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第86話 アルタイナと言う国家
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アルタイナの首都アルスの王城――玉座の間。
ヘルシア半島の北にアルタイナと言う国家が存在する。
その国は自国が世界の中心だと言わんばかりに周囲の国に礼を強要してきた。
確かに大きな領土と武力を持つ国家であったので、周辺国家はアルタイナ中心主義の枠に囚われ次々と臣下の礼を取っていった。
しかし、それも昔のこと。
1567年にガーレ帝國に局地戦で敗れ、化けの皮が剥がれてからは次々と列強国に侵略をされ、領土は租借と言う名の強奪を受けていた。
かつて眠れるドラゴンと呼ばれたアルタイナは眠ったまま死んだのだ。
そして今、玉座には第57代竜王が座していた。
アルタイナの皇帝に名はない。
即位すれば皆、竜王となる。
彼の目の前には、数日前にアウレアと小競り合いを演じたイヤアル将軍がかしづいている。
「イヤアル将軍、朕はアウレアの如き小国にまで後塵を浴びたくはない」
「はッ! 彼奴らは必ずヘルシアに再び干渉してきましょう。その時は目に物を見せてやります!」
竜王の意思には全力で応えるのがアルタイナの臣としての幸せなのである。
長年の隆盛が大国としての自負を肥大化させ、それは家臣から民に至るまで及んでいた。
「我が属領に手を出す者に鉄槌を下すのだ」
「御意」
イヤアル将軍は勇ましい声を上げると、肩で風を切って部屋から出て行った。
竜王はそれを見届けると、側仕えにも聞こえない声で言った。
「アウレアの如き南蛮民族など朕が滅ぼしてみせようぞ」
その声色には憎しみが宿っていた。
◆ ◆ ◆
アルタイナの宰相であるコウショウの屋敷には武官、文官が集まり真昼間から謀議が行われていた。
「竜王陛下はプライドが高過ぎるのだ。我が国が大国だった頃はとうの昔に過ぎ去っていると言うのに……」
謀議と言ってもクーデターなどの物騒なお話ではない。
アルタイナの行く末を案じた者たちが集い、自国を革新すべく話し合っているのだ。この部屋には5名の有志がいた。
「その通りでございます。しかし、国内がこうも分断されては……」
「分かっておる。我が国も歴史ある国家だ。その歴史と伝統が邪魔をしおる。何とか革新を為し遂げ、蛮族共を駆逐せねばこの国に未来はない」
「そうじゃ! 列強国などと……威張り散らしおって……」
今のところアルタイナに進出してきている列強国は、エレギス連合王国、ガーレ帝國、ヴァルムド帝國、準列強国はカヴァリム帝國である。このまま手をこまねいていては他国にまで介入されかねない。
「今、アウレア大公国とヘルシアの件で揉めておるが、ヘルシアなどに構っておる時ではない。真に組むべきはアウレアじゃろう。最近、彼の国の勢いは留まるところを知らん。この東ディッサニアからイルソン人を叩き出すのじゃ」
コウショウは現在の状況を打破するために様々な国家に留学生を派遣していた。
未来ある若者に世界を見せて自国を変えようと必死なのである。
もっともそんな姿勢が竜王を始めとしたアルタイナ至上主義の根付いた者たちには疎ましがられているのだが。
「御意に。アウレアの有力者に渡りをつけてみましょう」
「有力者か……誰が良いかのう」
「私はサナディア伯爵が良いかと存じますが」
「わしもアルデ将軍以外におらんと考えておる。アウレアに遣った生徒からの評判もよい。着手している軍制改革にも期待がもてるし、彼の国は周辺国家に睨まれて孤立しておる。手を組むにもよかろう」
コウショウはこうも考えていた。
四面楚歌の状態の両国だからこそ手を取り合えるとも。
「ふむ。大公の仇討ちを為し遂げ、政敵のジィーダバ侯爵を打ち倒し、今最も勢いのある人物じゃな」
「仁義溢れる御仁のようでございます。必ずや力になってくれましょう」
「それにしても難しい舵取りとなりますな」
「それよ。ヘルシアで我が軍を押さえてもらっている間に、陛下に擦り寄る佞臣たちを皆殺しにするのだ。陛下には目を覚ましてもらわねばならん」
アルタイナ革新派は入念に準備を進めるのであった。
◆ ◆ ◆
革新派のコウショウが国を憂えている一方で、竜王の周囲には佞臣が蔓延っていた。
現実から目を逸らすように連日催される宴に竜王は執務を行っていた時とは打って変わって上機嫌であった。
執務をとるだけマシかも知れないが。
「よいよい。無礼講じゃ近う寄れ」
まさに酒池肉林を味わっている竜王に1人の人物がそっと近寄る。
この男は下級貴族ながら竜王の側近になることで今や信じられないほどの権勢を誇っていた。
「陛下、ヘルシアから幾度となく援軍要請が参っております。インクムもアウレアに援軍を要請している様子……直ちに出兵なさいませ」
「準備はできておるのか?」
「陛下のお下知があればすぐにでも」
「よいッ! ロウコウよ、身の程を知らせてやれ」
「ははッ!」
名目はヘルシアの民衆の乱を鎮めることなのだが、竜王の中ではアウレア大公国に打撃を与えることになっているらしい。
こうしてヘルシア半島は一触即発の火薬庫となる。
ヘルシア半島の北にアルタイナと言う国家が存在する。
その国は自国が世界の中心だと言わんばかりに周囲の国に礼を強要してきた。
確かに大きな領土と武力を持つ国家であったので、周辺国家はアルタイナ中心主義の枠に囚われ次々と臣下の礼を取っていった。
しかし、それも昔のこと。
1567年にガーレ帝國に局地戦で敗れ、化けの皮が剥がれてからは次々と列強国に侵略をされ、領土は租借と言う名の強奪を受けていた。
かつて眠れるドラゴンと呼ばれたアルタイナは眠ったまま死んだのだ。
そして今、玉座には第57代竜王が座していた。
アルタイナの皇帝に名はない。
即位すれば皆、竜王となる。
彼の目の前には、数日前にアウレアと小競り合いを演じたイヤアル将軍がかしづいている。
「イヤアル将軍、朕はアウレアの如き小国にまで後塵を浴びたくはない」
「はッ! 彼奴らは必ずヘルシアに再び干渉してきましょう。その時は目に物を見せてやります!」
竜王の意思には全力で応えるのがアルタイナの臣としての幸せなのである。
長年の隆盛が大国としての自負を肥大化させ、それは家臣から民に至るまで及んでいた。
「我が属領に手を出す者に鉄槌を下すのだ」
「御意」
イヤアル将軍は勇ましい声を上げると、肩で風を切って部屋から出て行った。
竜王はそれを見届けると、側仕えにも聞こえない声で言った。
「アウレアの如き南蛮民族など朕が滅ぼしてみせようぞ」
その声色には憎しみが宿っていた。
◆ ◆ ◆
アルタイナの宰相であるコウショウの屋敷には武官、文官が集まり真昼間から謀議が行われていた。
「竜王陛下はプライドが高過ぎるのだ。我が国が大国だった頃はとうの昔に過ぎ去っていると言うのに……」
謀議と言ってもクーデターなどの物騒なお話ではない。
アルタイナの行く末を案じた者たちが集い、自国を革新すべく話し合っているのだ。この部屋には5名の有志がいた。
「その通りでございます。しかし、国内がこうも分断されては……」
「分かっておる。我が国も歴史ある国家だ。その歴史と伝統が邪魔をしおる。何とか革新を為し遂げ、蛮族共を駆逐せねばこの国に未来はない」
「そうじゃ! 列強国などと……威張り散らしおって……」
今のところアルタイナに進出してきている列強国は、エレギス連合王国、ガーレ帝國、ヴァルムド帝國、準列強国はカヴァリム帝國である。このまま手をこまねいていては他国にまで介入されかねない。
「今、アウレア大公国とヘルシアの件で揉めておるが、ヘルシアなどに構っておる時ではない。真に組むべきはアウレアじゃろう。最近、彼の国の勢いは留まるところを知らん。この東ディッサニアからイルソン人を叩き出すのじゃ」
コウショウは現在の状況を打破するために様々な国家に留学生を派遣していた。
未来ある若者に世界を見せて自国を変えようと必死なのである。
もっともそんな姿勢が竜王を始めとしたアルタイナ至上主義の根付いた者たちには疎ましがられているのだが。
「御意に。アウレアの有力者に渡りをつけてみましょう」
「有力者か……誰が良いかのう」
「私はサナディア伯爵が良いかと存じますが」
「わしもアルデ将軍以外におらんと考えておる。アウレアに遣った生徒からの評判もよい。着手している軍制改革にも期待がもてるし、彼の国は周辺国家に睨まれて孤立しておる。手を組むにもよかろう」
コウショウはこうも考えていた。
四面楚歌の状態の両国だからこそ手を取り合えるとも。
「ふむ。大公の仇討ちを為し遂げ、政敵のジィーダバ侯爵を打ち倒し、今最も勢いのある人物じゃな」
「仁義溢れる御仁のようでございます。必ずや力になってくれましょう」
「それにしても難しい舵取りとなりますな」
「それよ。ヘルシアで我が軍を押さえてもらっている間に、陛下に擦り寄る佞臣たちを皆殺しにするのだ。陛下には目を覚ましてもらわねばならん」
アルタイナ革新派は入念に準備を進めるのであった。
◆ ◆ ◆
革新派のコウショウが国を憂えている一方で、竜王の周囲には佞臣が蔓延っていた。
現実から目を逸らすように連日催される宴に竜王は執務を行っていた時とは打って変わって上機嫌であった。
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まさに酒池肉林を味わっている竜王に1人の人物がそっと近寄る。
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「陛下、ヘルシアから幾度となく援軍要請が参っております。インクムもアウレアに援軍を要請している様子……直ちに出兵なさいませ」
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