婚約破棄のその後に

ゆーぞー

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「で、結婚式はどうするおつもりで?」

 おそらくジョセフは何も考えていないだろう。レイモンドはわざと意地悪く聞いた。結婚式など意味のないものだと思っているに違いない。

「その点は抜かりない」

 ジョセフは大きく胸を張って答えた。

「両親たちが張り切っている」

 はぁぁ~~~と、レイモンドは大きく息を吐いた。この人は気がつかないだけだろう。悪気はないのだ。

「だが、俺としたら」

 ジョセフはそう言いながらサンドイッチを手にしている。まだ食べるのか、とレイモンドは食べてもいないのに胃もたれがしてきた。ライラの料理が美味しいのはわかっているが、ジョセフは食べ過ぎなのだ。

 サンドイッチを口に入れモグモグと咀嚼しているのをレイモンドは見つめていた。ゴクンと飲み込んでから、ジョセフは言った。

「小さな教会で2人だけで誓い合いたいな」

 なんだ、それは。なかなかロマンチックではないか。レイモンドは少しだけジョセフのことを見直した。

「大勢の前って面倒だし見せ物になったみたいでムカつく」

 続く言葉にレイモンドは唖然とした。やはりこの男はダメだ。治しようがないだろうから仕方がない。むかつくレイモンドの耳には届いていなかった。その後小さくジョセフがつぶやいたのだ。

「ライラを誰にも見せたくない」



 ジョセフ様が行ってしまったら、お屋敷の中は急に静かになった気がした。実際にはお義父様とお義兄様方は結婚式の招待客について議論されているし、お義母様はドレスについてメイドや侍女と話し込んでいる。静かなはずがないのだ、私はその横にいるけど話している内容は少しも入ってこなかった。

「ね、ライラはどう思う?」

 お義母様に声をかけられたけど、答えられない。聞いていなかったとは言えないので、曖昧に微笑んでしまう。

「決められないわよねぇ」

 頬に手を当てお義母様が言う。悩んで答えられなかったと解釈してくれたようだ。

「ライラは色白だしデコルテが綺麗に見えるこのレースがいいと思うの」

 お義母様の意見にオリビアが一歩前に進んだ。

「腰からおみ足のラインが綺麗ですから、こういったデザインのドレスはいかがでしょうか」

 と、一着のドレスを手にした。

「私はこのドレスの方がよろしいかと存じます」

 ミリーが別のドレスを広げた。

「全部着てもらえるかしら?」

 お義母様の言葉にまたもや微笑んでしまう。

「ライラ、疲れるからほどほどにしたらいいよ」

 フランツ義兄様が苦笑しながらアドバイスをくれた。お義父様たちと話していたと思うのに私の様子も気にかけてくれたらしい。

「ドレス選びは楽しみの一つなのよ。男は黙ってらっしゃい」

 ピシャリとお義母様が言うと、お義父様は肩をすくめた。

「ライラは何も気にしなくていいよ。みんな楽しくてやってるんだからね」
「母上は本当にドレス選びが好きなんだ。自分はもう歳だから若い子のドレス選びは楽しくて仕方ないらしい」
「歳とは何よ、経験豊富とおっしゃい」
「はいはい」

 メイドや使用人たちもそのやり取りを聞きながら笑っている。いつもこんな感じなのだろうか。自分が育ってきた環境とは大きく違うことに私は戸惑っていた。どう接したらいいか、何をどうしたらいいかわからない。

「何も気にしなくていいのよ。ライラ」

 お義母様がそっと私の横に来てくれ、優しく話してくれた。

「あなたはそのままでいいの。あなたがジョセフと結婚してくれて本当に私たちは嬉しいのよ。家族になってくれてありがとう」

 お義母様の手が私の手を優しく包んでくれた。その温もりが心の奥まで染み込んでいくようだった。



 
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