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第四部
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休み明け、会社に着いた途端、いつもより視線が温かい――いや、妙にニヤついている気がする。
エレベーターを降りて席に向かうと、案の定、舟形先輩が机に肘をついて待ち構えていた。
「おはよ、直樹。……で? どうだったの?」
「な、なにがですか?」
横から桐島課長まで顔を出してくる。
「お前、ずいぶん楽しく休暇過ごしたんじゃないか。
顔色もいいし……ふふ、あれ? もしかして?」
完全に分かっている人の顔だ。
直樹は苦笑しながら椅子に座る。
「別に、なんでもないですよ。ちゃんと休んでただけです」
「“ただ休んでただけ”でその顔になるわけないでしょ~?」
「舟形、いいから仕事戻れ」
桐島課長が形だけ注意をしたけど、口元はしっかり笑っている。
俺は軽く咳払いをして、パソコンを立ち上げながら言った。
「……でも、ほんとに大丈夫です。
これからも仕事は、しっかり頑張りますから」
その表情は明るく、迷いがなかった。
迅さんと過ごした穏やかな朝の温度が、まだ胸に残っている。
それが背筋をまっすぐ伸ばさせていた。
舟形先輩は目を細める。
「うん、その顔なら安心だわ」
午後の会議室。
天城さんはいつもの余裕たっぷりの表情で、資料をめくりながら言った。
「じゃあ次の案件は……白鷹くん、これ追加で見ておいてくれる?」
「分かりました」
淡々と、でもそつなく返していく。
以前のような緊張も拒絶も一切ない。
距離の取り方が、自然に適切になっていた。
会議は滞りなく進み、最後のまとめに入ったころ――
天城さんが、ちょっといたずらっぽく笑った。
「ねぇ白鷹くん。
やっぱりさ、うちに来ない? 俺の元に」
舟形先輩がいたら絶対吹き出すだろう一言。
でも俺は落ち着いたまま、柔らかく笑って首を振った。
「行きませんよ。
俺は今のところで頑張りますから」
「そっかぁ、残念」
天城さんは肩をすくめたが、その瞳に以前のような“執着”は消えていた。
俺が確固とした安定を見せたことで、天城さんもようやく線引きを理解したみたいだ。
資料を片づけながら、ふっと息をついた。
心は軽く、穏やかで、会議の緊張がどこにも残っていない。
(……早く、帰りたいな)
胸の奥に自然と浮かんだその気持ちに、
自分で少し顔が熱くなった。
玄関の鍵を回すと、リビングの灯りがやわらかく漏れていた。
どこかほっとする、馴染んだ光。
「ただいま戻りました」
靴を脱ぐと、キッチンからすぐに返事が聞こえる。
「おかえり、直樹」
エプロン姿の迅さんが振り返る。
それだけで、一日の緊張がふわっとほどけた。
「仕事どうだった?」
「うん、ちゃんとやってきましたよ。
……また、天城さんから仕事誘われちゃいましたけどね」
俺が少し苦笑しながら鞄を置くと、
迅さんは目を瞬かせてから、ふっと柔らかく笑った。
「その言い方だと、冗談で返せたんだな?」
「はい。
“行きませんよ”ってちゃんと笑って言い返しましたよ」
「そっか。……がんばったな」
そう言って、迅さんは歩み寄ると、迷いなく俺を胸に引き寄せた。
大きな腕の中に包まれた瞬間、
全身から力が抜けていく。
(……ああ、帰ってきたんだ)
胸元に顔を寄せれば、落ち着いた迅さんの匂いがする。
疲れも、不安定だった自分も、全部溶かされていくようだった。
「天城さんの冗談にちゃんと返せる直樹なら、もう大丈夫だな」
「……うん。大丈夫です。
迅さんのところに帰ってくれば、ほんとに落ち着きます」
迅さんの手が、優しく後頭部を撫でる。
「おかえり、直樹。
ここが、おまえの帰る場所だから」
その言葉に、胸の奥がじんわりあたたかく満ちていく。
俺はぎゅっと抱きしめ返しながら、小さく微笑んだ。
「……ただいま、迅さん」
それは、世界でいちばん安心する“ただいま”だった。
※「番編」はここでおしまいです。続きはまたしばらくしたら更新します。
またよろしくお願いします。
エレベーターを降りて席に向かうと、案の定、舟形先輩が机に肘をついて待ち構えていた。
「おはよ、直樹。……で? どうだったの?」
「な、なにがですか?」
横から桐島課長まで顔を出してくる。
「お前、ずいぶん楽しく休暇過ごしたんじゃないか。
顔色もいいし……ふふ、あれ? もしかして?」
完全に分かっている人の顔だ。
直樹は苦笑しながら椅子に座る。
「別に、なんでもないですよ。ちゃんと休んでただけです」
「“ただ休んでただけ”でその顔になるわけないでしょ~?」
「舟形、いいから仕事戻れ」
桐島課長が形だけ注意をしたけど、口元はしっかり笑っている。
俺は軽く咳払いをして、パソコンを立ち上げながら言った。
「……でも、ほんとに大丈夫です。
これからも仕事は、しっかり頑張りますから」
その表情は明るく、迷いがなかった。
迅さんと過ごした穏やかな朝の温度が、まだ胸に残っている。
それが背筋をまっすぐ伸ばさせていた。
舟形先輩は目を細める。
「うん、その顔なら安心だわ」
午後の会議室。
天城さんはいつもの余裕たっぷりの表情で、資料をめくりながら言った。
「じゃあ次の案件は……白鷹くん、これ追加で見ておいてくれる?」
「分かりました」
淡々と、でもそつなく返していく。
以前のような緊張も拒絶も一切ない。
距離の取り方が、自然に適切になっていた。
会議は滞りなく進み、最後のまとめに入ったころ――
天城さんが、ちょっといたずらっぽく笑った。
「ねぇ白鷹くん。
やっぱりさ、うちに来ない? 俺の元に」
舟形先輩がいたら絶対吹き出すだろう一言。
でも俺は落ち着いたまま、柔らかく笑って首を振った。
「行きませんよ。
俺は今のところで頑張りますから」
「そっかぁ、残念」
天城さんは肩をすくめたが、その瞳に以前のような“執着”は消えていた。
俺が確固とした安定を見せたことで、天城さんもようやく線引きを理解したみたいだ。
資料を片づけながら、ふっと息をついた。
心は軽く、穏やかで、会議の緊張がどこにも残っていない。
(……早く、帰りたいな)
胸の奥に自然と浮かんだその気持ちに、
自分で少し顔が熱くなった。
玄関の鍵を回すと、リビングの灯りがやわらかく漏れていた。
どこかほっとする、馴染んだ光。
「ただいま戻りました」
靴を脱ぐと、キッチンからすぐに返事が聞こえる。
「おかえり、直樹」
エプロン姿の迅さんが振り返る。
それだけで、一日の緊張がふわっとほどけた。
「仕事どうだった?」
「うん、ちゃんとやってきましたよ。
……また、天城さんから仕事誘われちゃいましたけどね」
俺が少し苦笑しながら鞄を置くと、
迅さんは目を瞬かせてから、ふっと柔らかく笑った。
「その言い方だと、冗談で返せたんだな?」
「はい。
“行きませんよ”ってちゃんと笑って言い返しましたよ」
「そっか。……がんばったな」
そう言って、迅さんは歩み寄ると、迷いなく俺を胸に引き寄せた。
大きな腕の中に包まれた瞬間、
全身から力が抜けていく。
(……ああ、帰ってきたんだ)
胸元に顔を寄せれば、落ち着いた迅さんの匂いがする。
疲れも、不安定だった自分も、全部溶かされていくようだった。
「天城さんの冗談にちゃんと返せる直樹なら、もう大丈夫だな」
「……うん。大丈夫です。
迅さんのところに帰ってくれば、ほんとに落ち着きます」
迅さんの手が、優しく後頭部を撫でる。
「おかえり、直樹。
ここが、おまえの帰る場所だから」
その言葉に、胸の奥がじんわりあたたかく満ちていく。
俺はぎゅっと抱きしめ返しながら、小さく微笑んだ。
「……ただいま、迅さん」
それは、世界でいちばん安心する“ただいま”だった。
※「番編」はここでおしまいです。続きはまたしばらくしたら更新します。
またよろしくお願いします。
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いやいや、充分可愛いですよ(*´∀`*)
迅さんを思って引こうとする姿を見てしまったら、これはもう離せないですよねぇ(*´艸`*)💕💕💕
コメントありがとうございます(๑˃̵ᴗ˂̵)
そうなんです。
私も直樹がかわいいがとまりません。