婚約破棄のその後に

ゆーぞー

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「レナードの不正は最初から分かっていた」

 サントスが重々しい口調で言う。退団を申し入れたジョセフではあるが、レナードの名前は出していない。正直に言えばジョセフは自分の功績などどうでもよかった。騎士団の一員として国を護ることができればそれでよかった。これではジョセフがレナードに嫉妬しているようになってしまう。それは訂正しておきたかったのだが、聞いているうちにどうでも良くなってしまった。そう思いたいのなら思えばいい。ジョセフはそう考えてサントスの話を聞いていた。

 レナードが騎士学校に入れるような実力ではないこと、ましてや第一騎士団に配属されるわけはないことはサントスは十分理解していたようだ。しかしどういうわけか彼は配属されている。

 ジョセフは王都から離れた土地の出身であったため何も知らなかったのだが、貴族の令息が箔をつけるために騎士学校に入学することはよくあることだった。実力がある者だけではなく、中には無試験で入学するということも確かにあった。しかしそういう者は卒業後は騎士団に入らず領地に戻るものなのだ。

 ジョセフとレナードは2人で任務に当たる。レナードが大人しくしていればよかったのだが、彼は調子に乗ってジョセフの功績を自分のしたことだと吹聴していた。それも事実より少し大げさに語っている。そういう時のレナードはイキイキとしており、どこか恍惚した表情をしていた。そんな彼を何度かジョセフも目撃していた。最初見た時は驚いたが、やがて何度も見るうちにどうでもよくなってしまった。いちいち訂正するのは馬鹿馬鹿しい。わかる人間が聞けばレナードの嘘だとわかるのだ。

 そのうちにレナードはメリア・リオンヌと付き合うようになった。侯爵家の令嬢であるが、メリアは騎士団の中では有名な悪女である。結婚している騎士とつき合い離婚させたり、騎士がよく集まる酒場に1人で出向き片っ端から騎士に声をかけたりと御令嬢とは思えぬ奔放ぶり。先輩騎士から入団時には気をつけるようにお達しが出ていたくらいである。

 レナードは任務中いなくなるようになった。おそらくメリアと会っているのだろう。いない方が仕事は捗るのだが、やはりサボるという行為は許されるものではない。最初のうちは本人に注意したが、聞き入れないためやむなく上司に報告した。告げ口のようでジョセフは気が進まなかったのだが、仕事を放棄するという行為はジョセフからしたら許されることではなかった。騎士という職業を選んだ以上はその任務を真摯に取り組むべきである。

 上司は報告を受けたが、レナードに注意をした様子は見えなかった。レナードも相変わらず仕事をサボる。レナードは上司に金を渡しているのでお咎めはないのだ、同僚たちからそんな忠告を受けジョセフは諦めた。こういったことも退団を決めたきっかけの一つである。レナードに対してではなく、金を受け取って不正をする者がいることやそういったことを許してしまう環境に対してジョセフは失望していたのである。

 そんなある日。その日は国境沿いで任務に当たる予定だったのだが、レナードは来なかった。いつものことだと諦めたのだが、マイズ国から数人の襲撃を受けたのだ。ジョセフは1人でそれを食い止めたのだが、すぐにおかしいと気がついた。本気で国を襲うつもりであるならもう少し手応えがあっていいはずだ。だが目の前の男たちは簡単にやられてしまう。

 国際問題に相当するのですぐに上司に連絡をし、指示を仰いだ。その結果ジョセフは襲撃のことは他言してはならないと言われ、当然ながら誰にも言わずにいた。しかし数日後、レナードがマイズ国から来た数人のならず者を1人で成敗したという話が騎士団の中で流れ出した。そうこうしているうちに、いつの間にかレナードは副団長に就任していたのである。

「関わった者を今割り出している。結果が出るまで退団については保留してほしい」

 サントスに頭を下げられ、ジョセフはやむなくうなづいた。撤回するつもりはなかったのだが、結果とは何かを見届けたいと思ったからである。
 
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