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レナードがマイズ国から送還された。今は国境近くにある騎士団の事務所にいるというので、ジョセフもそこに呼び出された。
あのレナードが暴行罪なんて。ジョセフは不思議だった。騎士とは名ばかりでまともに戦ったことがないのだ。被害者ならともかく加害者になれるとは思えなかった。
レナードはマイズ国の酒場でいきなり暴れ出したという。店員や客が彼を抑えようとしたがそれでも彼の勢いは止まらず、店を半壊し数名の怪我人を出した。亡くなった人がいなかったのが救いと言える。本来ならマイズ国で裁かれるはずだが、密入国者だったため強制送還になったのだ。
一緒に行っていたはずのメリアの行方はわからない。犯罪組織に攫われ身代金を要求されているが、リオンヌ家はその申し出を断っている。自業自得ではあるが、家族に切り捨てられたメリアも気の毒だなとジョセフは思った。ライラも彼女に傷つけられたのだ。そのことを思えばどうにでもなれと思うが、1人の若い令嬢が犯罪組織に攫われたと思うと職務上見逃すこともできない。
国としてどうするか、陛下も頭を悩ませているようだ。とりあえずレナードの身柄を拘束して状況を確認することになった。レナードが全てを話せばいいのだが、うまくいくのだろうか。
嘘で形成されたような人間。ジョセフはレナードのことをそう認識している。何の努力もせず騎士になり、金で経歴を買った男。ライラを傷つけ、さらに不幸を与えようとした卑劣な男。そんな彼が真実を話すだろうか。自分を優位に立たせるためにあらゆる手を使うのではないか。
信頼はできない。ジョセフはレナードがいるという部屋の前に立つと、気持ちを落ち着けようと軽く息を吐いた。口下手なジョセフと違い、レナードは口が巧い。ジョセフが言葉を探り話し出そうとした瞬間、レナードはすでに話し終えている。そんなことは過去に何度もあった。ジョセフはその時のことを思い出していた。何を言うべきか、何を聞くべきか。彼は何度も頭の中で考えた。
レナードがいると言うドアの前に立ち、ジョセフは何度か深呼吸をした。何度も頭の中でシミュレーションして、言うべきことを整理する。
「驚かないでください」
ジョセフがドアの前で動かないのを見たせいか、騎士の1人に言われた。レナードを連れてきた騎士である。彼の目を見て、ジョセフは何かを察した。
「何をだ?」
ジョセフの問いに彼は何も言わずドアを開けた。ノックもしないで開けたことに驚いたが、レナードは今は犯罪者である。もう騎士でもないし、貴族でもない。ジョセフはそのまま部屋の中に入った。
そこで彼が見たもの。
レナードはソファに座っていたが、その顔は無惨に腫れ上がっていた。右肩から手首まで包帯を巻かれ、左腕はダラリと力なく垂れ下がって見えた。両足も包帯が巻かれ、左足の甲は紫色になっている。
「あまりに暴れたため、やむを得なかったと言われました」
暴れるレナードを無理やり押さえつけたため、ここまでの大怪我を負ったと言うのがマイズ国の言い分らしい。
「横になるより座っている方が楽だとのことで・・・」
レナードがぼんやりとした目でジョセフを見た。何も見ていないような力のない目だ。いや、おそらく目も見えていないのではないか。ジョセフは何度かこんなふうになっている人間を過去に見たことがある。犯罪の被害者だ。加害者だった故に被害者となったのか。それとも・・・。
「レナード・アイザックス。ジョセフ・クルーソンだ」
ジョセフは大きめの声で名乗った。するとレナードの目が動いた。耳は聞こえるのか。言葉も理解できてるようだ。ジョセフは安心した。耳も聞こえなくなったり、言葉を理解できなくなる被害者も見てきたからだ。
「あ・・・う・・・」
レナードは何かを言おうとしていた。相手がジョセフだとわかったからか、それとも誰かの声が聞こえたからか。それはわからなかったが、レナードは声を出そうとしていた。しかしうまく出ないようだ。ジョセフはレナードの前でしゃがんだ。
「・・・何があった」
「う・・・」
ジョセフの問いに何かを言おうとしている。しかし声にならないのか、それともできないのか。レナーは何度も口とを開け声を出すのだが言葉にならない。やがてレナードの目から涙が流れ落ちた。
「ゆっくり休め」
ジョセフはそれだけ言うと部屋を出た。彼が何を言おうとしているのかはわからない。涙の意味もどのように解釈していいかわからない。しかし彼が自分の行いを反省し悔いているのだ、そうジョセフは思ったのだった。
あのレナードが暴行罪なんて。ジョセフは不思議だった。騎士とは名ばかりでまともに戦ったことがないのだ。被害者ならともかく加害者になれるとは思えなかった。
レナードはマイズ国の酒場でいきなり暴れ出したという。店員や客が彼を抑えようとしたがそれでも彼の勢いは止まらず、店を半壊し数名の怪我人を出した。亡くなった人がいなかったのが救いと言える。本来ならマイズ国で裁かれるはずだが、密入国者だったため強制送還になったのだ。
一緒に行っていたはずのメリアの行方はわからない。犯罪組織に攫われ身代金を要求されているが、リオンヌ家はその申し出を断っている。自業自得ではあるが、家族に切り捨てられたメリアも気の毒だなとジョセフは思った。ライラも彼女に傷つけられたのだ。そのことを思えばどうにでもなれと思うが、1人の若い令嬢が犯罪組織に攫われたと思うと職務上見逃すこともできない。
国としてどうするか、陛下も頭を悩ませているようだ。とりあえずレナードの身柄を拘束して状況を確認することになった。レナードが全てを話せばいいのだが、うまくいくのだろうか。
嘘で形成されたような人間。ジョセフはレナードのことをそう認識している。何の努力もせず騎士になり、金で経歴を買った男。ライラを傷つけ、さらに不幸を与えようとした卑劣な男。そんな彼が真実を話すだろうか。自分を優位に立たせるためにあらゆる手を使うのではないか。
信頼はできない。ジョセフはレナードがいるという部屋の前に立つと、気持ちを落ち着けようと軽く息を吐いた。口下手なジョセフと違い、レナードは口が巧い。ジョセフが言葉を探り話し出そうとした瞬間、レナードはすでに話し終えている。そんなことは過去に何度もあった。ジョセフはその時のことを思い出していた。何を言うべきか、何を聞くべきか。彼は何度も頭の中で考えた。
レナードがいると言うドアの前に立ち、ジョセフは何度か深呼吸をした。何度も頭の中でシミュレーションして、言うべきことを整理する。
「驚かないでください」
ジョセフがドアの前で動かないのを見たせいか、騎士の1人に言われた。レナードを連れてきた騎士である。彼の目を見て、ジョセフは何かを察した。
「何をだ?」
ジョセフの問いに彼は何も言わずドアを開けた。ノックもしないで開けたことに驚いたが、レナードは今は犯罪者である。もう騎士でもないし、貴族でもない。ジョセフはそのまま部屋の中に入った。
そこで彼が見たもの。
レナードはソファに座っていたが、その顔は無惨に腫れ上がっていた。右肩から手首まで包帯を巻かれ、左腕はダラリと力なく垂れ下がって見えた。両足も包帯が巻かれ、左足の甲は紫色になっている。
「あまりに暴れたため、やむを得なかったと言われました」
暴れるレナードを無理やり押さえつけたため、ここまでの大怪我を負ったと言うのがマイズ国の言い分らしい。
「横になるより座っている方が楽だとのことで・・・」
レナードがぼんやりとした目でジョセフを見た。何も見ていないような力のない目だ。いや、おそらく目も見えていないのではないか。ジョセフは何度かこんなふうになっている人間を過去に見たことがある。犯罪の被害者だ。加害者だった故に被害者となったのか。それとも・・・。
「レナード・アイザックス。ジョセフ・クルーソンだ」
ジョセフは大きめの声で名乗った。するとレナードの目が動いた。耳は聞こえるのか。言葉も理解できてるようだ。ジョセフは安心した。耳も聞こえなくなったり、言葉を理解できなくなる被害者も見てきたからだ。
「あ・・・う・・・」
レナードは何かを言おうとしていた。相手がジョセフだとわかったからか、それとも誰かの声が聞こえたからか。それはわからなかったが、レナードは声を出そうとしていた。しかしうまく出ないようだ。ジョセフはレナードの前でしゃがんだ。
「・・・何があった」
「う・・・」
ジョセフの問いに何かを言おうとしている。しかし声にならないのか、それともできないのか。レナーは何度も口とを開け声を出すのだが言葉にならない。やがてレナードの目から涙が流れ落ちた。
「ゆっくり休め」
ジョセフはそれだけ言うと部屋を出た。彼が何を言おうとしているのかはわからない。涙の意味もどのように解釈していいかわからない。しかし彼が自分の行いを反省し悔いているのだ、そうジョセフは思ったのだった。
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