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「ついに目覚めたらしい」
病室から出てきた医者に聞いた騎士たちが騒ぎ出した。1週間近く彼らはこの日が来るのを待っていた。病室の前で彼が目覚めるのをずっと待ち続けていたのだ。
病室の中にいる男はレナード。元は貴族で騎士団に所属していた。だが、今は犯罪の容疑者である。
「すぐに尋問できるか」
尋問、という言葉に医者は緊張した顔で言った人物を見つめた。医者にとっては患者である。それも大怪我を負い、命すらも危うい状態であった。本来ならもう少し様子を見たいところである。しかし、騎士たちの切羽詰まった様子を見て、医者は戸惑いながらも病室に入ることを承諾した。医者の言葉を聞き、複数の騎士がドヤドヤと病室の中に入っていく。
「レナード、聞こえるか」
声をかけられ、ベッドに寝ている男がわずかに視線を動かした。ベッドの中にいるのは間違いなくレナードだ。以前は同僚だった男だが、人相が険しくなったように見える。貴族出身で何の苦労もしてこなかった典型的なお坊ちゃん。平民出身の同僚をあからさまにバカにする嫌な奴だった。今は落ちぶれてしまい、ついには犯罪を犯してしまった。声をかけた騎士はザマアミロと内心思っているが、目の前で対峙するとどこかに哀れみも感じてしまった。
レナードは顔見知りの騎士を見たせいか少し安心したように表情が和らいだが、すぐに強張った。見舞いに来たわけではないことに気づいたからだ。
「マイズ国で何があった?」
「マイ・・・ズ・・・国」
騎士の問いにレナードは自分に何があったかを思い出した。マイズ国の犯罪組織から有益な情報を聞かれたこと。しかし彼らが納得するような情報をレナードは持っていなかった。彼は騎士団に所属はしていたが、不真面目な人間だったので情報などなかったのだ。
「役立たずね」
メリアはそう言って彼をなじった。その形相はまさに悪魔のようだった。彼はそのことを思い出すと、叫び声をあげそうになった。彼はメリアのことを愛していた。確かに彼女は淑女とは言い難い女性だった。でもそれは彼女が自分に正直なだけだと思っていた。貴族でも騎士でもなくなった自分と結婚してくれる。根は優しい女性なのだ。彼は本当にメリアのことを信じていたのだ。
しかしメリアはそうではなかった。彼女はレナードが使い物にならないとわかると、今度は自分が誘拐されたことにして家から身代金を出させようと言い出した。メリアは犯罪を犯すことに何の躊躇もしていなかった。むしろイキイキとした表情すら浮かべている。
家から身代金が支払われないとわかるとメリアは怒り狂った。全ての失敗は夜会でライラに婚約破棄など宣言したレナードのせいだと言い出した。そしてメリアの命令により、彼は複数の男たちから暴行を受け路上に捨てられた。自警団が彼を見つけたが犯罪組織と通じていたため、暴行の加害者にされてしまった。レナードが先に手を出したが、逆にやられてしまったのだと証言されたのだ。
外国人であったこと、元貴族で騎士だったということから、国に連絡が行き強制送還され戻って来れた。おそらくメリアは犯罪組織でこのままマイズ国で暮らしていくだろう。
彼は話し続けた。声がうまく出せなかったり、言葉がうまく思い浮かばず言い淀むことがあった。それでも騎士は黙って聞いていた。やがて医者が止めに入った。そのくらい長く彼は話していたのだが、彼にはその自覚がなかった。自分の声が聞こえていないように思えてきた。目の前に誰かがいたはずなのに見えなくなっていた。それでも話すことがやめられなくなっていた。
途中から彼はこう言っていた。
「すまない、許してくれ」
彼はずっと謝罪の言葉を言い続けていた。聞いていた騎士はそれをやめさせようとしたが、彼はやめなかった。医者が何かの薬を飲ませるまで、彼は言い続けていた。
「すまない、許してくれ。許してくれ」
彼は意識を手放す瞬間まで言い続けた。誰に向かって言った言葉かわからない。彼自身もわかっていないかもしれない。
病室から出てきた医者に聞いた騎士たちが騒ぎ出した。1週間近く彼らはこの日が来るのを待っていた。病室の前で彼が目覚めるのをずっと待ち続けていたのだ。
病室の中にいる男はレナード。元は貴族で騎士団に所属していた。だが、今は犯罪の容疑者である。
「すぐに尋問できるか」
尋問、という言葉に医者は緊張した顔で言った人物を見つめた。医者にとっては患者である。それも大怪我を負い、命すらも危うい状態であった。本来ならもう少し様子を見たいところである。しかし、騎士たちの切羽詰まった様子を見て、医者は戸惑いながらも病室に入ることを承諾した。医者の言葉を聞き、複数の騎士がドヤドヤと病室の中に入っていく。
「レナード、聞こえるか」
声をかけられ、ベッドに寝ている男がわずかに視線を動かした。ベッドの中にいるのは間違いなくレナードだ。以前は同僚だった男だが、人相が険しくなったように見える。貴族出身で何の苦労もしてこなかった典型的なお坊ちゃん。平民出身の同僚をあからさまにバカにする嫌な奴だった。今は落ちぶれてしまい、ついには犯罪を犯してしまった。声をかけた騎士はザマアミロと内心思っているが、目の前で対峙するとどこかに哀れみも感じてしまった。
レナードは顔見知りの騎士を見たせいか少し安心したように表情が和らいだが、すぐに強張った。見舞いに来たわけではないことに気づいたからだ。
「マイズ国で何があった?」
「マイ・・・ズ・・・国」
騎士の問いにレナードは自分に何があったかを思い出した。マイズ国の犯罪組織から有益な情報を聞かれたこと。しかし彼らが納得するような情報をレナードは持っていなかった。彼は騎士団に所属はしていたが、不真面目な人間だったので情報などなかったのだ。
「役立たずね」
メリアはそう言って彼をなじった。その形相はまさに悪魔のようだった。彼はそのことを思い出すと、叫び声をあげそうになった。彼はメリアのことを愛していた。確かに彼女は淑女とは言い難い女性だった。でもそれは彼女が自分に正直なだけだと思っていた。貴族でも騎士でもなくなった自分と結婚してくれる。根は優しい女性なのだ。彼は本当にメリアのことを信じていたのだ。
しかしメリアはそうではなかった。彼女はレナードが使い物にならないとわかると、今度は自分が誘拐されたことにして家から身代金を出させようと言い出した。メリアは犯罪を犯すことに何の躊躇もしていなかった。むしろイキイキとした表情すら浮かべている。
家から身代金が支払われないとわかるとメリアは怒り狂った。全ての失敗は夜会でライラに婚約破棄など宣言したレナードのせいだと言い出した。そしてメリアの命令により、彼は複数の男たちから暴行を受け路上に捨てられた。自警団が彼を見つけたが犯罪組織と通じていたため、暴行の加害者にされてしまった。レナードが先に手を出したが、逆にやられてしまったのだと証言されたのだ。
外国人であったこと、元貴族で騎士だったということから、国に連絡が行き強制送還され戻って来れた。おそらくメリアは犯罪組織でこのままマイズ国で暮らしていくだろう。
彼は話し続けた。声がうまく出せなかったり、言葉がうまく思い浮かばず言い淀むことがあった。それでも騎士は黙って聞いていた。やがて医者が止めに入った。そのくらい長く彼は話していたのだが、彼にはその自覚がなかった。自分の声が聞こえていないように思えてきた。目の前に誰かがいたはずなのに見えなくなっていた。それでも話すことがやめられなくなっていた。
途中から彼はこう言っていた。
「すまない、許してくれ」
彼はずっと謝罪の言葉を言い続けていた。聞いていた騎士はそれをやめさせようとしたが、彼はやめなかった。医者が何かの薬を飲ませるまで、彼は言い続けていた。
「すまない、許してくれ。許してくれ」
彼は意識を手放す瞬間まで言い続けた。誰に向かって言った言葉かわからない。彼自身もわかっていないかもしれない。
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