ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

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「今回のものは前のものとは大きく異なります」

 メガネさんが新しくできたほうのリクライニングチェアを熱心に観察した後、陛下にそう報告した。陛下も重々しくうなづく。

「今回は穴が空いていますね。失敗したのか、魔力が途切れたのか」
「そりゃ、そうでしょう。魔力が続くわけがない」
「まぁ、能力があるのは認めますよ。でもねぇ、失敗するようなら使い物にはならないでしょう」
「平民ではこれが限界ってことですね」

 突然元気になる中年男性たち。どこか楽しげに話しているのが頭に来る。穴が空いているって失敗じゃないよ。グラスを入れられるようにしたんだよ。と、言ってやりたいが言えずにいる。何故なら、許可が出ていないから。許可なく話してはいけないって確かあったはずだ。

 私が黙っているのをいいことに彼らの話は止まらない。

「これは何ですかな。こんな板切れが余計について」
「失敗作ですからな」
「これでは魔法省への入省は無理でしょう?」
「いや、平民の入省は過去に例がありませんからな」

 そう言って揃ってワッハッハと笑っている。何が楽しいかわからないが、中年男性の和気あいあいは気持ちが悪い。

「リサ、何か言い分はあるか」

 黙って彼らの話を聞いていた陛下が私の方を見た。ようやく意見が言える。私はリクライニングチェアの横に立った。メガネさんが嫌そうな顔をしながら私を避ける。

「まずこの穴ですが」

 私は手すりに空いた大きな穴を指差した。

「ここにグラスを入れることができます」

 その瞬間、陛下の目がカッと見開いた。来た!陛下の芝居が始まる!

「グラス・・・とな?」
「はい」
 
 見えていないのにメガネさんが驚愕しているのがわかった。他の中年男性たちも同じだろう。飲みものを片手に、という発想はきっとなかったのだろうと思う。

「起き上がってテーブルまで手を伸ばさなくてもすぐ横にあれば便利です」

 言いながら思った。陛下なら使用人が手渡すのではないか。片手を差し出せば、きっと欲しいものを差し出してもらえるのだろう。それならばやはりこれは失敗作か。陛下以外の人間が使えばいいか。それともそんなズボラな考えはこの世界では異常?

「では、この板切れは」

 折りたたみにしたテーブルのことか。これも無用かもと思いながらも言っておこう。この世界だってきっちりした人ばかりではないはずだ。

「テーブルになります」

 私が実演してみせると陛下は足早に近づいてきた。

「なるほど、こういうことか」

 そう言って陛下はリクライニングチェアに座ると足を上げてみたり、背もたれを動かしてみたりした。テーブルも広げて腕を押し付けて強度を確認し、何度もうなづいている。

「水を持てぃ」

 そう言うと、使用人の人が恭しくグラスに入った水を持ってきた。陛下はそれを受け取るとテーブルの上に置いたり、穴の中に入れて確認している。その間も何度もうなづいているが、だんだんとその動きが素早くなってきた。

「ダンを呼べぃ!」

 よりいっそう大きな声を出し、使用人の1人が素早く部屋を出て行った。ダンさんを呼びに行ったのだろうけど、一体誰なんだ。思わず周囲を見ると、中年男性たちが一様に驚いた声を上げた。

「ダン様・・」
「ダン様をお呼びになるとは」
「これは大変だ・・」
「忙しくなるぞ」

 そんな様子を無視して陛下はニコニコしながら、リクライニングチェアを満喫しているようだ。鼻歌まで歌っている。気に入ってもらったようで何よりだが、この後どうなるのだろうか。多分いくつかまた作ることになるのだろうけど。まさか一生リクライニングチェアを作ることにはならないよね。

 私としてはもっと楽しいことをしたい。魔法で何ができるか色々と試してみたいのだ。そう考えたら、早く家に戻りたい。フワフワのソファでモコモコのクッションを抱きしめながら、ゆっくりとお茶を飲んで寛ぎたい。早く解放してくれないかな、と考えていると。

 バーン、とドアが開いた。そこにいたのは長身の男性。20代後半くらいの、これまたびっくりするくらいのイケメンだ。少し王子に似てると思うので、おそらく王族なのだろう。

「お呼びですか、陛下」

 リクライニングチェアに寛ぐ陛下にダン様は挨拶をしている。やや困惑した様子ではあったが、それを態度に表さないのはさすがに王族だなと思ったのだった。
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