婚約破棄のその後に

ゆーぞー

文字の大きさ
3 / 61

3

しおりを挟む
「サントス」

 王妃様は再び総団長の名を呼んだ。

「ここにいる男は騎士で間違いない?」

 王妃様の問いにサントス様は小さくうなづいている。

「騎士の本分は何?」

 先ほどとは打って変わって厳しい物言いである。サントス様は王妃様の質問に答えた。

「国を護り、人を護るものであります!」
「我が国の教えはそうよね」

 王妃様は小さくうなづいた。

「ここにいるアイザックス。聞けば親を裏切り、婚約者を裏切っている。そんな身近な人を簡単に裏切れるのであれば、陛下や私も裏切るのでは?」

 え?私は今聞いた言葉が信じられなかった。見るとレナード様は青ざめて目を大きく見開いている。

「そのような者は本当に騎士なの?」

 王妃様の再びの問い。

「ち、違うと存じます」

 サントス様の言葉にレナード様が震え出した。

「ここにアイザックス当主はいる?」

 王妃様が室内を見渡した。人の中から伯爵様が出てくる。来月にはお義父様となる方だったが、そのお義父様は黙って見ていたのだ。何もせずに、私が公衆の面前で罵倒されるのを黙って見ていたのだ。そう思うと許せない気持ちになるが、相手は伯爵。文句を言うことはできない。

「この者はそなたの息子で間違いない?」

 お義父様はチラリとレナード様を見た。レナード様は救いを求める子犬のような目で見返している。

「違います」

 は?耳を疑ってしまい、まじまじと伯爵様を見た。周囲ではざわめきが起きていたし、レナード様は「父上・・・」と泣きそうな声を出している。

「このような者は我が息子ではありません。確かに今朝までは息子でありましたが、先ほど継承権を外しました。戸籍も変えるつもりです」

 顔色ひとつ変えず彼は言い切った。怖い、と密かに思った。お義父様にならなくてよかったかもしれないとさえ思った。

「そう・・・」

 王妃様は満面の笑みでレナード様を見た。

「騎士でもなく伯爵家でもなくなったけど愛がある。そうよね?」

 うわっ、なんというか王妃様、怖い。レナード様は呆然としている。先ほどまでの私のようだ。

「ところで、メリア」

 王妃様は今度はメリア様の方を向いた。メリア様も今のことが信じられずにぼんやりしている。

「勇気があるわねぇ」

 言われたことについて行かないのだろう。メリア様は曖昧に返事をした。

「お相手は婚約者がいたのでしょう?それなのに愛しあうなんて。男性と2人きりになってはいけないって、私は子どもの頃から厳しく言われてきたしどこのご家庭でもそういう教えをするって思っていたわ」

 そこで一度言葉を止めた。周囲を見渡すと令嬢たちにニコリと微笑む。

「あなた方はそういうふうに教わらなかった?」
「は、はい」
「私も両親やメイドからもそう言われて・・・」

 聞かれた令嬢たちは慌てて答えている。先ほどまで私を侮辱していた人たちだ。

「あらぁ?じゃあ、リオンヌ家は斬新な教育方法なのねぇ」

 王妃様はまたもや首を傾げた。今やその仕草は恐怖に感じる。

「確か王子たちの教育係の1人にリオンヌ家の人いたわよね」

 メリア様の義兄のレオフォルト様のことだ。メリア様の姉君と結婚している。

「困ったわぁ、そんな方に教育をお任せできないし。仕方ないからお辞めいただくわね」

 慌てたようにレオフォルト様が飛び出てきた。え?いたんだ。ということは私がレナード様に婚約破棄を告げられたこと。その横に義妹のメリア様がいらしたこともご存じだったのだ。どんな気持ちでいたのだろうか。

「お、王妃様、そんな・・・」
「あらぁ、だって。私と教育方針が合わないんですもの。仕方ないじゃない?」
「メリアは一族でも手を焼いておりました。何度注意しても生活を改めることもなく・・・」
「義妹を教育できない方に王子を任せられないわ」

 レオフォルト様は膝から崩れ落ちた。ショックを受けるとああいうふうになるのか、私はならなくてよかった。と、人ごとのように呑気に考えた。もう私に注目している人はいない。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに

おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」 結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。 「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」 「え?」 驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。 ◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話 ◇元サヤではありません ◇全56話完結予定

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろうにも掲載中です)

捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。 彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。 さて、どうなりますでしょうか…… 別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。 突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか? 自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。 私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。 それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。 7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

罠に嵌められたのは一体誰?

チカフジ ユキ
恋愛
卒業前夜祭とも言われる盛大なパーティーで、王太子の婚約者が多くの人の前で婚約破棄された。   誰もが冤罪だと思いながらも、破棄された令嬢は背筋を伸ばし、それを認め国を去ることを誓った。 そして、その一部始終すべてを見ていた僕もまた、その日に婚約が白紙になり、仕方がないかぁと思いながら、実家のある隣国へと帰って行った。 しかし帰宅した家で、なんと婚約破棄された元王太子殿下の婚約者様が僕を出迎えてた。

どうしてあなたが後悔するのですか?~私はあなたを覚えていませんから~

クロユキ
恋愛
公爵家の家系に生まれたジェシカは一人娘でもあり我が儘に育ちなんでも思い通りに成らないと気がすまない性格だがそんな彼女をイヤだと言う者は居なかった。彼氏を作るにも慎重に選び一人の男性に目を向けた。 同じ公爵家の男性グレスには婚約を約束をした伯爵家の娘シャーロットがいた。 ジェシカはグレスに強制にシャーロットと婚約破棄を言うがしっこいと追い返されてしまう毎日、それでも諦めないジェシカは貴族で集まった披露宴でもグレスに迫りベランダに出ていたグレスとシャーロットを見つけ寄り添う二人を引き離そうとグレスの手を握った時グレスは手を払い退けジェシカは体ごと手摺をすり抜け落下した… 誤字脱字がありますが気にしないと言っていただけたら幸いです…更新は不定期ですがよろしくお願いします。

処理中です...