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第44話 おっさん、晩餐会に出る
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論功行賞が終了し、アウレアス城の大公聖堂で晩餐会が行われることとなった。
おっさんからしてみれば、普通の立食形式のパーティである。
しかし、喪に服すと言う習慣はないのだろうかとおっさんは不安になる。生憎欧米の事情や仏教以外の宗教のことは分からないのでこの世界が大丈夫なら大丈夫なのだろうと思っておくことにした。
さて、立食のパーティだがおっさんは腐るほど出たことがあるのだ。
大学の研究室にいた時に学会の後でよく参加したものである。
あちらでは奥さんがいたおっさんだが、こちらでは独身らしかったので仕方なくドーガに声を掛けたら露骨に嫌そうな顔をされたので傷心気味なおっさんである。
確かに冷静になってみると、パートナーが男なのはどうかと思う。
ベアトリス辺りに頼むべきだったとおっさんは反省した。
ドレスコードが気になったが、顔を出してみると無用な心配であった。
人型の生物が進化した世界はどの世界も似たような感じになるのかも知れないとおっさんは学術的なことを考えていた。
取り敢えず暫定の大公であるシルフィーナに挨拶した後、おっさんは並み居る貴族諸侯に囲まれていた。異世界の珍味にあり着きたいおっさんはドーガに任せて、クールに去った。
が、その先に居たのは珍獣であった。
「はむはむッ! うまッこれうまッ! 何よこれ街じゃ味わえないわッ」
おっさんは思わず2度見した。
その珍獣は人間の言葉を話すようである。
「あによッ! そんなに見るんじゃないわよッ!」
少女は歯を剥き出しにして威嚇してくる。
もちろん、食べ物から手は離さない。
おっさんは目が離せない。
「見世物じゃないって言ってんだろオラァ!」
今度はワイドショーのニュースで写される容疑者よろしく手の平でカメラを塞ごうとしてくる。
そこに殺意を感じたおっさんは彼女の腕を取って抵抗した。
「あたしに触れるな、この馬鹿! 変態! ロリコン!」
ひどい言い草である。
確かに幼女案件かも知れんけど、幼女の方が強ぇだろこの場合と、おっさんは独り言ちる。通報されるのはお前ぇだよ。
「あーキミはどこかの貴族令嬢かな? 保護者は?」
何処かでプチリと何かがキレる音がしたような気がした。
「お……のれ、よくも……あんた死んだわッ!」
その瞬間、殺気と共に右手のフォークがおっさんの喉に迫る。
ほのぼのパーティイベントかと思いきや、まさかの戦闘イベントである。
そこらの昼ドラも真っ青な展開だ。
おっさんは軽くかわしつつ、ボードを出して情報を確認する。
ボードの力は万能です。
「レガシー・カポネちゃんね。ここは非武装中立地帯だよー」
「なッ!?」
レガシーは名前を出されたことに驚いて手に持っていた皿とフォークを床に落とした。
「あたしの名はこんなところまで轟いていたと言うの……?」
「いやそっちじゃねぇよ?」
反射的にツッコミを入れてしまったが、この女はとんだ傑物である。
もう何もかもがキレキレでおっさんは頭が痛くなってきた。
「おいおい。てめぇ、俺の娘に手ぇ出してんじゃねぇぞ」
今、娘と言ったな。
更なる難敵の登場の予感におっさんは思わず眉間を指で押さえた。
「いや、出してないから。あーどちらさんで?」
「俺はトルナド都市長、エル・カポネだ」
漂う既視感。
「トルナドの都市長殿がここに何をしに?」
何をしにもここにいると言うことは晩餐会に参加しにに決まっているのだが、おっさんは間抜けな質問をしたと恥ずかしくなってしまい、少し赤くなる。
「ああ? そりゃ娘がアウレアに拉致られたって言うんで出撃してみれば、アウレアは内部対立してて実際に拉致ったのは別の野郎ってことじゃねぇか。お詫びも兼ねて招待したいって言うからな。来てやったのさ」
この子にしてこの親ありである。
いや普通は逆なのか?
おっさんは全然関係のないことで悩み出した。
「いやーはっはっは! レンスターの野郎と戦わなくて良かったぜ。都市連合の他の野郎共にも止められてな? なんか乱が起こったって言うのにもう治めるなんてアウレアも意外とやるもんだな」
「いえいえ。レストリーム都市国家連合さんとは今後も上手くやっていきたいものですよ。この度は身内の不始末、申し訳ない」
本来なら気軽に謝罪などしないのだが、非公式な場なので問題ないだろう。
おっさんは素直に謝っておいた。
「ええ、カポネ殿、今回の件は申し訳なく存じますわ」
「おお、シルフィーナ殿じゃねぇか。俺の方も勘違いですまなかったな」
一応は大公なのだが、気さくに話し掛けるのはいいのかと思いつつ、大した胆力だとおっさんは少し感心していた。
「いえ、勘違いされてもしょうがないことでした」
「そうか? そうだよな? ありゃあ、誰だってそう思うわな」
シルフィーナの背後に控える側近たちからは豪胆と言うか無礼と言うか良く分からないカポネに怒りの視線が突き刺さっている。
おっさんも思わず苦笑いしていた。しかし、もしおっさんの娘だったら自分は果たして問答無用で他国に攻め入っただろうかと考えてしまう。日本では息子と娘がいたが、恐らくそんな選択はしなかっただろうなと思う。
そんなことを考えていると、ここでおっさんはとある違和感を覚えた。
先程までおっさんに噛みついていた狂犬が大人しくなっているのだ。
チラリと様子を窺うが、何やらもじもじしている。
「(なんだこいつ。ああ、父さん子か)」
「お父様、あの……その精悍なお方は……?」
その言葉にそっちかよ!とおっさんは心の中で思わずツッコミを入れる。
「あ? このっさんはな、シルフィーナ公女サマだ」
「よろしくお願いしますわね。えっと……」
「レガシーですぅ! レガシー・カポネです!」
「レガシーさん。これからもアウレアに遊びに来て下さいね?」
「こここ光栄ですぅ! また食い倒――じゃなくて遊びに来ます!」
カポネの適当な説明に、何も気にしないシルフィーナと盛り上がるレガシー。
色んな人が集まると変わった化学反応を起こすものである。
「あーちょっといいか? こっちの事情で申し訳ねぇんだが、実は南の蛮族ヴェルダンの動きが活発化しててな。もしかしたらこっちに攻め込んでくるかも知れねぇ」
「ヴェルダンが?」
「(ヴェルダンか。また知らん名前だな。しかしアレだね。この世は戦国。あちこちがキナ臭いな。ま、だからこそ燃えるんだが)」
「ああ、あいつらしつけぇからな。ラグナリオンだけじゃなくこっちにもちょっかい出してくるたぁふてぇ野郎だ。なんかあったら頼むぜ?」
「それは大変ですわね。我が国も支援を惜しまないでしょう」
おっさんは、そんな簡単に約束していいのかと頭が痛くなるが、ちょっと前まで公女として生きてきた彼女がいきなり表舞台に立たされたことを考えると仕方ないかとも思ったので何も言わずにおいた。
こうして嵐を呼んだ晩餐会は、おっさんをとてつもなく消耗させて終了したのであった。後からドーガに文句を言われたのは言うまでもない。
おっさんからしてみれば、普通の立食形式のパーティである。
しかし、喪に服すと言う習慣はないのだろうかとおっさんは不安になる。生憎欧米の事情や仏教以外の宗教のことは分からないのでこの世界が大丈夫なら大丈夫なのだろうと思っておくことにした。
さて、立食のパーティだがおっさんは腐るほど出たことがあるのだ。
大学の研究室にいた時に学会の後でよく参加したものである。
あちらでは奥さんがいたおっさんだが、こちらでは独身らしかったので仕方なくドーガに声を掛けたら露骨に嫌そうな顔をされたので傷心気味なおっさんである。
確かに冷静になってみると、パートナーが男なのはどうかと思う。
ベアトリス辺りに頼むべきだったとおっさんは反省した。
ドレスコードが気になったが、顔を出してみると無用な心配であった。
人型の生物が進化した世界はどの世界も似たような感じになるのかも知れないとおっさんは学術的なことを考えていた。
取り敢えず暫定の大公であるシルフィーナに挨拶した後、おっさんは並み居る貴族諸侯に囲まれていた。異世界の珍味にあり着きたいおっさんはドーガに任せて、クールに去った。
が、その先に居たのは珍獣であった。
「はむはむッ! うまッこれうまッ! 何よこれ街じゃ味わえないわッ」
おっさんは思わず2度見した。
その珍獣は人間の言葉を話すようである。
「あによッ! そんなに見るんじゃないわよッ!」
少女は歯を剥き出しにして威嚇してくる。
もちろん、食べ物から手は離さない。
おっさんは目が離せない。
「見世物じゃないって言ってんだろオラァ!」
今度はワイドショーのニュースで写される容疑者よろしく手の平でカメラを塞ごうとしてくる。
そこに殺意を感じたおっさんは彼女の腕を取って抵抗した。
「あたしに触れるな、この馬鹿! 変態! ロリコン!」
ひどい言い草である。
確かに幼女案件かも知れんけど、幼女の方が強ぇだろこの場合と、おっさんは独り言ちる。通報されるのはお前ぇだよ。
「あーキミはどこかの貴族令嬢かな? 保護者は?」
何処かでプチリと何かがキレる音がしたような気がした。
「お……のれ、よくも……あんた死んだわッ!」
その瞬間、殺気と共に右手のフォークがおっさんの喉に迫る。
ほのぼのパーティイベントかと思いきや、まさかの戦闘イベントである。
そこらの昼ドラも真っ青な展開だ。
おっさんは軽くかわしつつ、ボードを出して情報を確認する。
ボードの力は万能です。
「レガシー・カポネちゃんね。ここは非武装中立地帯だよー」
「なッ!?」
レガシーは名前を出されたことに驚いて手に持っていた皿とフォークを床に落とした。
「あたしの名はこんなところまで轟いていたと言うの……?」
「いやそっちじゃねぇよ?」
反射的にツッコミを入れてしまったが、この女はとんだ傑物である。
もう何もかもがキレキレでおっさんは頭が痛くなってきた。
「おいおい。てめぇ、俺の娘に手ぇ出してんじゃねぇぞ」
今、娘と言ったな。
更なる難敵の登場の予感におっさんは思わず眉間を指で押さえた。
「いや、出してないから。あーどちらさんで?」
「俺はトルナド都市長、エル・カポネだ」
漂う既視感。
「トルナドの都市長殿がここに何をしに?」
何をしにもここにいると言うことは晩餐会に参加しにに決まっているのだが、おっさんは間抜けな質問をしたと恥ずかしくなってしまい、少し赤くなる。
「ああ? そりゃ娘がアウレアに拉致られたって言うんで出撃してみれば、アウレアは内部対立してて実際に拉致ったのは別の野郎ってことじゃねぇか。お詫びも兼ねて招待したいって言うからな。来てやったのさ」
この子にしてこの親ありである。
いや普通は逆なのか?
おっさんは全然関係のないことで悩み出した。
「いやーはっはっは! レンスターの野郎と戦わなくて良かったぜ。都市連合の他の野郎共にも止められてな? なんか乱が起こったって言うのにもう治めるなんてアウレアも意外とやるもんだな」
「いえいえ。レストリーム都市国家連合さんとは今後も上手くやっていきたいものですよ。この度は身内の不始末、申し訳ない」
本来なら気軽に謝罪などしないのだが、非公式な場なので問題ないだろう。
おっさんは素直に謝っておいた。
「ええ、カポネ殿、今回の件は申し訳なく存じますわ」
「おお、シルフィーナ殿じゃねぇか。俺の方も勘違いですまなかったな」
一応は大公なのだが、気さくに話し掛けるのはいいのかと思いつつ、大した胆力だとおっさんは少し感心していた。
「いえ、勘違いされてもしょうがないことでした」
「そうか? そうだよな? ありゃあ、誰だってそう思うわな」
シルフィーナの背後に控える側近たちからは豪胆と言うか無礼と言うか良く分からないカポネに怒りの視線が突き刺さっている。
おっさんも思わず苦笑いしていた。しかし、もしおっさんの娘だったら自分は果たして問答無用で他国に攻め入っただろうかと考えてしまう。日本では息子と娘がいたが、恐らくそんな選択はしなかっただろうなと思う。
そんなことを考えていると、ここでおっさんはとある違和感を覚えた。
先程までおっさんに噛みついていた狂犬が大人しくなっているのだ。
チラリと様子を窺うが、何やらもじもじしている。
「(なんだこいつ。ああ、父さん子か)」
「お父様、あの……その精悍なお方は……?」
その言葉にそっちかよ!とおっさんは心の中で思わずツッコミを入れる。
「あ? このっさんはな、シルフィーナ公女サマだ」
「よろしくお願いしますわね。えっと……」
「レガシーですぅ! レガシー・カポネです!」
「レガシーさん。これからもアウレアに遊びに来て下さいね?」
「こここ光栄ですぅ! また食い倒――じゃなくて遊びに来ます!」
カポネの適当な説明に、何も気にしないシルフィーナと盛り上がるレガシー。
色んな人が集まると変わった化学反応を起こすものである。
「あーちょっといいか? こっちの事情で申し訳ねぇんだが、実は南の蛮族ヴェルダンの動きが活発化しててな。もしかしたらこっちに攻め込んでくるかも知れねぇ」
「ヴェルダンが?」
「(ヴェルダンか。また知らん名前だな。しかしアレだね。この世は戦国。あちこちがキナ臭いな。ま、だからこそ燃えるんだが)」
「ああ、あいつらしつけぇからな。ラグナリオンだけじゃなくこっちにもちょっかい出してくるたぁふてぇ野郎だ。なんかあったら頼むぜ?」
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