5 / 34
第5話 再会(5)送られ狼
しおりを挟む
一体何度引き止められるのか。
そう思った時、その手をぐいっと強く引かれた。
「え?」
桜木がそのまま後ろに倒れたので、早苗も一緒に倒れ込んでしまう。
「きゃっ」
ぎゅっと抱き留められて、わけのわからないまま体を固くしていると、桜木が早苗ごとくるりと体を反転させた。
ベッドに押し倒された体勢になる。
目をぱちくりさせていると、桜木は早苗の両の手首を頭の上でまとめた。
「え、ちょ、なになに?」
驚いた早苗は訳もわからず抵抗することさえ忘れていた。
桜木が自分のネクタイを緩め、片手で器用に第一ボタンを外した。
頬を上気させ、早苗を見下ろす。
「駄目ですよ、先輩。酔って男の部屋に来るなんて」
言うやいなや、桜木は早苗の口に、自分の口を押しつけてきた。
「んん……」
反射的にばたばたと足を動かすが、桜木の体はびくともしない。
閉じた唇を舌でぺろりと舐められて、背筋がぞわりとした。
「んっ」
ちろちろと口角を舐められ、力が緩んだ隙に唇の間に舌が滑り込んでくる。
「ん、んっ」
舌が口腔を動き回る。
「先輩……んっ……先輩……」
桜木は角度を変えながら何度も早苗に口づけた。
「もっと、口開けて」
ちょっと待って。
私、桜木くんとキスしてるの……?
頭の片隅ではそういう考えも浮かんでいたが、急なことに動転していたのもあって、早苗は桜木の言葉に従ってしまっていた。
上顎の裏を舐められ、舌が早苗の舌に絡んできて、次第に気持ちよくなっていく。頭がふわふわした。
「はぁ……」
しばらくして桜木が離れた時、早苗の息は完全に上がっていた。
ようやく本気で抵抗する気持ちになったが、キスにとろけてしまった体に力が入らない。
加えて、飲酒をしていたのも良くなかった。
「アルコールが回ってきたんですね。先輩強くないのに、最後部長に付き合って、あんなに日本酒飲むから」
「桜木くんだって酔ってたのに……っ」
「すみません、演技でした。まだ先輩といたくて」
演技……?
桜木はしれっと言って、また早苗にキスをした。
「ん……」
先ほどの激しいキスとは一転、ゆっくりと舌を動かして、早苗が反応するところを重点的に責めていく。
「ん……先輩とのキス、気持ちいい」
「んんっ……」
「こっちも」
桜木は口を離し、今度は早苗の首元にキスを落としていった。ちゅっ、ちゅっ、とリップ音がやけに大きいのは、わざとなのだろうか。
早苗はもう何の抵抗もできない。
キスが首筋を上がっていく。
「あ……っ」
耳たぶを甘噛みされて、早苗は思わず声を上げてしまった。
「先輩、耳が弱いんだ。可愛い」
「ひゃぁっ、あっ」
はむはむと噛まれ、縁を舐め上げられる。
「こっちはどうですか?」
「あぁっ」
耳の中に舌が侵入してきて、早苗はびくりと体を震わせた。
入り口の近くをちろちろと舐められたあと、桜木の舌は深く奥まで入ってきた。
「やだぁ……っ」
「先輩、可愛い。もっと声聞かせて……」
桜木は再び首元にキスを落としたあと、反対側の耳も責め始めた。
「ねぇ、先輩……ここまで来たんだから、いいですよね……?」
耳元で熱っぽくささやいた桜木が、早苗のジャケットのボタンをはずし始める。
「え、待って……」
口ではそう言うが、桜木を止める力は残っていなかった。
桜木はブラウスのボタンも片手で外していき、ブラジャーのホックも外されて、早苗の胸が露わになった。
「もうこんなになってる。先輩感じやすいんだ」
桜木が嬉しそうに耳元で言い、早苗の耳を食む。早苗はさっと顔を赤くした。
「ちがっ……久しぶりっ、だから……っ」
「どういうことですか? 元彼と同棲してたんですよね?」
桜木はやわやわと手を動かしながら、鎖骨の辺りを舌先で舐めながら言う。
その言葉は過去形だった。早苗が彼氏と別れたという加世子との話を聞いていたようだ。
「レス、だった、からっ……」
もごもごと口ごもってしまう。
それを告白することが、桜木とこんな状況になっていることよりも、ずっと恥ずかしかった。
「マジ? 先輩と一緒に住んでてセックスしないとか、そんなことある?」
口を離した桜木は目を丸くして、信じらんねぇ、と呟いた。
そして、早苗に向かって目を細めて意地悪そうに笑った。
「じゃあ、今日は先輩のこと、いっぱい気持ちよくしてあげますね」
* * * * *
「ん……」
目が覚めたとき、早苗は一瞬自分がどこにいるのかわからなかった。
ここどこ……?
いつもの自分の部屋ではない。
そう思った途端、昨夜の出来事を思い出した。
桜木くんをタクシーで送って……押し倒されて……それで、それで……。
――セックスした。
驚愕の事実に思い立って、早苗はばっと横を見た。
そこには桜木の姿があった。
すやすやと気持ちよさそうに眠っている。
昨夜は分けられていた前髪が、まっすぐに降りていた。素肌の肩が布団から少し出ている。上半身裸なのだ。
そして早苗はっと気づく。自分が全裸であることに。
露わになった胸を隠すように布団を引き上げ、目を片手で覆ってがくりと頭を落とした。
「マジか……」
している最中のことはほとんど覚えていない。
しかし、したという事実だけはしっかりと記憶にあった。体の中心部にも違和感がある。これは間違いない。
後輩とセックスをしてしまうなんて。しかも酔った勢いで。
ああ、何てことをしてしまったのか、と激しく後悔する。
避妊はした……と思う。勢いだったとはいえ、してくれただろう、さすがに。
取りあえず帰ろう!
今桜木が起きたら気まずいどころの話ではない。
スーツは床に落ちていてくしゃくしゃだったが、贅沢を言っている場合ではない。服を拾って手早く身支度を整えた早苗は、静かに桜木の部屋を出た。
「そんなに急いで帰らなくたって……」
枕に顔を埋めて呟いた桜木の声は、早苗には聞こえていなかった。
そう思った時、その手をぐいっと強く引かれた。
「え?」
桜木がそのまま後ろに倒れたので、早苗も一緒に倒れ込んでしまう。
「きゃっ」
ぎゅっと抱き留められて、わけのわからないまま体を固くしていると、桜木が早苗ごとくるりと体を反転させた。
ベッドに押し倒された体勢になる。
目をぱちくりさせていると、桜木は早苗の両の手首を頭の上でまとめた。
「え、ちょ、なになに?」
驚いた早苗は訳もわからず抵抗することさえ忘れていた。
桜木が自分のネクタイを緩め、片手で器用に第一ボタンを外した。
頬を上気させ、早苗を見下ろす。
「駄目ですよ、先輩。酔って男の部屋に来るなんて」
言うやいなや、桜木は早苗の口に、自分の口を押しつけてきた。
「んん……」
反射的にばたばたと足を動かすが、桜木の体はびくともしない。
閉じた唇を舌でぺろりと舐められて、背筋がぞわりとした。
「んっ」
ちろちろと口角を舐められ、力が緩んだ隙に唇の間に舌が滑り込んでくる。
「ん、んっ」
舌が口腔を動き回る。
「先輩……んっ……先輩……」
桜木は角度を変えながら何度も早苗に口づけた。
「もっと、口開けて」
ちょっと待って。
私、桜木くんとキスしてるの……?
頭の片隅ではそういう考えも浮かんでいたが、急なことに動転していたのもあって、早苗は桜木の言葉に従ってしまっていた。
上顎の裏を舐められ、舌が早苗の舌に絡んできて、次第に気持ちよくなっていく。頭がふわふわした。
「はぁ……」
しばらくして桜木が離れた時、早苗の息は完全に上がっていた。
ようやく本気で抵抗する気持ちになったが、キスにとろけてしまった体に力が入らない。
加えて、飲酒をしていたのも良くなかった。
「アルコールが回ってきたんですね。先輩強くないのに、最後部長に付き合って、あんなに日本酒飲むから」
「桜木くんだって酔ってたのに……っ」
「すみません、演技でした。まだ先輩といたくて」
演技……?
桜木はしれっと言って、また早苗にキスをした。
「ん……」
先ほどの激しいキスとは一転、ゆっくりと舌を動かして、早苗が反応するところを重点的に責めていく。
「ん……先輩とのキス、気持ちいい」
「んんっ……」
「こっちも」
桜木は口を離し、今度は早苗の首元にキスを落としていった。ちゅっ、ちゅっ、とリップ音がやけに大きいのは、わざとなのだろうか。
早苗はもう何の抵抗もできない。
キスが首筋を上がっていく。
「あ……っ」
耳たぶを甘噛みされて、早苗は思わず声を上げてしまった。
「先輩、耳が弱いんだ。可愛い」
「ひゃぁっ、あっ」
はむはむと噛まれ、縁を舐め上げられる。
「こっちはどうですか?」
「あぁっ」
耳の中に舌が侵入してきて、早苗はびくりと体を震わせた。
入り口の近くをちろちろと舐められたあと、桜木の舌は深く奥まで入ってきた。
「やだぁ……っ」
「先輩、可愛い。もっと声聞かせて……」
桜木は再び首元にキスを落としたあと、反対側の耳も責め始めた。
「ねぇ、先輩……ここまで来たんだから、いいですよね……?」
耳元で熱っぽくささやいた桜木が、早苗のジャケットのボタンをはずし始める。
「え、待って……」
口ではそう言うが、桜木を止める力は残っていなかった。
桜木はブラウスのボタンも片手で外していき、ブラジャーのホックも外されて、早苗の胸が露わになった。
「もうこんなになってる。先輩感じやすいんだ」
桜木が嬉しそうに耳元で言い、早苗の耳を食む。早苗はさっと顔を赤くした。
「ちがっ……久しぶりっ、だから……っ」
「どういうことですか? 元彼と同棲してたんですよね?」
桜木はやわやわと手を動かしながら、鎖骨の辺りを舌先で舐めながら言う。
その言葉は過去形だった。早苗が彼氏と別れたという加世子との話を聞いていたようだ。
「レス、だった、からっ……」
もごもごと口ごもってしまう。
それを告白することが、桜木とこんな状況になっていることよりも、ずっと恥ずかしかった。
「マジ? 先輩と一緒に住んでてセックスしないとか、そんなことある?」
口を離した桜木は目を丸くして、信じらんねぇ、と呟いた。
そして、早苗に向かって目を細めて意地悪そうに笑った。
「じゃあ、今日は先輩のこと、いっぱい気持ちよくしてあげますね」
* * * * *
「ん……」
目が覚めたとき、早苗は一瞬自分がどこにいるのかわからなかった。
ここどこ……?
いつもの自分の部屋ではない。
そう思った途端、昨夜の出来事を思い出した。
桜木くんをタクシーで送って……押し倒されて……それで、それで……。
――セックスした。
驚愕の事実に思い立って、早苗はばっと横を見た。
そこには桜木の姿があった。
すやすやと気持ちよさそうに眠っている。
昨夜は分けられていた前髪が、まっすぐに降りていた。素肌の肩が布団から少し出ている。上半身裸なのだ。
そして早苗はっと気づく。自分が全裸であることに。
露わになった胸を隠すように布団を引き上げ、目を片手で覆ってがくりと頭を落とした。
「マジか……」
している最中のことはほとんど覚えていない。
しかし、したという事実だけはしっかりと記憶にあった。体の中心部にも違和感がある。これは間違いない。
後輩とセックスをしてしまうなんて。しかも酔った勢いで。
ああ、何てことをしてしまったのか、と激しく後悔する。
避妊はした……と思う。勢いだったとはいえ、してくれただろう、さすがに。
取りあえず帰ろう!
今桜木が起きたら気まずいどころの話ではない。
スーツは床に落ちていてくしゃくしゃだったが、贅沢を言っている場合ではない。服を拾って手早く身支度を整えた早苗は、静かに桜木の部屋を出た。
「そんなに急いで帰らなくたって……」
枕に顔を埋めて呟いた桜木の声は、早苗には聞こえていなかった。
40
あなたにおすすめの小説
それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
妖狐の嫁入り
山田あとり
恋愛
「――おまえを祓うなどできない。あきらめて、俺と生きてくれ」
稲荷神社の娘・遥香(はるか)は、妖狐の血をひくために狐憑きとさげすまれ、ひっそり生きてきた。
ある日、村八分となっている遥香を探して来たのは怨霊や魔物を祓う軍人・彰良(あきら)。
彼は陰陽師の名門・芳川家の男だった。
帝国陸軍で共に任務にあたることになった二人だったが、実は彰良にもある秘密が――。
自己評価は低いが芯に強さを秘める女が、理解者を得て才能を開花させる!
&
苦しみを抱え屈折した男が、真っ直ぐな優しさに触れ愛を知る!
明治中期風の横浜と帝都を駆ける、あやかし異能ロマンス譚です。
可愛い妖怪・豆腐小僧も戦うよ!
※この作品は、カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
腹黒外科医に唆された件~恋人(仮)のはずが迫られています~
有木珠乃
恋愛
両親を亡くし、二人だけの姉妹になった一ノ瀬栞と琴美。
ある日、栞は轢き逃げ事故に遭い、姉の琴美が務める病院に入院することになる。
そこで初めて知る、琴美の婚約者の存在。
彼らの逢引きを確保するために利用される栞と外科医の岡。
「二人で自由にならないか?」を囁かれて……。
【完結】あなた専属になります―借金OLは副社長の「専属」にされた―
七転び八起き
恋愛
『借金を返済する為に働いていたラウンジに現れたのは、勤務先の副社長だった。
彼から出された取引、それは『専属』になる事だった。』
実家の借金返済のため、昼は会社員、夜はラウンジ嬢として働く優美。
ある夜、一人でグラスを傾ける謎めいた男性客に指名される。
口数は少ないけれど、なぜか心に残る人だった。
「また来る」
そう言い残して去った彼。
しかし翌日、会社に現れたのは、なんと店に来た彼で、勤務先の副社長の河内だった。
「俺専属の嬢になって欲しい」
ラウンジで働いている事を秘密にする代わりに出された取引。
突然の取引提案に戸惑う優美。
しかし借金に追われる現状では、断る選択肢はなかった。
恋愛経験ゼロの優美と、完璧に見えて不器用な副社長。
立場も境遇も違う二人が紡ぐラブストーリー。
地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!
楓乃めーぷる
恋愛
見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。
秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。
呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――
地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。
ちょっとだけ三角関係もあるかも?
・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。
・毎日11時に投稿予定です。
・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。
・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる