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第105話 フケン要塞攻略戦 ④
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アウレア大公国軍は23日、早朝から攻略を開始したが、大した戦果を上げられずに撤退することとなった。
そこで午後はひたすら凡戦を繰り返させ、おっさんは適当なところで再び兵を撤退させる。
「元帥閣下、どうなさるおつもりで?」
キングストン伯爵が疑問を呈してきたのでおっさんは正直に答えておく。
「ああ、明日にでも夜襲をかける。兵を休ませてくれ」
おっさんは更に本陣をフケン要塞から5kmのところまで前進させた。
これでアウレア軍の威容をアルタイナ軍に見せつけることができただろう。
とは言え、本来の目的はまた別にある。アルタイナ軍がどう動くか見物である。
「くそッ潔く野戦で戦いやがれッてんだ」
アチソン男爵が前線で悪態をついているが、もっともなことだ。
おっさんは野戦なら負けるつもりはないし負けるとも思っていない。
アルタイナ側におっさんのような人物がいればとっくに分かっている。
少なくともフケン要塞にはいない。
アルタイナにそのような人物がいなかったのは僥倖であった。
列強国に分割されたとは言え、眠れるドラゴンが相手なのである。
わざわざ目を覚まさせることもない。
こうしておっさんはただただアルタイナ軍の隙を探るべく動くのであった。
◆ ◆ ◆
――中央ゴレムス暦1583年6月24日 未明
アウレア大公国軍 おっさん
近習の声でおっさんの意識は無理やり覚醒される。
「閣下、アルタイナ軍の夜襲です」
「状況はどうなってる?」
「アチソン男爵が前線で奮闘され、敵を喰い止めておられます」
おっさんは特に驚く様子はない。
想定の範囲内だからだ。
確かに陣の手前の方から喚声が聞こえてくる。
乱戦になっているのは間違いなさそうだ
「よし本隊動くぞ。予定通り行動するよう下知を出せ」
「はッ!」
おっさんは走竜とアドの混成騎兵ですぐさま出陣した。
目的は夜襲してきたアルタイナ軍の殲滅だ。
1人も生かして返すつもりはなかった。
おっさんは夜襲に備えた陣形を組んでおり、騎兵がスムースに通れる道を確保していた。おっさん率いる騎兵が、大した時間もかからずにアルタイナ軍の背後に回り込む。そして松明に火がいれられ、辺りを明るく照らした。
「よしッ敵を残らず殲滅しろッ」
【車懸りの陣Ⅲ】
その瞬間、おっさんの部隊が眩く光り輝く。
オレンジ、緑、青色の神々しい光だ。
「あべこべに敵将を討ち取ってしまえッ!」
騎兵の一撃は強烈であった。
初撃で夜襲に出てきたアルタイナ軍の1/3が壊滅。
「そこの下郎ッ敵大将に相違ないなッ?」
「だとしたらどうしたこの蛮族がッ! 討ち取れるものなら討ち取ってみよッ!」
「よう言うた! このホーセン・アチソンが相手よ! いざ尋常に勝負ッ!」
周囲の明るさで夜襲部隊が壊滅状態になっていることに気付いたアルタイナの将軍は、ここに至っては誰かを道連れにせんとアチソン男爵に勝負を挑んだのだ。
だがそれは間違いであった。
男爵とは言え、多くの戦いに従軍しているアチソンの豪傑ぶりを知らなかったアルタイナ軍の将軍の敗北は見えていた。
お互いの槍がぶつかり合い、何合にも渡って叩きつけられる。
「ちょっとはやるみてぇだが、このアチソンに出会ったのが運の尽きよッ」
「ちょこざいな! 口ではなく行動で証明してみせろッ!」
その言葉にぶち切れたアチソン男爵は体に染みついている槍術を駆使して敵将の右腕を斬り飛ばした後、その首目がけて十文字槍を振り抜いた。
敵将は自分がやられたことすら気付かずに討ち取られた。
「オラァ! 敵将討ち取った!」
統率するものがいなくなれば後は烏合の衆である。
後はおっさんやアチソン男爵、包囲を完成させるために駆け付けた貴族諸侯によってアルタイナ軍は逃げることすらできずに壊滅した。
アルタイナ軍の被害を概算するとおよそ四○○○近い兵が殲滅されたようだ。
「思ったより兵力をつぎ込んできたな」
「これで敵の士気も下がり、要塞に籠る兵も減って一石二鳥と言うヤツですな」
「流石は閣下、陣をこんなに前に出すのは危険だと思いましたが、まさか夜襲を誘う計略だったとは……」
「よし明日……と言うか今日は総攻撃を仕掛ける。西側の工作部隊に気付かれぬよう目をこちらに釘付けにさせたい」
「はッ」
「御意にござります」
こうして戦死したアルタイナ兵の骸を撤去して陣を建て直し、おっさんは仮眠をするために本陣に戻ったのである。
◆ ◆ ◆
夜襲があった日、レスター、ベアトリス、ドーガと兵士たちは谷底へと無事降り立っていた。
フケン要塞の西側は断崖になっており、比較的のっぺりした天然の岩でできている。そのため内部は岩を削り、部屋が作られている。
見張り台などもないため、おっさんがやろうとしていることはかなり有効だと思われた。敵もまさか西側の断崖から攻めてくるとはこれっぽっちも考えていないだろう。
「ただロープで昇って突撃なんてのは無理な話だ」
「そうだな。1人ずつ突っ込むのも、ロープをよじ登りながら戦うのも現実的じゃない」
ベアトリスもドーガも流石にそこまで無茶をするつもりはないようだ。
突撃するなら、部屋の採光用の窓を壊して突入するか、要塞の頂上まで登る必要がありそうだ。
「ならば斜めに上がっていけるように桟道を作ってそれを左右で繰り返し作っていけば良いのではありませんか?」
「(ほう。中々考えているな)レスター少尉の言う通りだ。それを作って一気に部隊を送り込もう」
レスターの提案にベアトリスはすぐに賛同の意を伝える。
ドーガも異論はなさそうだ。
となれば後は武器である。突入口を押さえられたら剣だけで突破するのは不可能に近い。やはり銃火器を使う必要がある。
「ガーランド銃も回してもらいたいですね」
「ああ、それは具申しておいたぜ。一番危険な任務だからな。すぐに許可は下りた」
「(ドーガさんはすごい。閣下とは阿吽の呼吸と言われているのも頷ける)どれ位でできるでしょうか?」
「この峡谷の山々は裸山ではないからな、木材は問題ない。簡単な桟道なら数週間で作れるだろう」
それを聞いてレスターの表情がパァっと明るくなる。
せっかくおっさんから【個技】と【戦法】を授かったのだ。効果の程は確認済みだが早く実戦で試してみたいと思うのが男心である。
「時間に限りがある。手早く終わらせるぞッ!」
ベアトリスの檄にレスターは気合を入れる。
勝敗の要諦は西側にあり。
レスターは緊張しながらもグッと拳を握り込んだ。
そこで午後はひたすら凡戦を繰り返させ、おっさんは適当なところで再び兵を撤退させる。
「元帥閣下、どうなさるおつもりで?」
キングストン伯爵が疑問を呈してきたのでおっさんは正直に答えておく。
「ああ、明日にでも夜襲をかける。兵を休ませてくれ」
おっさんは更に本陣をフケン要塞から5kmのところまで前進させた。
これでアウレア軍の威容をアルタイナ軍に見せつけることができただろう。
とは言え、本来の目的はまた別にある。アルタイナ軍がどう動くか見物である。
「くそッ潔く野戦で戦いやがれッてんだ」
アチソン男爵が前線で悪態をついているが、もっともなことだ。
おっさんは野戦なら負けるつもりはないし負けるとも思っていない。
アルタイナ側におっさんのような人物がいればとっくに分かっている。
少なくともフケン要塞にはいない。
アルタイナにそのような人物がいなかったのは僥倖であった。
列強国に分割されたとは言え、眠れるドラゴンが相手なのである。
わざわざ目を覚まさせることもない。
こうしておっさんはただただアルタイナ軍の隙を探るべく動くのであった。
◆ ◆ ◆
――中央ゴレムス暦1583年6月24日 未明
アウレア大公国軍 おっさん
近習の声でおっさんの意識は無理やり覚醒される。
「閣下、アルタイナ軍の夜襲です」
「状況はどうなってる?」
「アチソン男爵が前線で奮闘され、敵を喰い止めておられます」
おっさんは特に驚く様子はない。
想定の範囲内だからだ。
確かに陣の手前の方から喚声が聞こえてくる。
乱戦になっているのは間違いなさそうだ
「よし本隊動くぞ。予定通り行動するよう下知を出せ」
「はッ!」
おっさんは走竜とアドの混成騎兵ですぐさま出陣した。
目的は夜襲してきたアルタイナ軍の殲滅だ。
1人も生かして返すつもりはなかった。
おっさんは夜襲に備えた陣形を組んでおり、騎兵がスムースに通れる道を確保していた。おっさん率いる騎兵が、大した時間もかからずにアルタイナ軍の背後に回り込む。そして松明に火がいれられ、辺りを明るく照らした。
「よしッ敵を残らず殲滅しろッ」
【車懸りの陣Ⅲ】
その瞬間、おっさんの部隊が眩く光り輝く。
オレンジ、緑、青色の神々しい光だ。
「あべこべに敵将を討ち取ってしまえッ!」
騎兵の一撃は強烈であった。
初撃で夜襲に出てきたアルタイナ軍の1/3が壊滅。
「そこの下郎ッ敵大将に相違ないなッ?」
「だとしたらどうしたこの蛮族がッ! 討ち取れるものなら討ち取ってみよッ!」
「よう言うた! このホーセン・アチソンが相手よ! いざ尋常に勝負ッ!」
周囲の明るさで夜襲部隊が壊滅状態になっていることに気付いたアルタイナの将軍は、ここに至っては誰かを道連れにせんとアチソン男爵に勝負を挑んだのだ。
だがそれは間違いであった。
男爵とは言え、多くの戦いに従軍しているアチソンの豪傑ぶりを知らなかったアルタイナ軍の将軍の敗北は見えていた。
お互いの槍がぶつかり合い、何合にも渡って叩きつけられる。
「ちょっとはやるみてぇだが、このアチソンに出会ったのが運の尽きよッ」
「ちょこざいな! 口ではなく行動で証明してみせろッ!」
その言葉にぶち切れたアチソン男爵は体に染みついている槍術を駆使して敵将の右腕を斬り飛ばした後、その首目がけて十文字槍を振り抜いた。
敵将は自分がやられたことすら気付かずに討ち取られた。
「オラァ! 敵将討ち取った!」
統率するものがいなくなれば後は烏合の衆である。
後はおっさんやアチソン男爵、包囲を完成させるために駆け付けた貴族諸侯によってアルタイナ軍は逃げることすらできずに壊滅した。
アルタイナ軍の被害を概算するとおよそ四○○○近い兵が殲滅されたようだ。
「思ったより兵力をつぎ込んできたな」
「これで敵の士気も下がり、要塞に籠る兵も減って一石二鳥と言うヤツですな」
「流石は閣下、陣をこんなに前に出すのは危険だと思いましたが、まさか夜襲を誘う計略だったとは……」
「よし明日……と言うか今日は総攻撃を仕掛ける。西側の工作部隊に気付かれぬよう目をこちらに釘付けにさせたい」
「はッ」
「御意にござります」
こうして戦死したアルタイナ兵の骸を撤去して陣を建て直し、おっさんは仮眠をするために本陣に戻ったのである。
◆ ◆ ◆
夜襲があった日、レスター、ベアトリス、ドーガと兵士たちは谷底へと無事降り立っていた。
フケン要塞の西側は断崖になっており、比較的のっぺりした天然の岩でできている。そのため内部は岩を削り、部屋が作られている。
見張り台などもないため、おっさんがやろうとしていることはかなり有効だと思われた。敵もまさか西側の断崖から攻めてくるとはこれっぽっちも考えていないだろう。
「ただロープで昇って突撃なんてのは無理な話だ」
「そうだな。1人ずつ突っ込むのも、ロープをよじ登りながら戦うのも現実的じゃない」
ベアトリスもドーガも流石にそこまで無茶をするつもりはないようだ。
突撃するなら、部屋の採光用の窓を壊して突入するか、要塞の頂上まで登る必要がありそうだ。
「ならば斜めに上がっていけるように桟道を作ってそれを左右で繰り返し作っていけば良いのではありませんか?」
「(ほう。中々考えているな)レスター少尉の言う通りだ。それを作って一気に部隊を送り込もう」
レスターの提案にベアトリスはすぐに賛同の意を伝える。
ドーガも異論はなさそうだ。
となれば後は武器である。突入口を押さえられたら剣だけで突破するのは不可能に近い。やはり銃火器を使う必要がある。
「ガーランド銃も回してもらいたいですね」
「ああ、それは具申しておいたぜ。一番危険な任務だからな。すぐに許可は下りた」
「(ドーガさんはすごい。閣下とは阿吽の呼吸と言われているのも頷ける)どれ位でできるでしょうか?」
「この峡谷の山々は裸山ではないからな、木材は問題ない。簡単な桟道なら数週間で作れるだろう」
それを聞いてレスターの表情がパァっと明るくなる。
せっかくおっさんから【個技】と【戦法】を授かったのだ。効果の程は確認済みだが早く実戦で試してみたいと思うのが男心である。
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