢力のうち、ひとつでも賛同しなければ抗争に終止符を打てない。エサ場の共有化は実現しない。
かといって強引にことを進めれば、賛成派と反対派に分かれて新たな争いが勃発する。
騒ぎを鎮めようとしているのに、これでは本末転倒であろう。
かくして話し合いは暗礁に乗り上げてしまった。
こうしている間にも、役所はちゃんと仕事をしているというのに。
お役所仕事と揶揄されていたのは遠い過去のこと。いまどきの公務員は市民の目が厳しいから、とてもマジメなのだ。
焦りとは裏腹に、時間ばかりが過ぎていく。
こうなるとせっかく高めた抗争回避の気運も下がっていくばかり。
タイムリミットが刻一刻と迫っている。
和香はイライラ爪を噛む。
◇
「これ、ちゃんとマジメにやりな!」
ぴしゃりと叱られ、座禅中の和香は首をすくめた。
ただいま猫又の修行中にて、本家の奥の院にお邪魔しているところ。
フライドチキン抗争も気になるが、そればかりにかまけてもいられない。こうみえて和香もいろいろ忙しいのだ。
とはいえ、遅々として進展しない問題がどうにも気になってしょうがない。
ソワソワしてしまう。
それをあっさり見抜いた御所さま。
「どうした和香、ずいぶんとシケた面をして。何かあったのかい? だったらいっちょう、相談にのってやろうじゃないか。
なぁに、遠慮はいらん。弟子の面倒をみるのは師匠の役目さ。それにこちとら伊達に長生きはしていないからね。酸いも甘いも、たいていのことは経験済みだからねえ」
そこで和香はかくかくしかじか。
するとフムフム話を聞き終えた御所さまは「はぁ~」と嘆息し、ちょっと呆れ顔。
「やれやれ、またなのかい。あんたって子は、妙なことに巻き込まれるねえ。そういう星の下に生まれついたのが運の尽きなのかしらん。
まぁ、それはともかくとして『フライドチキン抗争』か。
昔からエサ場や水場を巡っての動物同士の争いはあとを絶たないけど、そこまでこじれちまったら、さすがに当事者同士じゃ解決は厳しいかもしれないよ」
やはりダメか……
和香はしゅんとなる。
でも、御所さまは続けてこう言った。
「だから――ね。こういう時は公平な第三者を頼るんだ。役所には役所さ。あんたもせっかく社交免許証(仮)を持っているんだから、それを使えばいいんだよ」
んんん、猫嶽の役所に頼む?
意味がわからず、和香は大きく首をかしげるばかり。
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