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そうして私はクルーソン様が一足先に向かったというラリーニャに向かった。国境近いこの地に彼は移動願いを出し、警備隊長として任務につくことになったのだ。
両親はレナード様とメリア様のことを最初から聞いていた。白い結婚になるだろうから規定の三年が過ぎれば離縁とし、その際は財産の一部を渡すことをあらかじめ決めていたらしい。婚約破棄されても離縁になっても私が傷ものになることに変わらない。最初から両親は私を傷ものにするつもりであったのだ。
「だって、お相手は伯爵様。お断りできないもの」
「それに一度は伯爵家の嫁になったのだから、次の縁談だっていい条件が望める。アイザックス様は次の縁談もご紹介するとおっしゃっていたんだ」
「まさか、姉様。アイザックス家に本気で嫁入りできると思ってた?何の取り柄もないのに?」
弟までそんなことを言った。私以外は知っている事実であったのだ。家族が憎いと思ったのはこれが初めてであった。
「慰謝料と損害賠償を支払ってきたので渡すわね。これはライラ個人の財産よ。他に渡すことは許しません」
王妃様は約束通り、アイザックス家とリオンヌ家から慰謝料と損害賠償金を払わせてくれた。そしてそれを全て私の財産にするように命令してくれた。私の結婚と離婚でお金を当てにしていた家族が憤ったのは当然である。でも王妃命令のため渋々諦め、私も家族に対して少しだけ溜飲が下がった。
「あなたは少し王都から離れるべきよ。家族からもね」
ラリーニャに向かう前、謁見が許され王妃様にお会いした。夜会の時と同じ神々しいまでの美しさに圧倒される。緊張で声も出ない私に王妃様が優しくおっしゃってくださった。
夜会の時のことは「アイザックス家の婚約破棄事件」として面白おかしく話が広まっていた。「名門アイザックス家の詐欺師」だの「リオンヌ家の奔放な令嬢教育」だの言われ放題である。私のことはあまり話題に上らず、「アイザックス家が金に物を言わせ、地方の子爵令嬢を無理矢理婚約者にした」とされている。
アイザックス家とリオンヌ家は名門貴族であったが、このところ傍若無人に振る舞うことが増えてきたため陛下と王妃様は頭を悩ましていたそうだ。代々王家とは深いつながりがあり、切るに切れないものもあったのだが、今回の婚約破棄事件をきっかけに一気に断ち切ることができた。と、王妃様は明るく笑って話してくれた。その笑顔は美しかったが、怖かった。
ラリーニャ行きの馬車もアイザックス家経由で王妃様が発注してくれた。至れり尽くせりであるが、アイザックス家は破産するかもしれないという噂である。私への慰謝料、損害賠償以外にもレナード様の騎士としての給料も全額返済命令が出たのだ。
レナード様は本来なら騎士団に入団できる腕前ではなかった。それをお金を支払い無理矢理入団したという。入団した後もバレないようにお金を使い続けた。レナード様は何とか騎士団で出世し、メリア様と結婚したいと考えていた。2人の結婚は両家から反対されていたからである。
そこでレナード様とメリア様はよからぬことを思いついてしまった。マイズ国からの襲撃をレナード様が食い止めるという自作自演のストーリーだ。実はリオンヌ家はマイズ国と通じていた。適当な人間を雇い、わざと騒ぎを起こすようにしたのである。
しかしここで問題が発生した。レナード様とメリア様はマイズ国の言葉を知らなかった。マイズ国で雇われた者も我が国の言葉はわからない。あらかじめ「○○日に行く」と記したメモをレナード様たちは「〇〇日には行かない」と読み間違えてしまった。そのため、レナード様はクルーソン様へ全てを押し付けてメリア様に会いに行ってしまったのである。
全てを知ったレナード様はリオンヌ家の力も借り、マイズ国からの襲撃を食い止めたのは自分と報告。クルーソン様がそれをどう感じ、どう思ったのかわからないのだが、レナード様はめでたく副団長まで昇進した。本人はそこまで出世したらメリア様との結婚も可能と思っていたようだが、結婚で注目を浴びるとそもそもの入団詐称がバレるかもしれないとアイザックス様は懸念した。それで私と婚約すれば、堅実な好青年と見られるだろうと思ったらしい。しかし、レナード様の入団詐称は当初から疑われていたという。証拠を固めるのに時間をかけたというのが真相のようだ。
これは内緒ね、と王妃様が教えてくれた。国を護るべき騎士がお金で不正をしたとは公表できない。そのうえ、マイズ国のことは国交問題になるので公にはできないらしい。しかし王都にいると嫌でも噂が耳に入ってくる。ラリーニャへの出立まで時間がなかったのも幸いした。これ以上王都に留まると何を聞くかわからない。
両親はレナード様とメリア様のことを最初から聞いていた。白い結婚になるだろうから規定の三年が過ぎれば離縁とし、その際は財産の一部を渡すことをあらかじめ決めていたらしい。婚約破棄されても離縁になっても私が傷ものになることに変わらない。最初から両親は私を傷ものにするつもりであったのだ。
「だって、お相手は伯爵様。お断りできないもの」
「それに一度は伯爵家の嫁になったのだから、次の縁談だっていい条件が望める。アイザックス様は次の縁談もご紹介するとおっしゃっていたんだ」
「まさか、姉様。アイザックス家に本気で嫁入りできると思ってた?何の取り柄もないのに?」
弟までそんなことを言った。私以外は知っている事実であったのだ。家族が憎いと思ったのはこれが初めてであった。
「慰謝料と損害賠償を支払ってきたので渡すわね。これはライラ個人の財産よ。他に渡すことは許しません」
王妃様は約束通り、アイザックス家とリオンヌ家から慰謝料と損害賠償金を払わせてくれた。そしてそれを全て私の財産にするように命令してくれた。私の結婚と離婚でお金を当てにしていた家族が憤ったのは当然である。でも王妃命令のため渋々諦め、私も家族に対して少しだけ溜飲が下がった。
「あなたは少し王都から離れるべきよ。家族からもね」
ラリーニャに向かう前、謁見が許され王妃様にお会いした。夜会の時と同じ神々しいまでの美しさに圧倒される。緊張で声も出ない私に王妃様が優しくおっしゃってくださった。
夜会の時のことは「アイザックス家の婚約破棄事件」として面白おかしく話が広まっていた。「名門アイザックス家の詐欺師」だの「リオンヌ家の奔放な令嬢教育」だの言われ放題である。私のことはあまり話題に上らず、「アイザックス家が金に物を言わせ、地方の子爵令嬢を無理矢理婚約者にした」とされている。
アイザックス家とリオンヌ家は名門貴族であったが、このところ傍若無人に振る舞うことが増えてきたため陛下と王妃様は頭を悩ましていたそうだ。代々王家とは深いつながりがあり、切るに切れないものもあったのだが、今回の婚約破棄事件をきっかけに一気に断ち切ることができた。と、王妃様は明るく笑って話してくれた。その笑顔は美しかったが、怖かった。
ラリーニャ行きの馬車もアイザックス家経由で王妃様が発注してくれた。至れり尽くせりであるが、アイザックス家は破産するかもしれないという噂である。私への慰謝料、損害賠償以外にもレナード様の騎士としての給料も全額返済命令が出たのだ。
レナード様は本来なら騎士団に入団できる腕前ではなかった。それをお金を支払い無理矢理入団したという。入団した後もバレないようにお金を使い続けた。レナード様は何とか騎士団で出世し、メリア様と結婚したいと考えていた。2人の結婚は両家から反対されていたからである。
そこでレナード様とメリア様はよからぬことを思いついてしまった。マイズ国からの襲撃をレナード様が食い止めるという自作自演のストーリーだ。実はリオンヌ家はマイズ国と通じていた。適当な人間を雇い、わざと騒ぎを起こすようにしたのである。
しかしここで問題が発生した。レナード様とメリア様はマイズ国の言葉を知らなかった。マイズ国で雇われた者も我が国の言葉はわからない。あらかじめ「○○日に行く」と記したメモをレナード様たちは「〇〇日には行かない」と読み間違えてしまった。そのため、レナード様はクルーソン様へ全てを押し付けてメリア様に会いに行ってしまったのである。
全てを知ったレナード様はリオンヌ家の力も借り、マイズ国からの襲撃を食い止めたのは自分と報告。クルーソン様がそれをどう感じ、どう思ったのかわからないのだが、レナード様はめでたく副団長まで昇進した。本人はそこまで出世したらメリア様との結婚も可能と思っていたようだが、結婚で注目を浴びるとそもそもの入団詐称がバレるかもしれないとアイザックス様は懸念した。それで私と婚約すれば、堅実な好青年と見られるだろうと思ったらしい。しかし、レナード様の入団詐称は当初から疑われていたという。証拠を固めるのに時間をかけたというのが真相のようだ。
これは内緒ね、と王妃様が教えてくれた。国を護るべき騎士がお金で不正をしたとは公表できない。そのうえ、マイズ国のことは国交問題になるので公にはできないらしい。しかし王都にいると嫌でも噂が耳に入ってくる。ラリーニャへの出立まで時間がなかったのも幸いした。これ以上王都に留まると何を聞くかわからない。
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