帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人

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第12章 異世界へ潜入

12.12 異世界マダンの解放4

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 サーダルタ側もこの攻撃は掴んでいた。マリナク基地の司令官サイルンタ大佐は、基地の司令棟が破壊されたのを見ると、直ちに破壊されなかったサカン2号に乗って自分のスタッフ3人と共に総督府内にある中央監視センターに向かった。

 街中を空中機で飛行する場合には、道路部分のみ使え、空中機毎に占める高さが制限されている。しかし、彼らの乗ったサカン2号は、道路部分を通るというルールのみは守ったがサイレン、警告灯をつけて他のルールは無視してすっ飛ばしたお陰で、わずかな時間で総督府に着いた。

 総督府の敷地に着いた4人は必要なシグナルを発して着陸して、側壁のドアが開くのももどかしく、玄関まで全力で駆けて、そこの歩哨に身分証をかざして監視センターに入る。さらに、監視センターのドアを守っている歩哨に身分証をかざしてドアを開かせる。

 広い監視センターの壁には巨大な球が映されており、そこには多数の様々な色のマークが浮かんでいる。その球はパネル上の画面に映されたものであり、自由に回転・拡大し、その上に光るマークも映されたものである。部屋にいる20名ほどのサーダルタ人の中に、キルマールン総督も混じっている。

 総督はサイルンタ大佐よりわずかに年上であるが、出世に取り残されている大佐とは違って名門の出であり魔力も強いエリートである。彼は、茶髪にわずかに白髪が混じった痩身の美男子で、いかにもという存在感があるが、見るからに憔悴している。
「おお、サイルンタ大佐、何をしておる。役立たずが! お陰で基地は廃墟だ。見ろ!チキュウの戦闘機の侵攻はすでに終わったようだが、使えるものはないだろう」

 そこに解決策を何も持たない総督に代わり、総督軍の参謀長のガリヤ・クグナイが乗り出して言う。
「大佐、見ろこの画面を」
 痩せぎすのクグナイがそう言って画面を指さすと、そこには、無数に見える小さな赤い点と2点の大きな点が見え、小さい点は近づいて来ているようだ。

「当初は、大きな点である敵の母艦は4点あったが、2点は消えてしまったので、チキュウ側に戻ったのだろう。残った2点はすでにこの世界に居て成層圏に留まっていたもので、今は同じように上昇しているから、また同じ高度に戻るのだろう。
 つまりこの世界に居る4隻の敵の母艦の内の2隻は、君の基地の攻撃に従事し、2隻が戦闘機のための異世界の門の役割りを果たしたものだ。また2隻は異世界である地球側から来て門の役割りをして、また帰ったということだな。

 門をくぐった戦闘機を概略数えたが5千機に達するようだ。彼らは4隻の母艦の周りに形成された異世界の門を用いて、わずか5分(サーダルタの時間の単位は異なるので換算している)でその数の戦闘機を通してしまったよ。
 あの早さでこちらに来られると、門を検知して攻撃にかかってもどうにもならなかったようだな。わが方のように、すべての戦闘機を母艦に積んで、門をくぐった後に発進させていたのだったら、攻撃の術はあっただろうがな。君の基地でのガリヤーク機の損害はどの程度かな?」

「はい、100機程度です。結果的に言えば、彼らは市街地に被害が及びそうな位置への攻撃はしなかったために、市街地に近い位置に駐機させていたのが功を奏しました。ただ、残念ながら地上の施設はほぼ完全に破壊されました。しかし、敵の母艦が上空に占位したのに気が付いて、避難させたので人的な損害は殆どありません」

 大佐の答えに、満足そうに薄く笑って参謀長は尚も聞く。
「ふむ、やむを得んな。地上の基地に集めるしかわが方は取る手段がなかった。
 敵の5千にわが方は7千4百か。さらに、敵には母艦と攻撃機がおり、成層圏から、戦闘機のみならず、わが方の地上施設についても好きなように攻撃できる。
 また、残念ながらわが方は、異世界転移の手段を失ったので、他の世界から切り離されてしまった。サイルンタ大佐、反撃に関して君の意見は?」

「はい、はっきり言って、まともにかかったら、わが方のガリヤーク機は敵に殆ど被害を与えられずに全滅するでしょう。これは、機体の性能の差もありますが、敵に母艦がいる以上、個々の戦闘機のコントロール能力がわが方に比べ大幅に勝っているからです。
 こちらは、このコントロールセンターから部分的なコントロールしかできません。しかし、時間を稼ぐことはできます。ガリヤーク機を市街地の上空に滞空させれば良いのですよ。彼らは、マダンの現地人を傷つけないように相当に気を使っています。
 まずはガリヤーク母艦を攻撃する際には、市街地が近い場合に周辺の住民を疎開させていますし、今回は市街地に近い位置に駐機していたガリヤーク機には攻撃していません。市街地から遠い私の基地内の地上施設には、遠慮なく攻撃したにもかかわらず」

 大佐は一旦言葉を切って、総督を見つめると、総督はその目を見返して聞く。
「うむ、そうだな。時間は稼げるだろう。さらに我々も高空から攻撃を受ける可能性のある施設から出て、住民の居る市街地を盾にして立てこもることはできる。しかし、その結果はどうなる?」

 大佐は沈痛な顔で答える。
「はい、我々はすでに母国から孤立しています。また、どうやってかはわかりませんが、間違いなくチキュウの軍は、すでにマダンの現地政府と部分的にせよ協力関係にあります。
 加えて、マリナク基地の基地機能の喪失に伴って、わが戦力たるガリヤーク機への補給の術を失ってしまいました。従いまして、ガリヤーク機が都市上空に滞空しても3日程度が限度でしょう。
 ガリヤーク機が地上に安全に降りられるのは、現地人が盾になる市街地でしょうが、そこでは何の補給も受けられません。さらに、現地人はすでに敵であると考えるべきです」

 その言葉に、顔を赤くしながら聞いていた総督が怒鳴り出した。
「サイルンタ大佐、何という敗北主義だ!わが13の世界を束ねるサーダルタ帝国が、そのようなチキュウなどという辺境の世界に敗れるなどはあってはならないのだ!」

「あっては、ならない。その通りです。しかし、私には勝てる手段が見出せません。総督閣下がその手段をお持ちであれば、喜んで御指示に従います」
 大佐が答え、総督の目を見返すと本人は狼狽えながら必死に言う。

「そ、それはまず、我々は数の優位を持っている。だから、巨大な編隊を組んで、かれらに立ち向かうのだ。彼らには確かに射程の長く強力なガンがある。しかし、わが方の射程は短いが各2基の機銃と空中爆弾がある。
 だから、まず空中爆弾を前方に展開して、接近したら機銃を撃つということで、彼らの優速とガンの強力さの優位を消すのだ」

 大佐は少々うんざりしながら反論する。
「彼らは、我々に比べて優速で、特に守るものもありません。彼らが最初にこの世界に現れた時は、母艦に我がガリヤーク機を近づけないという役割がありましたから、交戦の形を選んだ結果それなりに我々も彼らを撃墜しました。
 しかし、今回について彼らは我々の攻撃に応じる必要はないのです。その速度を生かして、我々の周りを好きなように飛び回って、射程が最低でも10倍に達するそのガンでわが方を撃ち減らしていけばいいのです。しかも、彼らの1機1機は母艦から完全は管制を受けているのに対し、わが方はこの監視センターから大まかな指示しかできないのです。
 半日で多分大部分のガリヤーク機が撃墜されるでしょうね。彼我の攻撃能力と防御力の差、さらに彼らの戦闘機等の管制の高度さは、部分的に入手できたチキュウ上で行われた戦闘の記録から明らかです」

 これを聞いた総督は顔をゆがめて考えさらに反論する。
「そうであれば、彼らは地元の市街地の破壊を嫌がっているということだから、ガリヤークの機体ごと、あるいは10機、20機の編隊ごとに、市街地内に拠点を設け守備兵を置くのだ。それであれば、補給体制も築けるだろう。
 そのうえで必要に応じて離陸して主として都市上空で迎撃に当たるのだ。そうすれば敵も自由に大威力のガンを撃てないだろうから、わが方も有利に戦えるだろう。それに加えて、このマダンからの連絡が途絶えたのは間もなく本国では掴むだろうから、本国からの反攻があるはずだ。だから我々はもう少し耐えればチキュウを押し返せる」

 それに対して参謀長が応じる。
「うむ、総督閣下、そのお考えはそれなりに評価できます。しかし、そのためには数百の数の散らばる拠点に対する管制システムと、物資の供給システムの構築が必要であります。
 さらには、なによりこの世界の支配が揺ぎ無いものでないとならない。すでに、追い込まれて、自分たちの市街地を盾にするような支配者の隷下に置かれることを、この世界のものが認めるかな。また、現状においてはすでに総督府は制空権を失っている。

 我が帝国の異世界の征服の方法は、彼らの火薬を使った武器を無力化すると共に常に制空権をとってのことであった。すでに、制空権は取られた。また、知っての通りかれらの主力兵器は火薬を使ったものでないために、魔法では破壊できない。
 制空権を取られ、本国との連絡を絶たれたということは、敵は自由に本国との物資の輸送をすることができるのだ。だから、彼らは彼らの魔法によって妨げることのできない武器を持ち込んで、彼ら自身またはマダン人に与えて我々に対抗させることも可能だ。

 それと、本国からの応援の件だが、母艦による定期連絡が5日に1度は行われてきたので、そうあと2日で隣接の世界カメラマ-ムで異常に気付き、偵察が行われるだろう。
 その時点で、我々は本国に状況を報告出来るのだが、再度この世界の制空権をとることは難しいだろうな。なぜなら、チキュウ軍は我々の強力無比であったはずのガリヤーク母艦を易々と葬り去る強大な武器を持っている。
 さらには、我がサーダルタ帝国はすでに300隻の母艦をチキュウ軍によって失っており、これ以上の損害は看過できないだろう。私がサーダルタ帝国中央軍の司令官であれば、このマダンへの大規模な反攻は決断できないな」

 総督はその言葉を聞いてうなだれて問う。
「そ、それでは、参謀長、もはや逆転の術はないと?」

「ええ。優位な武器を持った敵に制空権を取られた段階で、勝てる要素はなくなった。反撃はある程度敵に被害を与えられようが、いたずらにわが方の犠牲を増やすだけに終わる。またそれは、この世界マダンの人々への被害を大きくして、それは我が帝国への憎悪を煽ることに繋がることになる。
 チキュウがこのマダンをどう扱うかは知らん。しかし、チキュウでの調査結果によると、過去においてはある国が多民族を支配下に置くということは普通であったようだが、現在それは忌み嫌われているようだ。

 だから、彼らがマダンを支配下に置いて属国化する可能性は低いと思うので、このマダンの人々はチキュウに積極的に協力する可能性が高いな。
 本来であれば、本国との連絡を待ってその指示に従うべきであるが、何分わが帝国はこのような経験、つまり支配下に置いた世界に攻め込まれて、しかも追い込まれるのは初めてのことだ。従って、適切な指示が出てくるのは相当な時間がかかるし、それも適切な指示であるかどうかは極めて疑わしい。
 ここは、マダン総督閣下の権限において、当面軍事的な交戦は止めてチキュウ軍との交渉を行うことにしたいと思いますが、閣下。よろしいですな?」

 参謀長はそう言って総督を、さらに部屋に居る者達を見渡す。
うな垂れた総督が「ううむ、やむを得ん」絞りだすように言い。それを、見守っている皆も頷いて同意する。サーダルタ帝国の人々は傲慢ではあるが、論理的な思考はできるのだ。

「ダラス司令官、地上のサーダルタの総督府からの映像と通信です!3チャンネルに合わせてください」
 地球同盟、異世界偵察隊の司令官ダラス大将は、“ありあけ”の管制室で通信士官の言葉に振り返り、その言葉に合わせてデスク上の画面を調整した。

 そこに写っているのは、端正なエルフ顔の茶髪で白髪交じりの少ししわの出てきている男性であり、地球でも見た軍服のような服を着ている。
「サーダルタ帝国マダン総督軍参謀長、クグナイだ。君たちの責任者と話をしたい」

 自動的に英語に翻訳されるサーダルタ語の音声を聞いたダラスは、通信士官に合図をする。ダラス大将の画面の上についているカメラが作動して、画面上の右上に小さくダラスの画像が写る。それを確認して、ダラスがしゃべり始めるが、英語での言葉がサーダルタ語に翻訳されることになる。

「地球同盟、異世界偵察隊、ダラス司令官だ。これは、クグナイ参謀長、どのような御用であろうか」
「挨拶は省略したいので、早速始めさせて頂く。まず、この世界に現れた君たち“偵察隊”の意図を聞きたい」

「知っての通り、君たちの艦隊が我が地球に現れ、わが地球人に屈服を迫った。“地球総督”なるふざけた職名の者だった。残念ながら、我々は異世界人の支配下に入るという趣味はないので、君たちの軍は叩き返した。多分帰ることが可能だった多くはこの世界に戻って来たと思う。
 我々の意図は、最終的には君たちサーダルタ帝国と和平を結びたい。いつまでも戦争状態にはありたくはないからね。ただ、我々地球同盟の意思は、君たちの隷下にある世界の解放だから、それを行った上でのことだな。
 引き続き君らの支配下にあることを望むものは、まあ協議の対象になる。それと、我々は君たちの帝国もそうだが、そうして解放した世界を支配下に置くつもりはなく、交易相手として付き合うつもりだ。我々の隊の目的は、以上言ったことを実現するための現地調査だ」

 ダラス司令官の返事だが、クグナイ参謀長は全く表情を変えずに応じる。
「なるほど、了解した。それで、君たちのチキュウにおいて、君たちに捕らえられたサーダルタ帝国の者がいるはずだが、彼らをどうするつもりかな?」

「我々のリストでは全部で7282名だ。これについてはリストを送ろう。むろん、希望する者は帰す。ただ最寄りの安全な地ということだが」
「希望する者は?」

「希望しないものもいるのではないかな。捕虜になって帰った場合に居心地の悪いもの、または身の安全に懸念があるものも居るだろう」
「なるほど、それでは、我々にこの世界から退去することを認めてもらいたい」
 参謀長が相変わらず無表情のままに言う。
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