ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

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「とりあえず、刺繍もマナーも問題ないということか」

 私の学校での様子をダン様から聞いた陛下は再び考え込んでいるようだ。余計なことを考えないでくれ、と私は密かに祈っている。私は地味に生きていきたいのだ。本当なら王族に関わりたくなかった。だが関わってしまった以上それは無理だ。ではどうすれば?

 学校は面倒だからどうでもいいとして、何をしたらいいだろう。元の世界ならインターネットやマンガ、小説やテレビ、映画など娯楽がたくさんあった。でもこの世界にはそういった娯楽はない。そう考えたら、マンガとか小説とか取り出せるんじゃないかと思った。テレビはさすがに無理だろうけど。

 そういえば映画の原作になったミステリー小説。1回しか読んでいないけど、もう一度読みたいな。魔法でどうにかできないだろうか。でも細かいところもちゃんと思い出さないと中途半端なものが出てくるだろう。小説の全てを思い出すのはさすがに無理だ。
 
 そんなことを考えていたら・・・。出てきてしまった1冊の本。フォークが消えているのでフォークが本に化けたのか。いまさらだが、めちゃくちゃすぎる。

 考えても仕方がないので、本をめくってみた。陛下もダン様も難しい顔で話し合いを続けていて、何も気づいていないようだ。本は日本語で書かれている。確かに私が持っていたあのミステリー小説だ。最初のほうを読んでみたが、印象としては全く同じ。一字一句覚えているわけがないので本当に同じかどうかわからないが、多分同じだろうと思う。よし、もう一度読み直してみよう。

「何を読んでいる?」

 声をかけられて顔を上げると、目の前に陛下の顔があった。

「うわぁ!」
 
 驚いて叫んでしまった。思いのほか大声が出てしまい、余計に驚いて椅子から転げ落ちそうになる。その隙にダン様に本を取られてしまった。

「これは・・・」

 ヤバい、日本語の本なんて読んでもわからないよね。慌てて取り返そうとしたのだが、ダン様はペラペラとページを捲り、真剣に読んでいるようだ。

「何ですか、これは。・・・人が殺される?誰が殺したかわからない?なんて物騒な・・・」

 え?日本語読めるの?チラリとダン様が持つ本を見ると、そこには日本語ではない文字が並んでいた。

「こんな恐ろしい話・・・」

 そう言いながら、無口になる。そしてゆっくりとページを捲っていく。明らかにのめり込んでいる。

「ダン!」

 陛下に肩を叩かれ、ダン様はようやく顔を上げる。

「リサ、この本を貸してください」

 ダン様に必死な顔で言われ、私はコクコクとうなづいた。

「ダン、どういうこと・・・」
「人が殺されたんです!」
「あぁ?」
「だから人が殺されて、犯人がわからないんです!」
「あぁ?」
「犯人らしき人物を探すんです!」

 陛下はわけがわからないという顔で私を見る。この世界に小説というものはあるのだろうか。それも推理小説。まさか本当の話と思っていないよね。

「誰が殺されたって?」
「ジョナサンです」

 ダン様の答えに吹き出しそうになった。日本人の話のはずだ。ジョナサンなんて人は出てこない。

「ジョナサンが殺されて、妻のベティが発見するんです。それでベティが殺したと疑われるのですが、別の場所にいたので犯人ではない。それで誰がジョナサンを殺したか探すんです」

 ストーリーは間違っていない。登場人物の名前が違うだけだ。もしかしたらこの世界に合うように文章が変化している?ダン様が読めるように日本語ではない文字が使われているのもそのせい?これって推理小説よりも難解なルールでは?

 考え込む私だったが、ダン様はまたもや本に目を落としてしまう。

「リサ」

 ダン様が夢中になってしまったので、陛下は軽くため息をついた。

「こうなったらダンは読み終わるまで話しかけても無駄だろう。それで相談なのだが」

 心臓が大きく脈打った。何を言われるのか不安でたまらない。何か恐ろしいことを言われたらどうしよう。ドキドキしながら、私は次の言葉を待った。

「魔獣研究所で研究の手助けをしてもらえないだろうか」
「魔獣・・・研究所?」

 なんだか嫌な予感がするのだが、陛下はニッカリと歯を見せて笑っている。その笑顔がとてつもなく胡散臭くて、私は思わず顔を歪ませるのだった。


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