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53話 閑話4 もう帰れぬ我が家
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『義幸よ、其方に無理を言ってこの世界の危機を救ってもらった故、一つ我らからも願いを叶えてやりたくての』
そんな変な夢を見たのが2日前。
ああ、今日も変な夢だー。
だってここ、日本だし。
なのに壁とか触ってもすり抜けるし、俺お化けかよ。
懐かしいな。
「喜山さん、息子さんが来てるわよ」
「あら義一、早かったわね。じゃあすみません、今日はこれで上がります」
「はーい。親子の仲が良くて羨ましいわー」
あ、嫁だ。
それに、俺にそっくりな顔の中坊がいる。マジそっくりだ。
ふよふよと2人についていくと、花屋に寄って、豪華な花束を買って出てきた。
2人が並んで歩いていたの先は、どっかの寺だった。
「義一。母さん、お水を持っていくから先に行っててくれる?」
「うん」
俺にそっくりな彼が気になった。俺は嫁ではなく彼にふよふよとついて行くことにした。
先に墓についた中坊、義一君が、墓に到着するなり墓の周りの雑草を抜き始めた。
なんていうか、いい子だなっていうのがよくわかる。
これだけ俺に似てるってことは、息子、なのかな、俺の。
「なあ、父さん。俺、いろんな人から聞いてさ、母さんのしたこと、ちゃんと知ってるんだ」
誰だよ。子供にそんなの言ったやつ。
「だけど、母さん……母さんはさ、俺のこと必死で育ててくれてて、父さんのこと今でも大好きで。……許してあげてくれないかな……なーんて、伝わるわけ、ないか」
ブチブチと草を千切りながら、息子が鼻を啜った。
息子……。
なんで、俺、こんな状態なんだよ。
声もかけてやれなければ、触ってもやれない。
何もしてやれないんだぞ。
おい、神様よ。俺に、何をさせたいんだよ。
『くくく、義幸よ。そう怒るな。其方を生き返らせることはできんが、声を届けることくらい可能ぞ。僅かな時間ではあるが』
そうなの?
墓参りを終えた2人についていくと、当時の家はそのままで、何も変わっていなかった。
息子の寝顔を見る。
なんでか、愛しいな。
さて、声を届けるか。
時間制限があるから、早くしないとな。
『息子。息子聞こえるか』
「ん、何?……誰?」
夢の中に入り込み、特別に忘れられない夢として届けるのだ。
『息子、義一……俺は母さんのこと、怒ってないよ。とっくの昔に、許しているんだ。むしろ、もっと大切にするべきだったと思っている。義一、母さんのことを頼むな。母さんと……幸せになりなさい』
「え、はい……はいっ」
息子のところはこれで終わりだ。
次は、嫁。
時間が、ない。
『みーゆ』
「え、へ?」
『息子を、ありがとう。立派に育ててくれて、ありがとう。寂しい思いをさせてたと、後になって知ったよ。ごめんな』
ああ、時間がない。
1番言わなければいけないことを、君に伝えたい。
『君を、愛していたよ。君に、幸せになってほしい。楽しい毎日を、ありがとうな』
最後の方は時間切れで、声は届かなかったかもしれない。
でも、彼女の心のつかえが取れたらいい。
もう何も、俺に申し訳ないなんて思わず、生きてほしいから。
そんな風に思えるようになったくらい、俺は今、幸せだから。
「母さん!!今、父さんが!!」
「……お母さんのところにも、来てくれたの」
「母さんと幸せになりなさいって言ってたよ、父さん」
「うん、うん」
抱き合って泣く2人を、だんだん遠くなる視界で見えなくなるまでずっと見ていた。
ちゃんと伝わってた。よかった。
なあ、神様。
願いを叶えてくれるなら、この2人が仲良く健康で苦労することなく生きていけるようにしてほしいんだ。
俺は、もう、何もしてやれないから。
『その願い、受け入れた』
頼んだぞ。
☆
『んー、じゃあ、母君の罪のペナルティを消してやろうか。これで嫌味を言ってくる者はいなくなるじゃろ。息子君はうーん。元からいい子だでのお。徳は充分に積んでおるしなあ。ラッキー値でも上げておくか。うん、最大値っと。これでよし』
ん?
なんか、父君にも同じことやったような気もするが……。
まあ、父君が今の自分は幸せだって言っておったし、似たような道を歩むことになっても大丈夫だろう、うん。
☆
やたら親切な同級生と人懐っこい後輩。
可愛がってくれる先輩と贔屓の激しい先生(それなのに周囲からの妬みなし)。
いろいろ買ってくれる、全然知らない赤の他人のおじ様、等々。
世界が優しく変わっても、それに気づいたりしないで真っ直ぐ生きる義一君。
「本当、義一はお父さんにそっくりねえ」
「ん?」
ーーーーーーーーーー
閑話はここまでです
そんな変な夢を見たのが2日前。
ああ、今日も変な夢だー。
だってここ、日本だし。
なのに壁とか触ってもすり抜けるし、俺お化けかよ。
懐かしいな。
「喜山さん、息子さんが来てるわよ」
「あら義一、早かったわね。じゃあすみません、今日はこれで上がります」
「はーい。親子の仲が良くて羨ましいわー」
あ、嫁だ。
それに、俺にそっくりな顔の中坊がいる。マジそっくりだ。
ふよふよと2人についていくと、花屋に寄って、豪華な花束を買って出てきた。
2人が並んで歩いていたの先は、どっかの寺だった。
「義一。母さん、お水を持っていくから先に行っててくれる?」
「うん」
俺にそっくりな彼が気になった。俺は嫁ではなく彼にふよふよとついて行くことにした。
先に墓についた中坊、義一君が、墓に到着するなり墓の周りの雑草を抜き始めた。
なんていうか、いい子だなっていうのがよくわかる。
これだけ俺に似てるってことは、息子、なのかな、俺の。
「なあ、父さん。俺、いろんな人から聞いてさ、母さんのしたこと、ちゃんと知ってるんだ」
誰だよ。子供にそんなの言ったやつ。
「だけど、母さん……母さんはさ、俺のこと必死で育ててくれてて、父さんのこと今でも大好きで。……許してあげてくれないかな……なーんて、伝わるわけ、ないか」
ブチブチと草を千切りながら、息子が鼻を啜った。
息子……。
なんで、俺、こんな状態なんだよ。
声もかけてやれなければ、触ってもやれない。
何もしてやれないんだぞ。
おい、神様よ。俺に、何をさせたいんだよ。
『くくく、義幸よ。そう怒るな。其方を生き返らせることはできんが、声を届けることくらい可能ぞ。僅かな時間ではあるが』
そうなの?
墓参りを終えた2人についていくと、当時の家はそのままで、何も変わっていなかった。
息子の寝顔を見る。
なんでか、愛しいな。
さて、声を届けるか。
時間制限があるから、早くしないとな。
『息子。息子聞こえるか』
「ん、何?……誰?」
夢の中に入り込み、特別に忘れられない夢として届けるのだ。
『息子、義一……俺は母さんのこと、怒ってないよ。とっくの昔に、許しているんだ。むしろ、もっと大切にするべきだったと思っている。義一、母さんのことを頼むな。母さんと……幸せになりなさい』
「え、はい……はいっ」
息子のところはこれで終わりだ。
次は、嫁。
時間が、ない。
『みーゆ』
「え、へ?」
『息子を、ありがとう。立派に育ててくれて、ありがとう。寂しい思いをさせてたと、後になって知ったよ。ごめんな』
ああ、時間がない。
1番言わなければいけないことを、君に伝えたい。
『君を、愛していたよ。君に、幸せになってほしい。楽しい毎日を、ありがとうな』
最後の方は時間切れで、声は届かなかったかもしれない。
でも、彼女の心のつかえが取れたらいい。
もう何も、俺に申し訳ないなんて思わず、生きてほしいから。
そんな風に思えるようになったくらい、俺は今、幸せだから。
「母さん!!今、父さんが!!」
「……お母さんのところにも、来てくれたの」
「母さんと幸せになりなさいって言ってたよ、父さん」
「うん、うん」
抱き合って泣く2人を、だんだん遠くなる視界で見えなくなるまでずっと見ていた。
ちゃんと伝わってた。よかった。
なあ、神様。
願いを叶えてくれるなら、この2人が仲良く健康で苦労することなく生きていけるようにしてほしいんだ。
俺は、もう、何もしてやれないから。
『その願い、受け入れた』
頼んだぞ。
☆
『んー、じゃあ、母君の罪のペナルティを消してやろうか。これで嫌味を言ってくる者はいなくなるじゃろ。息子君はうーん。元からいい子だでのお。徳は充分に積んでおるしなあ。ラッキー値でも上げておくか。うん、最大値っと。これでよし』
ん?
なんか、父君にも同じことやったような気もするが……。
まあ、父君が今の自分は幸せだって言っておったし、似たような道を歩むことになっても大丈夫だろう、うん。
☆
やたら親切な同級生と人懐っこい後輩。
可愛がってくれる先輩と贔屓の激しい先生(それなのに周囲からの妬みなし)。
いろいろ買ってくれる、全然知らない赤の他人のおじ様、等々。
世界が優しく変わっても、それに気づいたりしないで真っ直ぐ生きる義一君。
「本当、義一はお父さんにそっくりねえ」
「ん?」
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閑話はここまでです
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