ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

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「何なんですか!これは!」

 ダン様がリクライニングチェアに突進してきた。

「ハッハッハッハッ。素晴らしいだろう」

 陛下は嬉しそうに言いながら、ゆっくりとグラスの中の水を飲むとニヤリと笑って手すりの穴に入れる。

「う、うわぁぁぁ!」

 その様子を見たダン様が頭を掻きむしりながら叫んだ。私も思わず、何なんですかと突っ込みたくなった。

「素晴らしい、素晴らしい、素晴らしい。こんな素晴らしいものを初めて見ました。正しく芸術品です」

 ダン様は叫びながらクルクルと回っている。この人は大丈夫なのだろうか。

「陛下の一番下の弟君です。挨拶の仕方は分かりますか」

 メガネさんがそっと私に教えてくれる。何も言わずにメガネさんを見ると、

「左胸に手を添えて、頭を下げなさい。何か聞かれるまでは言葉を発してはいけません」

 メガネさんは悪い人ではないのかもしれない。挨拶の仕方をこっそりと教えてくれた。言われるままに左胸に手を当てて頭を下げておく。

「どうしたのですか、陛下。これは」
「ふっふっふっ。平民だが魔力検査で素晴らしい成績を出したものがいたであろう。その者が作った椅子なのだ」
「椅子ぅ~?」

 ダン様も陛下と同じ言い回しで聞き返していた。思わず笑いそうになる。

「確か入学許可を与えた子ですよね。その子が作ったのですか。」
「いかにも」
「君ぃ!」

 カッカッカッ、という靴音が近づいてきたかと思うと、私の前でやや素っ頓狂な声がした。

「君がその天才少女ですね。名は何と?」

 目の前にダン様がいる。聞かれているのだから答えて良いのだな。頭を上げていいのだろうか。手は下ろしていいのだろうかと不安になった。メガネさんもそこまで教えてくれていたらいいのにと思ったけど、遅すぎる。

「リサ、と申します」

 とりあえず、頭を下げたまま手も下ろさずに答える。

「リサ・・・。リサ、リサ」

 ダン様は何度か名前を呟いている。発音しづらい名前でもないし、覚えづらい名前でもないと思う。それなのに何で何度も呟くんだろう。不思議に思っていると。

「おぉ!」

 中年男性たちの驚いた声が聞こえてきた。男性の野太い声がいくつも重なると、ちょっと異様に聞こえる。何を驚いているのだろうか。ダン様が何かしているのか?見たいという気持ちに抗えるわけがなく、私は上目遣いで様子を伺った。すると、私の目の前に何か渦巻いたものが見えた。 

「これでリサはいつでもここに来れる。今リサ専用の門を作りましたからね」

 ダン様はとんでもなく爽やかな笑顔で私にそう言った。

「門?」

 思わず聞き返す。

「そうですよ、移動中に暴漢に襲われでもしたら国の損失です」

 へ?何をおっしゃっているのでしょうか?

「ダンは門作りの天才だからな。他の人間だと何時間もかかるところを数分でやってしまうのだ」

 リクライニングチェアから下りることもなく、陛下が言った。よく見たらお菓子のようなものも手にしている。最大限にリクライニングチェアを利用しているように見える。

「そこでリサ、この椅子をあと10作ってもらえぬか」

 作るのはたぶん問題ないだろう。ただまったく同じものが作れるかどうかはやってみないとわからないけど。ようは同じものをイメージすることができるかどうかなのだ。でも失敗したら失敗した時のことだ。気にせずやってみるしかない。

 陛下の提案に私はうなづいた。そばにあった木の椅子を手にして再度イメージする。目を瞑りイメージする。何故だか頭の中で通販のカタログを見ているような気分になった。そうそう、カタログから気に入ったものを選ぶみたいな感じで・・・。

 少ししてから目を開けた。目の前に同じ感じのリクライニングチェアがあるのを見て安心した。ダン様は驚いた顔をしてこちらを見ている。

「素晴らしい!素晴らしい!素晴らしい!」

 ダン様は手を叩きながら、何度も叫んでいる。新しくできたリクライニングチェアの周りをクルクルと回り、触ったりうなづいたりと忙しそうだ。そして恐る恐るといった感じで座り、大きく息を吐いた。

「何と座り心地のいいことでしょう。まるで雲の上にいるようですね」
「そうであろう、ぐふふ」

 陛下とダン様は嬉しそうに笑い合っている。この調子であと9脚作ればいいか。私はまた目を瞑り、イメージするのであった。

 
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