拝啓、聖騎士様。もうすぐ貴方を忘れるから離縁しましょう~履いてない!?聖女逃亡手記~

花虎

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9.肌を許すということ

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 ぎしり、と寝台が悲鳴を上げる。

 フィグルドは身体を起こすと、自身の夜着の上を脱いで、床に落とした。月夜の灯りの中に現れる均整のとれた逞しい筋肉に、リナリアは思わず息を飲む。

 盛り上がった胸筋に、綺麗に割れた腹筋、太い首から繋がる僧帽筋の盛り上がりが男性らしさをより強調し、腕の一番太いところはおそらくリナリアの太ももくらいありそうだ。彫刻のように完璧な肢体に、リナリアは緊張とは違うものが自分の心臓を動かしていることを知る。

 触れてみたいけれど、触れるのが怖いような彼の身体に釘付けになっていると、フィグルドは器用にリナリアの夜着を下から上へと引っ張って、すぽんと脱がしてしまった。露わになる肌に、リナリアは恥ずかしさから胸を隠してしまう。

 その姿に、無意識にフィグルドは唇を舐めて湿らせる。彼女の細い足首を掴んで両足を広げさせると、自分の腰を間に割り込ませた。胸を隠すことに意識が行っていたリナリアはまんまとされるがまま、軸がぶれてそのまま後ろにぽすんと倒れてしまう。

 寝台の上に結っていない涅色の髪が綺麗に広がる。どうすればよいのかわからずおろおろとするリナリアをじっくりと上から観察する。

 先ほどの反応から言って、彼女は純潔だろう。

 男女の触れあいに免疫が無さ過ぎる。

 つまり、肌を許すことは簡単ではないはずだ。今の戸惑いと恥じらいを含んだ瞳を見れば、彼女にとってこの行為にどれだけの覚悟が必要だったかがわかる。
 
 (あぁ、その覚悟に応えよう――――旅が終わったら、貴方を妻に)

 フィグルドにとって、衝撃の出会いをしたリナリアは、あの瞬間から運命の人だった。リナリアの一挙手一投足を見逃すまいと神経をとがらせ、彼女が悲しい顔をすれば憂いを払いたかったし、嬉しそうに微笑めば抱きしめたくて仕方なくなる。

 自分が女性に対して器用な方だとは思っていなかったが、フィグルドとしてはリナリアに運命を感じ、彼女もまた、感じてくれたのではないか、とそう考えていた。

 だから、彼女が自ら肌を許すことをフィグルドに請うということは、彼にとって。
 
 貴方と同じ思いです。どうか、私の気持ちを受け取って――――
 
ということと同義だった。

 この世界は、日本とは違う。結婚前に告白し、交際を経てから結婚する、といったことはない。貴族制度がある世界なので、結婚は家同士の契約といった側面が強い。けれど、神の御使いとされる聖騎士達だけは、結婚相手を自由に選ぶことが出来る。

 何故なら、伴侶も、彼らと同じく神に愛される人間でなくてはならないからだ。
フィグルドはずっと、異世界のか弱い少女をこちらの都合で召喚し、役目を与えることは本当に正しいことなのかと思い悩んでいた。

 けれどリナリアと出会い、その思いが吹き飛んだ。彼女を自分の元へもたらした女神に、感謝したほどだ。

 君の憂いごと全て俺が包むから……この世界に来たことを良かったと思えるくらい愛するから

 出来るなら、理不尽に理不尽を重ねるこの世界を、君にも愛してほしい

フィグルドは上半身を倒すと、リナリアの顔の横に手をついて再び唇を塞いだ。最初はちゅ、ちゅ、と触れ合わせるだけの可愛らしい口づけを繰り返す。

 リナリアがおずおずと少し口を開けるのに目を細めて、交わりを深くする。くちゅくちゅと口内をかき混ぜ、飲み込み切れない唾液が溢れるのもかまわずに、キスに夢中になる。そ、と彼女の小さく可愛らしい耳に指先を添わせて擽り撫でてから穴を塞ぐと、唾液が交じり合う音がダイレクトに脳に響き、さらに幸福感を増幅する。

 食べられてしまうのではないか、と思うような激しい情熱的なキスに、リナリアの目尻に涙が浮かんだ。どこで呼吸をすればよいかわからずに、自身の胸を隠していた手をどけると、彼の厚い胸を弱弱しく叩く。

 リナリアの気持ちが届いたのか、フィグルドは顔を離すと、口づけで情欲に潤んだ瞳を覗き込む。
 
(……君のこんな顔を見られるのは、俺だけだ)
 
とろりと蕩けた顔に、フィグルドの興奮がさらに高まる。激しい口づけに少し呼吸が乱れたリナリアが、頭がぼうっとしているのを見逃さず、フィグルドはついていた手を彼女のわきの下へ移動させる。すると、リナリアはもう自分で胸を隠すことができなくなる。

 彼女がそのことに気づくよりも先に、フィグルドは頭を下げると、胸の先端……勃ちあがった小さな粒を口の中へと誘った。

「ぁ……っ」
 
突然ぬるついた舌に敏感な部分を舐め上げられ、リナリアは驚いて腰を浮かす。
 
 やだ……なんでそんなところ舐めるの……?

頭の中が混乱するけれど、ちゅう、と吸い上げられるとびりびりと身体全体を奇妙な感覚が走り抜ける。もう片方の胸を、大きな手がゆっくりと揉み上げながら、舌とは違う刺激を指先で送ってくる。
 
 大きな手……私の胸……、すっぽり収まっちゃう
 
 決して胸のサイズが小さいわけではないのに、あつらえたように彼の大きな手の中に綺麗に収まっているのがひどく淫靡に感じる。

 まるで、大型の肉食獣に抑えつけられて捕食されているかのような感覚がリナリアを襲う。だけどそれは恐怖ではなく、むしろ彼に食べられたいと願う欲求の方が強かった。

 自分でもわからない期待が膨らんでいく。いつの間にか、胸を隠すよりも、彼の愛撫が心地よくて、余計に入っていた身体の力が抜けていた。

 リナリアが身を委ねたのが伝わったのか、フィグルドは一度胸から顔を離すと、その全身の形を羽毛に触れる優しさで撫でながら確かめる。ぴくりと擽ったそうに反応するところを見つけると、何度かそこを往復して、彼女の唇から漏れる吐息を聞く。肌が粟立ってくるのを指先で感じながら、最後に、ぴたりと視線がリナリアの着ている下着に固定した。

 それは、この世界に召喚された時にフィグルドの頭に落ちてきた「黒うさぎのパンツ」だった。

 リナリアが、覚悟と同時に履くなら今しかないと履いた勝負下着。フィグルドからすると自分とリナリアを繋げた、尊いアイテムだ。

 指先で秘所に触れると、布地を濡らして外まで漏れた愛液がぬるりと滑った。
 
「……濡れている……」



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