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第四部
II
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夕食後、片づけを終えて、俺はソファに腰を下ろした。
「今日ね、新しい取引先に行ってきたんだ。天城商事ってところ」
と、マグカップを両手で抱えながら話す。
迅さんは隣で書類を読んでいたが、顔を上げた。
「どうだった?」
「うん、思ったよりスムーズだった。桐島課長がすごくうまく場をまとめてくれて。あの人、ちょっと苦手だけど……仕事のときはやっぱりすごいんだなって思った」
そう言って、ふわっと笑った。
「ふーん」
迅さんは口元をゆるめつつ、ほんの少し眉を寄せていた。
苦手と言っていた桐島課長を素直に褒めているのが、迅さんの胸に引っかかってるだろうけど、俺は気づいてはないんだけど。
「それとね、向こうの担当の天城さんって人、すごく感じのいい人で。若いのに仕事早くて、段取りもきっちりしてて、しかもイケメン」
「……イケメン?」
「うん。なんか、芸能人みたいな人だった」
ちょっとうっとりしちゃったけど、そこは秘密にしとく。
でも俺のその言葉に、迅さんの喉が小さく鳴る。
「へぇ。……そりゃ、やる気も出るな」
軽く冗談めかした言葉だけど、声の奥に刺のようなものが混じっている……、まぁ俺はそんなことには気づいてないから、無邪気に笑う。
「まぁね。仕事は楽しい方がいいし」
その夜、寝室で寄り添ってきたとき、迅さんは一瞬、腕を回すタイミングを迷ってる気がした。
それでも結局、いつも通りに抱き寄せてくれる。
「迅さん、好き」
俺が囁くと、迅さんはやっぱりいつも通り優しく受け入れてくれる。
俺は抑えきれなくて、匂いが漏れ出てしまい、迅さんを見上げて、ねだってしまう。
迅さんは
「……ばか」
とだけ言って、唇を落としていつものように夜が更けていく。
それから何日かして、昼前にスマホに着信が入った。
画面を見ると、《天城玲央》
「はい、もしもし」
『あ、白鷹さん。今、ちょうど近くで別件が終わって。少し確認したいことがあるんだけど、昼食とりながら話せる?』
今日は迅さんが早く出かけてしまい、お弁当がなかったので、昼食どうしようか、悩んでた。
俺は少し考えてから「はい」と答えた。
会社近くのカフェで昼食をとることに。
天城さんは終始にこやかで、最初の印象よりも柔らかい。
昼休みの混雑した店で、軽く書類を見直しながら話が進む。
仕事の話の合間に、天城さんがふと尋ねた。
「そういえば、白鷹さんって、ご結婚されてるんですよね?」
「え、あ、はい。最近です」
天城さんの表情が、ほんの一瞬だけ変わった。
その瞳が、まっすぐ俺を見つめる。
「でも番じゃないんですね?」
「えっ?……あ、まぁ……」
俺は言葉を濁してる。
なかなかタイミングが合わなくて。
やっと迅さんに素直に甘えられるようになったから、次にヒートがきたときに……!
なんて、考えてた。
天城さんは、声のトーンは穏やかなまま、笑顔も崩れない。
「番じゃないんだったら、僕にもチャンスがありますかね」
俺はふわっと笑いながらも、
「……え? チャンスって?」
と少し遅れて思考が止まった。
「冗談ですよ」
天城さんは机の上の書類をまとめながら軽く受け流した。
俺は少し赤くなって、
「え、えぇ……」と曖昧に笑ってごまかした。
――そして夜になっても、その言葉が頭の中で引っかかっていた……
「今日ね、新しい取引先に行ってきたんだ。天城商事ってところ」
と、マグカップを両手で抱えながら話す。
迅さんは隣で書類を読んでいたが、顔を上げた。
「どうだった?」
「うん、思ったよりスムーズだった。桐島課長がすごくうまく場をまとめてくれて。あの人、ちょっと苦手だけど……仕事のときはやっぱりすごいんだなって思った」
そう言って、ふわっと笑った。
「ふーん」
迅さんは口元をゆるめつつ、ほんの少し眉を寄せていた。
苦手と言っていた桐島課長を素直に褒めているのが、迅さんの胸に引っかかってるだろうけど、俺は気づいてはないんだけど。
「それとね、向こうの担当の天城さんって人、すごく感じのいい人で。若いのに仕事早くて、段取りもきっちりしてて、しかもイケメン」
「……イケメン?」
「うん。なんか、芸能人みたいな人だった」
ちょっとうっとりしちゃったけど、そこは秘密にしとく。
でも俺のその言葉に、迅さんの喉が小さく鳴る。
「へぇ。……そりゃ、やる気も出るな」
軽く冗談めかした言葉だけど、声の奥に刺のようなものが混じっている……、まぁ俺はそんなことには気づいてないから、無邪気に笑う。
「まぁね。仕事は楽しい方がいいし」
その夜、寝室で寄り添ってきたとき、迅さんは一瞬、腕を回すタイミングを迷ってる気がした。
それでも結局、いつも通りに抱き寄せてくれる。
「迅さん、好き」
俺が囁くと、迅さんはやっぱりいつも通り優しく受け入れてくれる。
俺は抑えきれなくて、匂いが漏れ出てしまい、迅さんを見上げて、ねだってしまう。
迅さんは
「……ばか」
とだけ言って、唇を落としていつものように夜が更けていく。
それから何日かして、昼前にスマホに着信が入った。
画面を見ると、《天城玲央》
「はい、もしもし」
『あ、白鷹さん。今、ちょうど近くで別件が終わって。少し確認したいことがあるんだけど、昼食とりながら話せる?』
今日は迅さんが早く出かけてしまい、お弁当がなかったので、昼食どうしようか、悩んでた。
俺は少し考えてから「はい」と答えた。
会社近くのカフェで昼食をとることに。
天城さんは終始にこやかで、最初の印象よりも柔らかい。
昼休みの混雑した店で、軽く書類を見直しながら話が進む。
仕事の話の合間に、天城さんがふと尋ねた。
「そういえば、白鷹さんって、ご結婚されてるんですよね?」
「え、あ、はい。最近です」
天城さんの表情が、ほんの一瞬だけ変わった。
その瞳が、まっすぐ俺を見つめる。
「でも番じゃないんですね?」
「えっ?……あ、まぁ……」
俺は言葉を濁してる。
なかなかタイミングが合わなくて。
やっと迅さんに素直に甘えられるようになったから、次にヒートがきたときに……!
なんて、考えてた。
天城さんは、声のトーンは穏やかなまま、笑顔も崩れない。
「番じゃないんだったら、僕にもチャンスがありますかね」
俺はふわっと笑いながらも、
「……え? チャンスって?」
と少し遅れて思考が止まった。
「冗談ですよ」
天城さんは机の上の書類をまとめながら軽く受け流した。
俺は少し赤くなって、
「え、えぇ……」と曖昧に笑ってごまかした。
――そして夜になっても、その言葉が頭の中で引っかかっていた……
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