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第113話 ラグナリオン王国、接近
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――中央ゴレムス暦1583年7月28日
鬼哭関 ブレイン
連日のように攻め続けられていた鬼哭関は当初の予定通り、ビクともしなかった。
そもそも関璧に直接船で接岸し、そこから壁をよじ登って攻撃しなければならないのだ。はっきり言って反則の部類だろうとブレインは思っていた。
「はーやっぱこの程度の兵力じゃあ抜ける訳ねーよな」
しかも籠っているのは勇猛なテイン侯爵である。
ブレインは幅のある大河の中間辺りで腕を組んで敵味方の攻防を観察していた。
だが、幾ら考えても攻略できる策が浮かばない。
「【戦法】で城攻め用のヤツがあればな」
「ブレイン閣下、お味方の士気はかなり落ちております。これ以上は……」
「チッ……しゃーねーな。撤退だ。一旦基地に戻る」
基地というのは鬼哭関の対岸に築かれた陣地である。
ブレインはそこに大量の船を置き一気呵成に鬼哭関を強襲したのだ。
「(はっきり言って鬼哭関は落とせねー。こうなりゃこっちを囮にして山岳地帯から攻めるしかないか? いつまでも落とせないと無能とか言われそうでムカつくしな。ったく落とせるヤツがいたらやってみろよ)」
ここに至っては作戦変更も止む無しと判断したブレインは兵を再編することにした。ここにいても無駄に出血を強いられるだけである。
ブレインは早馬を走らせ兵力の増強を依頼。
自身は精鋭部隊を率いて山岳地帯からの侵入を図ることに決めた。
山岳地帯からアウレア大公国領に出るには旧ニワード伯爵領近くのアラモ砦を通る必要があるが、あの辺りはアウレア大公国とラグナリオン王国の折衝により多くの兵は置いていない。道なき道を進むのはきついが、鬼哭関でずっと足止めされるよりはいいだろう。
それにアウレア大公国の主力は今アルタイナにいる。
まさに攻め入るには好機なのである。
「アルデ元帥が戻って来る前に勝負つけねーとな」
そう呟きながらブレインは山岳兵をいつでも出陣可能になるように要請するのであった。
◆ ◆ ◆
――中央ゴレムス暦1583年7月30日
サナディア領ウェダ おっさん
王都で束の間の休息を取ったおっさんであったが、やらねばならないことは山積していた。サナディア領を長く空けていたため、どうしてもおっさんの決済が必要なものが溜まっていたのだ。
「はぁ……これなら戦ってた方が楽だな」
そう溜め息をつきながら書類と格闘していると、伝令が執務室へとやってきた。
「元帥閣下、アウレアから入電! ラグナリオン王国からのご使者が参られ、同盟を前提に正式な国交を結びたいとのこと。ホーネット大公殿下から饗応するよう申し付ける旨の魔導通信がありました」
「は? ラグナリオン? 何で俺?」
「現在、外務卿を含め、外務関係者の多くがアルタイナに渡っているため適任者がいないようです」
「外務副次官がいたような気がするが……(ホーネット陛下のいつもの丸投げか)」
「はッそれ以上のことは聞いておりませぬ」
「分かった。すぐアウレアへ向かう。下がっていい」
おっさんは伝令を下がらせるとノックスら古参の部下を呼んだ。
流石の精鋭たちは直ちに執務室に駆けつける。
「はッ何事でしょうか?」
「またアウレアに戻ることになったから留守を頼む」
「アウレアに?」
「ああ、何でもラグナリオンからの使者が来ているらしい。俺に対応しろと命令がきた」
「外務省関係者は何をしているので?」
「俺も知らんよ。外務副次官はいるらしいけど詳しい話は後でしろってことだろ」
おっさんの説明にノックスらが頷く。
彼らにはいつも留守を頼んでいるので慣れたものだろうが、武辺者も多いのでいつかは戦場に戻してやりたいと思っている。
翌日、おっさんは五○○の兵を引き連れ、再びアウレアへと発った。
◆ ◆ ◆
――中央ゴレムス暦1583年8月3日
アウレア おっさん
アウレアにとんぼ返りしたおっさんは早速、ラグナリオン王国からの使者と対面していた。迎賓館はエレギス連合王国が使用しているので離宮の方での話し合いを行うこととなった。
「いやはや、アルデ元帥殿にお迎え頂けるとは最高のおもてなしですな」
そう言ったのはラグナリオン王国の外務卿バイロン・シアレティ伯爵であった。
その他にも外務関係者が多く随伴している。
アウレアが強くなったのを見聞きして国交を結びたがる国家はこれから増えるだろう。エレギス連合王国にしてもいつまでも迎賓館で遇する訳にもいかないので大使館を建築する必要があるだろう。
「取り敢えず食事には何を出したんだ?」
「アウレアの海の幸を中心に珍味を召し上がって頂いております」
流石の外務副次官だけあって仕事はできるようだ。
饗応によってラグナリオン王国の使者には良い印象を持ってもらうことに成功したらしい。
おっさんは晩餐に出席するとラグナリオンのお歴々と話し始める。
最初は他愛のない話からがいいだろう。
おっさん交渉のスペシャリストではない。
「ラグナリオン王国の方々、我が国と国交をということですが、何故突然そのような話が出たのでしょうか?」
「アルデ元帥殿のご活躍は伺っておりますぞ。アルタイナでは負けなしだったとか。今最も勢いのある貴国と通じることは我が国にとって大きいと考えているからです」
ラグナリオン王国は北のヴァルムド帝國やカヴァリム帝國、そしてバルト王国と多くの敵を抱えている。今背後のアウレアに襲われれば亡国への道を辿ることになると考えての外交活動だろう。また、ヘリオン平原では共にバルト王国軍を退けている。ここ何年も両国に対立はない。誼を通じるには今しかないと考えているのかも知れない。おっさんから見ればラグナリオン王国の目的はこんなところだ。
「同盟を前提にとのことですがどこかの国を攻める予定でもおありで?」
おっさんはラグナリオン王国の外交状況を把握していたが、すっとぼけて聞いてみる。
「我が国は北の列強、準列強国と対立しておりますからな。貴国とはバルト王国戦で共に戦った仲……周辺国で最も信のおける相手です。我が国は年中、北と小競り合いを繰り返しておりますが、どこかを攻めるという話はありませんな」
ラグナリオン王国は北にあるネルアンカルムなどとも仲が良いと聞いているが、流石は外務関係者である。交渉術はおっさんの上をいっているようだ。
耳障りの良い言葉で近づき目的の譲歩を引き出す。おっさんには出来ない芸当だ。
「(ふむ。地盤を固めたいと言ったところか? ならバルト王国攻めはない?)」
おっさんとしてはアルタイナから兵が帰ってきたらバルト王国と一戦交えて、出来れば滅ぼしておきたいところであった。
アウレア大公国からバルト王国に入るには鬼哭関を越えてサースバードから、山岳地帯から、現在空白地となっているアラモ砦以西からヘリオン平原を経て東進し、回り込むルートからの3パターンが存在する。
ラグナリオンが味方となれば、アラモ砦から大回りして野戦での決着が図れる可能性がある。これは大きい。
おっさんとしては要塞や砦を攻めるのは時間が掛かるので避けたいところである。
電撃戦を得意とするのがおっさんなのだ。
おっさんが天下を統一する上ではラグナリオンともいずれ戦うことになるだろうが、今は憂いなくバルト王国と戦えることになるのだからこの交渉が上手くまとまれば良いと思っている。
シルフィーナから聞いた話だが、ホラリフェオが目指したレーベテイン王国の復活をまず為し遂げたいおっさんであった。
鬼哭関 ブレイン
連日のように攻め続けられていた鬼哭関は当初の予定通り、ビクともしなかった。
そもそも関璧に直接船で接岸し、そこから壁をよじ登って攻撃しなければならないのだ。はっきり言って反則の部類だろうとブレインは思っていた。
「はーやっぱこの程度の兵力じゃあ抜ける訳ねーよな」
しかも籠っているのは勇猛なテイン侯爵である。
ブレインは幅のある大河の中間辺りで腕を組んで敵味方の攻防を観察していた。
だが、幾ら考えても攻略できる策が浮かばない。
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「ブレイン閣下、お味方の士気はかなり落ちております。これ以上は……」
「チッ……しゃーねーな。撤退だ。一旦基地に戻る」
基地というのは鬼哭関の対岸に築かれた陣地である。
ブレインはそこに大量の船を置き一気呵成に鬼哭関を強襲したのだ。
「(はっきり言って鬼哭関は落とせねー。こうなりゃこっちを囮にして山岳地帯から攻めるしかないか? いつまでも落とせないと無能とか言われそうでムカつくしな。ったく落とせるヤツがいたらやってみろよ)」
ここに至っては作戦変更も止む無しと判断したブレインは兵を再編することにした。ここにいても無駄に出血を強いられるだけである。
ブレインは早馬を走らせ兵力の増強を依頼。
自身は精鋭部隊を率いて山岳地帯からの侵入を図ることに決めた。
山岳地帯からアウレア大公国領に出るには旧ニワード伯爵領近くのアラモ砦を通る必要があるが、あの辺りはアウレア大公国とラグナリオン王国の折衝により多くの兵は置いていない。道なき道を進むのはきついが、鬼哭関でずっと足止めされるよりはいいだろう。
それにアウレア大公国の主力は今アルタイナにいる。
まさに攻め入るには好機なのである。
「アルデ元帥が戻って来る前に勝負つけねーとな」
そう呟きながらブレインは山岳兵をいつでも出陣可能になるように要請するのであった。
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――中央ゴレムス暦1583年7月30日
サナディア領ウェダ おっさん
王都で束の間の休息を取ったおっさんであったが、やらねばならないことは山積していた。サナディア領を長く空けていたため、どうしてもおっさんの決済が必要なものが溜まっていたのだ。
「はぁ……これなら戦ってた方が楽だな」
そう溜め息をつきながら書類と格闘していると、伝令が執務室へとやってきた。
「元帥閣下、アウレアから入電! ラグナリオン王国からのご使者が参られ、同盟を前提に正式な国交を結びたいとのこと。ホーネット大公殿下から饗応するよう申し付ける旨の魔導通信がありました」
「は? ラグナリオン? 何で俺?」
「現在、外務卿を含め、外務関係者の多くがアルタイナに渡っているため適任者がいないようです」
「外務副次官がいたような気がするが……(ホーネット陛下のいつもの丸投げか)」
「はッそれ以上のことは聞いておりませぬ」
「分かった。すぐアウレアへ向かう。下がっていい」
おっさんは伝令を下がらせるとノックスら古参の部下を呼んだ。
流石の精鋭たちは直ちに執務室に駆けつける。
「はッ何事でしょうか?」
「またアウレアに戻ることになったから留守を頼む」
「アウレアに?」
「ああ、何でもラグナリオンからの使者が来ているらしい。俺に対応しろと命令がきた」
「外務省関係者は何をしているので?」
「俺も知らんよ。外務副次官はいるらしいけど詳しい話は後でしろってことだろ」
おっさんの説明にノックスらが頷く。
彼らにはいつも留守を頼んでいるので慣れたものだろうが、武辺者も多いのでいつかは戦場に戻してやりたいと思っている。
翌日、おっさんは五○○の兵を引き連れ、再びアウレアへと発った。
◆ ◆ ◆
――中央ゴレムス暦1583年8月3日
アウレア おっさん
アウレアにとんぼ返りしたおっさんは早速、ラグナリオン王国からの使者と対面していた。迎賓館はエレギス連合王国が使用しているので離宮の方での話し合いを行うこととなった。
「いやはや、アルデ元帥殿にお迎え頂けるとは最高のおもてなしですな」
そう言ったのはラグナリオン王国の外務卿バイロン・シアレティ伯爵であった。
その他にも外務関係者が多く随伴している。
アウレアが強くなったのを見聞きして国交を結びたがる国家はこれから増えるだろう。エレギス連合王国にしてもいつまでも迎賓館で遇する訳にもいかないので大使館を建築する必要があるだろう。
「取り敢えず食事には何を出したんだ?」
「アウレアの海の幸を中心に珍味を召し上がって頂いております」
流石の外務副次官だけあって仕事はできるようだ。
饗応によってラグナリオン王国の使者には良い印象を持ってもらうことに成功したらしい。
おっさんは晩餐に出席するとラグナリオンのお歴々と話し始める。
最初は他愛のない話からがいいだろう。
おっさん交渉のスペシャリストではない。
「ラグナリオン王国の方々、我が国と国交をということですが、何故突然そのような話が出たのでしょうか?」
「アルデ元帥殿のご活躍は伺っておりますぞ。アルタイナでは負けなしだったとか。今最も勢いのある貴国と通じることは我が国にとって大きいと考えているからです」
ラグナリオン王国は北のヴァルムド帝國やカヴァリム帝國、そしてバルト王国と多くの敵を抱えている。今背後のアウレアに襲われれば亡国への道を辿ることになると考えての外交活動だろう。また、ヘリオン平原では共にバルト王国軍を退けている。ここ何年も両国に対立はない。誼を通じるには今しかないと考えているのかも知れない。おっさんから見ればラグナリオン王国の目的はこんなところだ。
「同盟を前提にとのことですがどこかの国を攻める予定でもおありで?」
おっさんはラグナリオン王国の外交状況を把握していたが、すっとぼけて聞いてみる。
「我が国は北の列強、準列強国と対立しておりますからな。貴国とはバルト王国戦で共に戦った仲……周辺国で最も信のおける相手です。我が国は年中、北と小競り合いを繰り返しておりますが、どこかを攻めるという話はありませんな」
ラグナリオン王国は北にあるネルアンカルムなどとも仲が良いと聞いているが、流石は外務関係者である。交渉術はおっさんの上をいっているようだ。
耳障りの良い言葉で近づき目的の譲歩を引き出す。おっさんには出来ない芸当だ。
「(ふむ。地盤を固めたいと言ったところか? ならバルト王国攻めはない?)」
おっさんとしてはアルタイナから兵が帰ってきたらバルト王国と一戦交えて、出来れば滅ぼしておきたいところであった。
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ラグナリオンが味方となれば、アラモ砦から大回りして野戦での決着が図れる可能性がある。これは大きい。
おっさんとしては要塞や砦を攻めるのは時間が掛かるので避けたいところである。
電撃戦を得意とするのがおっさんなのだ。
おっさんが天下を統一する上ではラグナリオンともいずれ戦うことになるだろうが、今は憂いなくバルト王国と戦えることになるのだからこの交渉が上手くまとまれば良いと思っている。
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