婚約破棄のその後に

ゆーぞー

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 さっそくセオとメイリンの家へ行くとタイロンに料理を教える。包丁の使い方から教えたが、すぐに要領を得たようでスムーズに作業は進んだ。本当は宿舎の方で作りたかったのだが、中に入るにはジョセフ様の許可がいる。お忙しいようなのでこちらで作ることにした。

 昼は具沢山のスープと肉を挟んだサンドイッチにした。そうして出来上がったサンドイッチは山盛りになった。足りなかったら大変と思い大量に作ったのだが、逆に作りすぎかもしれない。と、思うと少々不安である。

「美味しそうです」

 自分で作ったのにタイロンは目を輝かせている。喉がゴクリと鳴ったのが聞こえた。

「たくさんできたわね」
「1人3個か、足りるかなぁ」

 え?と思ってタイロンを思わず見た。タイロンは独り言を言ったことに気づいていないのか、しきりにブツブツと呟いている。

「でもスープで膨らませればいいか」

 スープも大量に作った。大鍋3個である。探したら大鍋が3個あったのでそれを使って作ってみたのだ。ちなみに中鍋で私たちとジョセフ様の分を作る。これは私が作った。

「では宿舎の方に運びましょう」

 セオに促され気がついた。そうだ、出来上がった料理は運び出すのだ。サンドイッチならともかく、鍋はどうしたらいいのだろうか。大鍋だしものすごく重い。

「大丈夫ですよ」

 タイロンが外に出ると隊員の人が何人かやってきた。若い人たちで今日の当番らしい。彼らは料理を見ると、驚いたり興奮したりしている。

「うおっ、なんだ、すげぇ」
「タイロン、お前が作ったのか?」

 彼らはジョセフ様ほどではないが、みんな体格がいい。あの体格を維持するためには食事は大切であろう。彼らに紛れてタイロンが見えなくなった。しばらくすると。

「そうか!ライラ様が」
「よかったじゃないか」

 タイロンの声は聞こえなかったが、どうやら彼が説明をしたらしい。ジョセフ様もそうだが、隊員の方々の声は大きいようだ。

「よし、持っていこう」
「楽しみだな」

 あっという間に隊員の人たちが料理を運び出していく。

「ライラ様、ありがとうございます」
「楽しみです!」
「作ったのはタイロンですから」
「はっはっはっ、ご謙遜を」
「ライラ様は声まで可憐ですね」

 控えめに言ったつもりはないが、私の声はみんなの声にかき消されてしまう。彼らは笑顔で軽々と料理を抱えて出ていった。

 彼らが去ると急に静寂が訪れた。さて、こちらも準備しよう。サンドイッチは私とメイリン、セオの分は小さめにしている。お肉だけだとボリュームがありすぎるので野菜のサンドイッチも作る。その他にもフルーツを切って盛り付ける。ジョセフ様にも用意した。
「隊員たちが喜んでいたのはこれか」

 部屋に入ってきたジョセフ様の目が輝いて見える。

「差し出がましいことを致しましたが、タイロンに料理を教えました」

 言われる前に言っておいたほうがいいだろう。怒られたらどうしようという不安もあったが、やってしまったことは仕方がない。チラリとジョセフ様を見たが、特に怒っている様子もない。

「そうか、面倒をかけた。だが、ありがたい」

 そう言ってもらえてよかった。私は胸を撫で下ろした。山盛りに盛ったサンドイッチもジョセフ様はあっという間に平らげていく。私が一つのサンドイッチを食べ終わる頃、彼の皿は半分に減っていた。

 その様子を見ながら、ジョセフ様にはもしかしたら他に決めた方がいらっしゃったのかもしれないと思った。それなのに私と結婚する羽目になってしまった。あの日私が夜会に出たからこんなことになってしまったのだ。出たくて出たわけではなかった。今は行かなければよかったと後悔している。

 私は彼の人生を狂わせてしまったのだ。だから、彼が健康で健やかに過ごせるように食事を作るのは私の義務ではないか。そう思い、私は夕飯に何を作るか今から考えることにした。そうしなければ行き場がないままのような気がした。



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