ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

文字の大きさ
43 / 67

43

しおりを挟む
 授業はいつ始まるのだろう。ぼんやりと待っていたら、突然ドアが開いた。

「リサ!」

 そこにいたのはダン様である。ちなみにイヤホンは本当に悪口だけ聞こえないようにしてくれたみたいで、ダン様の声は普通に聞こえた。ダン様はズカズカと教室に入ってくる。生徒たちは驚いて固まっていた。

「すぐに来てください」

 いったいナニゴト?何で教室にくるのだろう。理解が追いついていないが、それは教室内のみんなそうだった。

「ダ、ダン様だ・・・」

 誰かのつぶやきがやけに教室内に響いたと思ったら、全員が一斉にお辞儀をした。相手が王族とわかったのだろう。

「みなさん、授業はじきに始まります。準備をして待ってください」

 ダン様はそう言うと

「リサ、行きますよ」

 と、私の手を引いて立ち上がらせた。訳がわからないまま、私は教室から出て行くことになった。

「どこへ行くんですか?」

    ダン様は焦っているようだ。私の手を握ったまま、グイグイと引っ張るように歩いていく。足長のダン様についていくために私の短い足はフル回転しているが、そろそろ限界に近づいている。

「魔獣が大量発生したんです」

    私の問いにダン様はもどかしそうに答える。

「え?魔獣?」

    昨日やっつけたアレか。やっつけ損ねたのがいたのかな?でも大量発生って、魔獣ってそんなにすぐに生まれるもの?突然湧いて出てくるの?そもそも魔獣と普通の動物とどう違うのかな?疑問はいくつもある。聞いたら答えてもらえるのだろうか。

「う、うわっ」

    考えごとをしていたせいか、ダン様の長い足の動きについていけなくなった。足がもつれてダン様にぶつかり、勢いあまって2人で転んでしまったのだ。しかも、ダン様を突き飛ばすような感じになってしまった。

「ご、ごめんなさい。申し訳ありません。どうかご容赦ください」

    王族を転ばしてしまった。ここは謝罪すべきだ。もとはといえばダン様が悪いわけだが、それは言えない。

「大丈夫です。とにかく急ぎましょう」

    スクッと起き上がると、ダン様は何ごともなかったようにまたもや私の手首を掴む。力が籠っていて少々痛い。再び歩き出したが、少しだけスピードが落ちたような気がした。

「あ、あの…。場所は昨日の森ですか?」

    振り向いたダン様の目は血走っていて怖かった。本当に緊急事態なのだ、私はようやく理解した。魔獣が大量発生と聞いてもピンとこなかったのだ。

「このままでは森から魔獣が出てきてしまうかもしれません。そうなると・・・」

 ダン様は立ち止まらないままだったが、そのまま黙ってしまった。森から魔獣が出てきてしまう。そうなると・・・。私の住んでいるあの家がヤバいのではないか?

「向こうではリチャードが食い止めています」

    ダン様の目が優しかった。王子のことを気にしているだけかもしれないが、私のことも考えてくれているのだ。と、思いたい。

 よくよく聞けば、昨日の実証検分とやらで関係者たちが朝から森に立ち入っていた。そこでまたもや大量の魔獣が発生し、ダン様のところに連絡が入ったそうだ。

 「だから魔獣笛は怖いんです。人間の勝手で魔獣の生態を狂わせるから」

    ダン様の声は震えていた。怒りのような悲しみのような、何か複雑な感情が入り交じっているように思えた。

「昨日の場所ですね」

    私は返事も聞かずに思い出す。昨日の森の中。たくさんいた魔獣。そしてたくさんの魔法石。

 ・・・気がつけば目の前に王子がいた。

「リサ!」
「聖女様!」
「こ、攻撃の乙女…」

    王子たちはまたもや傷だらけになっている。身体よりも大きい熊のような魔獣に剣を向ける人、身長より長い斧みたいな武器を振り回して魔獣を威嚇している人。騎士の服を着ている人もいれば、そうじゃない人もいる。地面には多数の魔獣が倒れ込んでいるが、その中には人も同じように倒れていた。

 また魔法を使って瞬間移動してしまったが、ダン様は何も言わなかった。それよりも目を見開いたまま微動だにしない。瞬間移動したことではなく、この状況を見て驚愕しているのがわかった。

「これで問題は解決だ!」
「聖女様・・・お願いします」
「またもや攻撃の乙女に救われるのか」

 王子、サイモン、ポールが安心したような笑顔を向けてきた。その様子を見て全員が私のほうを見る。

「援軍が来たぞ!」

 王子の掛け声に全員がうぉぉぉという雄叫びをあげた。ウッセーよと心の中で思った。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今日は許される日です《完結》

アーエル
ファンタジー
今日は特別な日 許される日なのです 3話完結

冤罪で断罪されたら、魔王の娘に生まれ変わりました〜今度はやりたい放題します

みおな
ファンタジー
 王国の公爵令嬢として、王太子殿下の婚約者として、私なりに頑張っていたつもりでした。  それなのに、聖女とやらに公爵令嬢の座も婚約者の座も奪われて、冤罪で処刑されました。  死んだはずの私が目覚めたのは・・・

姑に嫁いびりされている姿を見た夫に、離縁を突きつけられました

碧井 汐桜香
ファンタジー
姑に嫁いびりされている姿を見た夫が、嬉しそうに便乗してきます。 学園進学と同時に婚約を公表し、卒業と同時に結婚したわたくしたち。 昔から憧れていた姑を「お義母様」と呼べる新生活に胸躍らせていると、いろいろと想定外ですわ。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

国外追放ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私は、セイラ・アズナブル。聖女候補として全寮制の聖女学園に通っています。1番成績が優秀なので、第1王子の婚約者です。けれど、突然婚約を破棄され学園を追い出され国外追放になりました。やった〜っ!!これで好きな事が出来るわ〜っ!! 隣国で夢だったオムライス屋はじめますっ!!そしたら何故か騎士達が常連になって!?精霊も現れ!? 何故かとっても幸せな日々になっちゃいます。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

夢を現実にしないための正しいマニュアル

しゃーりん
恋愛
娘が処刑される夢を見た。 現在、娘はまだ6歳。それは本当に9年後に起こる出来事? 処刑される未来を変えるため、過去にも起きた夢の出来事を参考にして、変えてはいけないことと変えるべきことを調べ始める。 婚約者になる王子の周囲を変え、貴族の平民に対する接し方のマニュアルを作り、娘の未来のために頑張るお話。

処理中です...