婚約破棄のその後に

ゆーぞー

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 お茶会というものは私は初めてだった。お茶やお菓子を楽しみながら話をする。それが私のお茶会というものの認識だった。

 今、私はお茶会に参加している。参加者はソフィアとポージー、そしてジョセフ様のご両親とお兄様方である。初めてのことで私は緊張していた。うまく話すことができるだろうか。マナーは大丈夫だろうか。

 そんな私の前にお茶が置かれた。メイリンが淹れてくれたようだ。私の作ったクッキーが添えられている。

 思わずメイリンと目が合った。メイリンはニコリと笑いかけてくれる。見守ってくれていると思うと安心できた。

 ソフィアは目の前に置かれたお茶を見て微笑んでいる。ポージーは目を見開いてお茶を眺めていた。

「ほほほ、どうぞ、召し上がれ」

 お義母様が笑顔で勧めている。ソフィアがカップを持ち上げた。

「まっ、タリロモではございませんこと?」

 大袈裟なくらいに目を見開いて、ソフィアが言った。タリロモは古くからある陶磁器の工房である。王族や高位貴族も使用している名家の証とも言える品である。

「私どもにお出しいただけるなんて、申し訳ございませんわ」

 ソフィアはそう言いながら、お茶を口にした。

「まぁ、良い香りですわぁ」

 そしてクッキーを一口齧った。

「美味しいですわぁ。このクッキーも王都の有名なお店でお買い求めに?」

 いえいえ、私が作った素朴なクッキーでございます。と、言うべきかどうか悩んで、周囲を見渡した。お義母様はニコニコと笑っているし、お義兄様たちはモグモグと口を動かしている。どうやらすでにクッキーを口にしたようだ。お義父様はうんうん、と微笑みながらうなづいている。しかしポージーだけはカップを睨みつけたままであった。

「うちではお茶の用意は女主人の役目でしてね」

 お義父様が微笑んだまま、口を開いた。

「クッキーはライラが用意したのですよ。朝早くから焼いてくれたようです」
「えっ、ライラ様が!」

 と、またもや大袈裟にソフィアが目を見開き、私の顔と手にしたクッキーを見比べた。

「私はてっきり王都でお買いになったのだと」
「ははは、間違うのも無理はないですよ」

 お義父様は朗らかに笑っている。

「ライラは料理が得意でしてね、おかげでジョセフも任務に張りが出るってもんですよ」

 お義父様は胸を張り、私を褒めてくれた。嬉しいけど気恥ずかしい。そもそも貴族の令嬢が料理をしている方がおかしいのだ。本来なら恥ずべきことなのだが、お義父様に言われると自信を持っていいものかもしれないと思ってしまう。

「えぇ、今朝もライラの作ってくれた朝食を食べました」
「そりゃあ、もう、美味しかったですね」

 お義兄様たちもニコニコと笑い、褒めちぎってくれた。

「まぁ、良いご縁でよろしいございますわね」
「本当に。神様に贈られたと思うくらいですよ」

 と、お義母様も褒めてくださり、私は恥ずかしくて顔が熱くなってくる。こんなに褒められることは今までなかった。と言うより、あまり褒められたことがないのでどうしていいかわからない。何とか話題が変わってくれないか。そんなふうに思い始めた。

「あら、ライラ様は子爵家のお嬢様と聞いておりましたが」

 いきなり話し出したポージーの顔を見ると、すごく険しい表情をしていた。そして冷たい目で私を見ている。ゾッとするくらいのその瞳に、私は思わず目をそらして俯いてしまった。

「お料理をするなんて、使用人と大差ございませんわね」
「ポージー!」

 ポージーの言葉にソフィアが声を上げるが、ポージーはなおも続ける。

「それにこのカップ、タリロモではなくヘイラスではございません?私、王都のお店で見ましたわ」

 その言葉にお義母様が無表情になった。お義兄様たちの目つきも険しくなる。メイリンは静かに部屋の隅で立っているが、その手が震えていた。部屋の空気が冷たく感じられた。

「ポージー、黙りなさい」
「あら、お婆様、私、本当のことを言っているのよ」

 ポージーはそう言って私を睨みつけた。

「王命とはいえ、使用人と大差ない方がジョセフ様と結婚なんて。おかしいんじゃありませんか?」

 確かにその通りかもしれない。私とジョセフ様が釣り合わないのはわかっている。

「本来なら、ジョセフ様は私と結婚するはずではありませんでしたか?」

 ポージーはそう言って立ち上がった。そういう約束があったのか。そんなことは聞いていないし。私はどう答えていいかわからず、ただぼんやりとポージーの顔を見た。綺麗な顔立ちで、いかにもお嬢様という佇まい。私とは大きく違う。そう思うと私はどうしていいかわからなくなっていた。




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