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第121話 懐疑のノックス
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――中央ゴレムス暦1583年8月19日
サナディア領 ウェダ
アルタイナからの撤兵は滞りなく行われていた。
船が足りないのでピストン輸送になるが、既に多くの貴族諸侯が帰国している。
無事にサナディア領ウェダまで帰ってきたノックスらは休む間もなく、バルト王国戦への備えに掛かっていた。
もちろんアラモ砦を奪還するためのおっさんに後詰を送るためだ。
「しかしこうも移動が多いと年寄りにはきついわい」
ノックスがそうボヤいているとドーガも話に入ってきた。
余程、疲労が溜まっているようで首を曲げて肩をコキコキと鳴らしている。
「戦っていた時は大変でしたが、今思うと交渉の待ち時間と撤兵の移動の方が堪えた気がしますな」
「アルタイナは決着した。次はバルト王国って訳か。燃えるぜ」
ガイナスは連戦などどこ吹く風で勝手に盛り上がっていた。
「兵たちには負担だが、頑張ってもらうしかないな」
「アラモ砦に補給線をつなげられては厄介ですししょうがないかと」
アウレア大公国としても国内に強固な橋頭堡を作られては困るのだ。
ウェダでの作業が一段落しようとしていた時、ノックスが口を開いた。
「ベアトリスとガイナスは先に上がって休むように。明日出立するからの。ドーガは残れ。まだ話がある」
この指示にベアトリスはもちろん、ガイナスも同意した。
いつもはゴネるのに彼も疲労が溜まっていたのである。
やがておっさんの執務室にノックスとドーガの2人きりになるとノックスがドーガに向けて話し始めた。
いつもの明るい好々爺然として表情ではなく、何処か影が感じられる。
「ドーガよ。貴公は閣下に仕えて4年になるのか」
「そうですな。そう思えばまだまだ新参者です」
「わしは閣下に仕えて34年になる」
「流石は最古参たるブライフォード副官。年季が違いますな」
ノックスは淡々と話し続ける。
寂しそうな感情が声色か感じられるのだが……。
「閣下が18の頃からの仲だからの。だからと言ってはなんだが、わしは閣下のことなら何でも分かっているつもりであった……ご病気のこともな……」
「そうですな。閣下のご病気はいつの頃からのものなので?(何が言いたいんだ?)」
ドーガはここに至ってようやく何か嫌な予感がした。
ノックスの表情は真剣だ。
「のう、ドーガよ。閣下の顔を見たことはあるか?」
「はッ……いえ、ございませんが……副官殿はおありで?」
「当然じゃ。昔は健康な時もあったからな」
「何か問題でも?(閣下、これ、顔見られたんじゃねぇか?)」
「お主はもし閣下が閣下ではなかったとしたらどうする?」
「……話が見えませんが」
ドーガの予感は当たっていたようだ。
となれば全力でおっさんを擁護すべきだ。
とは言え、言葉で誤魔化す程度しかできないが。
「閣下がある時を境に他人になっていたとしたらどうする?」
「他人……でございますか? 入れ替わることなど可能なので? そんあことがあるはずが――」
「わしは見てしまったんじゃよ。ご病気でただれているはずの閣下の顔が治っておった……」
最後までドーガに言わせずに、ノックスは言葉を被せるようにして目撃した事実を告げた。
「あの秘薬が効いただけでは?」
「お主は本当にそう思っておるのか?」
「思っておりますが……」
「そうか……それがお主の答えか……」
ノックスは悲し気な目をしてそう言った。
サナディア領 ウェダ
アルタイナからの撤兵は滞りなく行われていた。
船が足りないのでピストン輸送になるが、既に多くの貴族諸侯が帰国している。
無事にサナディア領ウェダまで帰ってきたノックスらは休む間もなく、バルト王国戦への備えに掛かっていた。
もちろんアラモ砦を奪還するためのおっさんに後詰を送るためだ。
「しかしこうも移動が多いと年寄りにはきついわい」
ノックスがそうボヤいているとドーガも話に入ってきた。
余程、疲労が溜まっているようで首を曲げて肩をコキコキと鳴らしている。
「戦っていた時は大変でしたが、今思うと交渉の待ち時間と撤兵の移動の方が堪えた気がしますな」
「アルタイナは決着した。次はバルト王国って訳か。燃えるぜ」
ガイナスは連戦などどこ吹く風で勝手に盛り上がっていた。
「兵たちには負担だが、頑張ってもらうしかないな」
「アラモ砦に補給線をつなげられては厄介ですししょうがないかと」
アウレア大公国としても国内に強固な橋頭堡を作られては困るのだ。
ウェダでの作業が一段落しようとしていた時、ノックスが口を開いた。
「ベアトリスとガイナスは先に上がって休むように。明日出立するからの。ドーガは残れ。まだ話がある」
この指示にベアトリスはもちろん、ガイナスも同意した。
いつもはゴネるのに彼も疲労が溜まっていたのである。
やがておっさんの執務室にノックスとドーガの2人きりになるとノックスがドーガに向けて話し始めた。
いつもの明るい好々爺然として表情ではなく、何処か影が感じられる。
「ドーガよ。貴公は閣下に仕えて4年になるのか」
「そうですな。そう思えばまだまだ新参者です」
「わしは閣下に仕えて34年になる」
「流石は最古参たるブライフォード副官。年季が違いますな」
ノックスは淡々と話し続ける。
寂しそうな感情が声色か感じられるのだが……。
「閣下が18の頃からの仲だからの。だからと言ってはなんだが、わしは閣下のことなら何でも分かっているつもりであった……ご病気のこともな……」
「そうですな。閣下のご病気はいつの頃からのものなので?(何が言いたいんだ?)」
ドーガはここに至ってようやく何か嫌な予感がした。
ノックスの表情は真剣だ。
「のう、ドーガよ。閣下の顔を見たことはあるか?」
「はッ……いえ、ございませんが……副官殿はおありで?」
「当然じゃ。昔は健康な時もあったからな」
「何か問題でも?(閣下、これ、顔見られたんじゃねぇか?)」
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「……話が見えませんが」
ドーガの予感は当たっていたようだ。
となれば全力でおっさんを擁護すべきだ。
とは言え、言葉で誤魔化す程度しかできないが。
「閣下がある時を境に他人になっていたとしたらどうする?」
「他人……でございますか? 入れ替わることなど可能なので? そんあことがあるはずが――」
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「あの秘薬が効いただけでは?」
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ノックスは悲し気な目をしてそう言った。
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