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第42話 各々の戦後
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「えーい! 離せッ離さんかぁッ!」
とある村で捕らえられていたネフェリタスはおっさんたちに引き渡された。
村はそれによる褒美で大いに潤うのだが、これは余談である。
すぐにアウレアス城の移送されたネフェリタスは地下牢にぶち込まれた。
そこへシルフィーナが訪れる。
それは肉親の情からではない。
謀叛の動機を知りたかったからである。
「兄上……いえ、ネフェリタス。何故、こんなことを……?」
「シルフィーナかッ! さっさと縄を解け! 俺にこんなことをして許されると思っているのかッ!」
捕まってなお傲慢な態度を崩さない兄に対してシルフィーナが怒りを露わにする。
「黙りなさいッ! 謀叛を起こし父上と兄上を弑逆した罪を自覚しなさいッ!」
「貴様ぁぁぁ! 兄に向かって何たる口の利き方だッ!」
「貴方のような者は兄などではありません!」
厚顔無恥なネフェリタスの態度にシルフィーナも自然と言葉が荒くなる。
なおもがなり立てるネフェリタスに彼女は底冷えするようなほど冷たい声で告げる。
「貴方は国家叛逆罪で処刑です。執行は明日。それまで自分の行いを悔いなさい」
「何だとッ! 叛逆だと? しかも裁判もなしとは貴様それでも法治国家の一員かッ!」
「どの口が言いますか! 叛逆罪は問答無用で死刑です。楽に死ねるとは思わないことです!」
そう言うと縛られ猿轡を噛まされたネフェリタスを一瞥もせず牢屋から去って行った。
※※※
――翌日
アウレアの街の外れにある処刑場にシルフィーナを始めとした、数名の貴族と兵士たちが足を運んでいた。おっさんも一緒である。
「少しは反省しましたか?」
「シルフィーナ……ああ、余は、俺は反省したッ! だから許してくれるよな!?」
「ああッ……まさか、ここまでとは……」
反省の色が全く見えないネフェリタスを見てシルフィーナが嘆く。
頭が痛いのか、額に手を当てて黙り込んでしまった。
隣に居たおっさんはすぐに医者を呼ぼうとしたが、シルフィーナが止める。
「アルデ将軍、私は大丈夫です」
「そうですか。処刑方法はアレでよろしいですね?」
「……はい。ロスタト兄上が受けたと言うあの残虐な刑を」
ネフェリタスの処刑法。
それは凌遅刑である。
シルフィーナが思いついたのではなく、ロスタトの最期を知ったおっさんが彼女に入れ知恵したのだ。
「喜んでください。ネフェリタスくん。お前は今から刑に処されるが、しばらくは生きていられるから安心していいよ」
おっさんの言葉を聞いて微かな希望を持ったネフェリタスが顔を輝かせる。
何とか生き延びれば、処刑を止める者が出て来るかも知れないと言う希望的で楽観的な考えに至ったのだ。
やがて準備が着々と進められ、最初の苦痛が与えられる。
処刑は見世物でもある。
天下の謀叛人の処刑を見ようと大勢のアウレア国民が押し掛けていた。
最初は爪を、そして歯を剥ぎ、砕き、神経に刺激を与える。
痛覚が集中する箇所を攻められたネフェリタスは絶叫を上げるが猿轡を噛まされているため呻き声にしか聞こえない。自死などされたら罪を悔い改めることもできないからだ。
そして2日目は手足の先から順に細かく斬り刻まれてミンチにされていった。
最後には四肢は切断され、残るは頭と胴体だけとなる。
3日目から凌遅刑が始まった。
永遠にも感じる苦痛がネフェリタスを苛み、それは終わる気配を見せない。
拷問官の卓越した技術に国民は処刑を娯楽として楽しんだ。
生きたまま体の削ぎ落とされていく。
ネフェリタスの最期はまだまだ訪れそうにない。
◆ ◆ ◆
バルト王国の王都ベイルトンには敗報が届いていた。
もたらされた敗報にバルト王、トゥルンは驚愕の表情を見せていた。
「馬鹿な……何故負ける? 謀叛を起こしたアウレア軍はそこまで弱兵なのか?」
目の上のたんこぶであったホラリフェオを討ち取り、更には第1公子まで抹殺したと聞いた時は、我がことなれりと喜んだものであったのだが。
「ヘリオン平原で我らに苦汁を舐めさせたアルデ将軍が総大将となり、我が軍とアウレア軍を討ち破ったそうです」
「アルデ将軍が? 奴はヘリオン平原で我々と睨み合っていたはずだろう? あそこからアウレア平原までどれだけあると思っているのだ。それは本当なのか?」
「はッ……どうやったかは分かりませんが確度の高い情報です」
「奴は軍神か何かか?」
「やも知れませんな」
宰相のカルケーヌはそう言って肩を竦めて見せた。
トゥルンは普段は見せないその姿に少し緊張感が和らぐが、すぐに別のことを思い出した。
「ブラントゥ卿の炎帝とやらはどうした?」
「報告によれば一撃の下に斬って捨てられたそうでございます」
「チッ……役に立たんではないか。預けた我が軍はどうなった?」
「離散したようです。軍艦も戦死しているので正確な数は不明ですが、二○○○以上が戻らないとのことです」
流石に今回の声は苦々しい。
兵の損失に対して得た物がないのだ。
強力な指導者であったホラリフェオを討ち取ったことは大きいが、代わりにアルデ将軍と言う軍神が生まれようとしている。いや、もう生み出されたのかも知れないのである。
「占領した鬼哭関も取り返されたと報告にございます」
鬼哭関の難攻不落さは身に染みて理解していた。
今まで何度攻めても跳ね返されてきたのだ。
取り返されたのは痛い。
トゥルンはピクつくこめかみを押さえる。
「思うようにはいかんものだな。まぁホラリフェオと後継ぎを殺せただけ良しとするしかないか。しかしアルデ将軍か……厄介そうだな」
「反感を持つ者もおりましょう。調略を始めねばなりませんな」
アウレア大公国が一致団結するようなことがあってはならない。
一枚岩ではない内に内部から切り崩すのだ。
「アルデ某についても調べろ。徹底的にな」
◆ ◆ ◆
アウレア大公国の内乱の件はラグナリオン王国の王都ラグナにも及んでいた。
クローム王はこれにバルト王国も絡んでいると聞いて注目していたのだ。
「ははははは! バルトざまぁないよね! ヘリオン平原で負け、またまたアウレアで負けってね!」
「しかし国王陛下、あの『血河のホラリフェオ』が死にましたぞ」
「そだねー。でも代わりっぽいのが出てきたよねー」
「か、代わりでございますか?」
戦闘執事のバンディッシュが知らない情報の存在に狼狽える。
クロームに仕える最側近の彼は常に最新の情報を頭に入れておく必要があるのだ。
「なにー? RECから聞いてないの?」
「いえ、まだ何も……」
「あそっか、僕が言ってないから知る訳ないか」
「陛下、お戯れを……」
RECはラグナリオン王国の特殊部隊である。
所属は国王。つまりクローム王が指揮権を持つ直属の部隊だ。
「アルデだよ。アルデ・ア・サナディア将軍だ。ヘリオンでバルトを破ったのも彼だし、内乱を治めたのも彼だ」
クロームの言葉にバンディッシュは納得しながらも不確定要素があることを告げる。アルデが病気なのは既に割れている事実である。
「誰かと思えば烈将アルデでしたか……。確かにしばらくは安泰かもしれませんが彼は病気だと聞いておりますが?」
「そだねー。だから困るんだよね。列強の圧力を凌ぎながらバルト王国を滅ぼすのはちょっときついからねー。ヘリオン平原で味方してくれたアウレアが背後でバルトを牽制するか、手を貸してくれれば助かるんだけどなー」
クロームは半ば投げやりな口調でそう言うと、手を頭の後ろで組んで執務室の背もたれに寄しかかる。
「読めないのは命数ですね。三大列強……ガーレ帝國、ヴァルムド帝國、エレギス連合王国どれも国力が高いですからな」
「せめてレーベテイン王国時代の版図くらいにならなくちゃね。ヴァルムド帝國はうちを狙ってるみたいだし?」
ラグナリオン王国は現在、北のヴァルムド帝國とたまに小競り合いを繰り返している。今のところ大規模な衝突には発展していないが、緊張が高まっている状態であった。バルト王国とは毎年のように衝突はしているものの決着はつかない。バルト王国側が攻勢に出ているのに対し、ラグナリオン王国側は守りに徹しているので被害は少ないのだが。
クロームとしてはアウレア大公国が味方についたのをきっかけに一気呵成にバルトを滅ぼしたいと考えていた。少しでも時間を掛ければヴァルムド帝國が動き出すのは目に見えていたからである。
「まぁアウレアの混乱が治まるまで動かない方がいいかもね」
クロームは今後の戦略を思案しながらボソリと呟いた。
とある村で捕らえられていたネフェリタスはおっさんたちに引き渡された。
村はそれによる褒美で大いに潤うのだが、これは余談である。
すぐにアウレアス城の移送されたネフェリタスは地下牢にぶち込まれた。
そこへシルフィーナが訪れる。
それは肉親の情からではない。
謀叛の動機を知りたかったからである。
「兄上……いえ、ネフェリタス。何故、こんなことを……?」
「シルフィーナかッ! さっさと縄を解け! 俺にこんなことをして許されると思っているのかッ!」
捕まってなお傲慢な態度を崩さない兄に対してシルフィーナが怒りを露わにする。
「黙りなさいッ! 謀叛を起こし父上と兄上を弑逆した罪を自覚しなさいッ!」
「貴様ぁぁぁ! 兄に向かって何たる口の利き方だッ!」
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「貴方は国家叛逆罪で処刑です。執行は明日。それまで自分の行いを悔いなさい」
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「どの口が言いますか! 叛逆罪は問答無用で死刑です。楽に死ねるとは思わないことです!」
そう言うと縛られ猿轡を噛まされたネフェリタスを一瞥もせず牢屋から去って行った。
※※※
――翌日
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「少しは反省しましたか?」
「シルフィーナ……ああ、余は、俺は反省したッ! だから許してくれるよな!?」
「ああッ……まさか、ここまでとは……」
反省の色が全く見えないネフェリタスを見てシルフィーナが嘆く。
頭が痛いのか、額に手を当てて黙り込んでしまった。
隣に居たおっさんはすぐに医者を呼ぼうとしたが、シルフィーナが止める。
「アルデ将軍、私は大丈夫です」
「そうですか。処刑方法はアレでよろしいですね?」
「……はい。ロスタト兄上が受けたと言うあの残虐な刑を」
ネフェリタスの処刑法。
それは凌遅刑である。
シルフィーナが思いついたのではなく、ロスタトの最期を知ったおっさんが彼女に入れ知恵したのだ。
「喜んでください。ネフェリタスくん。お前は今から刑に処されるが、しばらくは生きていられるから安心していいよ」
おっさんの言葉を聞いて微かな希望を持ったネフェリタスが顔を輝かせる。
何とか生き延びれば、処刑を止める者が出て来るかも知れないと言う希望的で楽観的な考えに至ったのだ。
やがて準備が着々と進められ、最初の苦痛が与えられる。
処刑は見世物でもある。
天下の謀叛人の処刑を見ようと大勢のアウレア国民が押し掛けていた。
最初は爪を、そして歯を剥ぎ、砕き、神経に刺激を与える。
痛覚が集中する箇所を攻められたネフェリタスは絶叫を上げるが猿轡を噛まされているため呻き声にしか聞こえない。自死などされたら罪を悔い改めることもできないからだ。
そして2日目は手足の先から順に細かく斬り刻まれてミンチにされていった。
最後には四肢は切断され、残るは頭と胴体だけとなる。
3日目から凌遅刑が始まった。
永遠にも感じる苦痛がネフェリタスを苛み、それは終わる気配を見せない。
拷問官の卓越した技術に国民は処刑を娯楽として楽しんだ。
生きたまま体の削ぎ落とされていく。
ネフェリタスの最期はまだまだ訪れそうにない。
◆ ◆ ◆
バルト王国の王都ベイルトンには敗報が届いていた。
もたらされた敗報にバルト王、トゥルンは驚愕の表情を見せていた。
「馬鹿な……何故負ける? 謀叛を起こしたアウレア軍はそこまで弱兵なのか?」
目の上のたんこぶであったホラリフェオを討ち取り、更には第1公子まで抹殺したと聞いた時は、我がことなれりと喜んだものであったのだが。
「ヘリオン平原で我らに苦汁を舐めさせたアルデ将軍が総大将となり、我が軍とアウレア軍を討ち破ったそうです」
「アルデ将軍が? 奴はヘリオン平原で我々と睨み合っていたはずだろう? あそこからアウレア平原までどれだけあると思っているのだ。それは本当なのか?」
「はッ……どうやったかは分かりませんが確度の高い情報です」
「奴は軍神か何かか?」
「やも知れませんな」
宰相のカルケーヌはそう言って肩を竦めて見せた。
トゥルンは普段は見せないその姿に少し緊張感が和らぐが、すぐに別のことを思い出した。
「ブラントゥ卿の炎帝とやらはどうした?」
「報告によれば一撃の下に斬って捨てられたそうでございます」
「チッ……役に立たんではないか。預けた我が軍はどうなった?」
「離散したようです。軍艦も戦死しているので正確な数は不明ですが、二○○○以上が戻らないとのことです」
流石に今回の声は苦々しい。
兵の損失に対して得た物がないのだ。
強力な指導者であったホラリフェオを討ち取ったことは大きいが、代わりにアルデ将軍と言う軍神が生まれようとしている。いや、もう生み出されたのかも知れないのである。
「占領した鬼哭関も取り返されたと報告にございます」
鬼哭関の難攻不落さは身に染みて理解していた。
今まで何度攻めても跳ね返されてきたのだ。
取り返されたのは痛い。
トゥルンはピクつくこめかみを押さえる。
「思うようにはいかんものだな。まぁホラリフェオと後継ぎを殺せただけ良しとするしかないか。しかしアルデ将軍か……厄介そうだな」
「反感を持つ者もおりましょう。調略を始めねばなりませんな」
アウレア大公国が一致団結するようなことがあってはならない。
一枚岩ではない内に内部から切り崩すのだ。
「アルデ某についても調べろ。徹底的にな」
◆ ◆ ◆
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クローム王はこれにバルト王国も絡んでいると聞いて注目していたのだ。
「ははははは! バルトざまぁないよね! ヘリオン平原で負け、またまたアウレアで負けってね!」
「しかし国王陛下、あの『血河のホラリフェオ』が死にましたぞ」
「そだねー。でも代わりっぽいのが出てきたよねー」
「か、代わりでございますか?」
戦闘執事のバンディッシュが知らない情報の存在に狼狽える。
クロームに仕える最側近の彼は常に最新の情報を頭に入れておく必要があるのだ。
「なにー? RECから聞いてないの?」
「いえ、まだ何も……」
「あそっか、僕が言ってないから知る訳ないか」
「陛下、お戯れを……」
RECはラグナリオン王国の特殊部隊である。
所属は国王。つまりクローム王が指揮権を持つ直属の部隊だ。
「アルデだよ。アルデ・ア・サナディア将軍だ。ヘリオンでバルトを破ったのも彼だし、内乱を治めたのも彼だ」
クロームの言葉にバンディッシュは納得しながらも不確定要素があることを告げる。アルデが病気なのは既に割れている事実である。
「誰かと思えば烈将アルデでしたか……。確かにしばらくは安泰かもしれませんが彼は病気だと聞いておりますが?」
「そだねー。だから困るんだよね。列強の圧力を凌ぎながらバルト王国を滅ぼすのはちょっときついからねー。ヘリオン平原で味方してくれたアウレアが背後でバルトを牽制するか、手を貸してくれれば助かるんだけどなー」
クロームは半ば投げやりな口調でそう言うと、手を頭の後ろで組んで執務室の背もたれに寄しかかる。
「読めないのは命数ですね。三大列強……ガーレ帝國、ヴァルムド帝國、エレギス連合王国どれも国力が高いですからな」
「せめてレーベテイン王国時代の版図くらいにならなくちゃね。ヴァルムド帝國はうちを狙ってるみたいだし?」
ラグナリオン王国は現在、北のヴァルムド帝國とたまに小競り合いを繰り返している。今のところ大規模な衝突には発展していないが、緊張が高まっている状態であった。バルト王国とは毎年のように衝突はしているものの決着はつかない。バルト王国側が攻勢に出ているのに対し、ラグナリオン王国側は守りに徹しているので被害は少ないのだが。
クロームとしてはアウレア大公国が味方についたのをきっかけに一気呵成にバルトを滅ぼしたいと考えていた。少しでも時間を掛ければヴァルムド帝國が動き出すのは目に見えていたからである。
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