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第14章 異世界との交流が始まった地球文明
14.16 ハヤト、サーダルタ帝国に乗り込む4
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カーミナルという生徒は、ハヤトの使った火魔法を無表情にみているが内心は驚き焦っていた。同級の連中には分からないようだが、彼にはハヤトの魔法のすごさは解った。彼が、魔力の操作を誤ったと見せかけて、渾身の風の刃でハヤトを襲ったが、傷つけることはなく何らかの対応はされるとは思ってはいた。
しかし、軽々と上に逸らされてさらに迎え撃った魔法に簡単に中和された。さすがに、帝国を打ち負かせた地球の主戦力と言われる魔法使いであり、単なる高等部で注目を浴びている彼とはレベルが違うようだ。また、その後見せられた火魔法は、同様なものを実際に溶かすまではやったことのある彼にとっては、到底手の届かないレベルの魔法である。
その上に彼を庇うような言動も見せており、それが腹立たしい。地球との戦いの中で多くの兵が帰ってこなかった。彼自身の肉親には、そうした兵士はいなかったが、幼馴染の娘がいる隣家の主人がその戦いの犠牲になっている。その幼馴染に彼自身が異性としての好意を持っているわけでないし、彼女の魔力は到底魔法学校に合格するようなレベルでもないが、彼が帰省した時に、彼女を訪問してその悲劇を慰める程度の関係ではある。
元々、無敵と信じていた帝国がまだ惑星世界を統一も出来ていない世界に敗れたということが、彼にとってはショックであったし、そのように身近にその結果を悲しんでいるという点は、彼にハヤトに対する反感を募らせていた。だから、戦闘訓練であれば慣れている自分が有利だと思いながら、彼は教師に申し出た。
「ラーザル校長先生、ハヤトさんと1:1の戦闘訓練をお願いしたいのですが。僕も一応この学校のチャンピオンですが、胸をお借りしてより自分を磨きたいのです」
その言葉に、ラーザル校長はすこし考えた。
カーミナルのハヤトに対する反感には気づいていた。しかし、地球との戦いで彼の近親者が死んだということはないし、取り乱した様子はないので、その感情は反感程度で憎しみはないだろう。さらにハヤトも生徒を庇う様子であるから、戦闘訓練の相手の生徒に手荒なことはしないだろう。
彼女は、高等部の主任を見ると彼も頷くので、ハヤトに話しかける。なにより彼女自身がハヤトの能力を見たかったのだ。
「ハヤトさん、いかがですか。わが校に限らず、魔法学校では高等部になると魔法による戦闘訓練を奨励しています。まあ、そのほかにも精密な魔力の操作、単純な風魔法の力、速さ、威圧の強さ、転移の距離などを競ったりするものもありますがね。
この戦闘訓練というのは、単純に1:1または3人づつで戦って相手を気絶させるか、試合場から追い出したら勝ちというものです。カーミナルはそれを申し込んでいるのです。彼はこの学校のみらなず、2年次の時の世界選手権の高等部のレンジで3位になった実力者で、この学校のチャンピオンです」
「ほお、魔法によるバトルですか?地球ではやれていないから本当に久しぶりだ。いいですよ。どういうルールですか?」
「ルールは基本的に火魔法は禁止で、試合場の外に大きな被害が及ぶような魔法は禁止です。試合場には一応防御の魔法は巡らせていますがね。そして、相手が気絶するか、あの試合場から外に押し出したら勝ちです。そうですね。まず先立って、生徒の訓練を2組ほど見てもらいましょうか」
そう言って、彼女がなにかの操作をしたのだろう。その巨大な建物の隅に、試合場として床から高さ1mほどの柵がせり上がってくる。その広さは大体10m四方だ。校長の意を受けて、高等部の主任が体育館に居た教師に生徒同士の戦闘訓練実施の指示をしている。
やがて、どちらもジャージみたいなベージュの服を着た、小柄でぽっちゃりしている女生徒と中背の筋骨たくましい男子生徒が、試合場の柵の一部を開いて3mほど距離を置いて向かい合う。女生徒は赤い帯を、男子生徒は白い帯を腰に巻いている。審判は中には入らないで、外から声をかける形で仕切るようだ。先ほどは、審判役の女性教師が2人の生徒に中に入るように促していた。
魔法能力開発室長の東晴美は、サーダルタ側の外務省のヨハナ・バルダッキからその訓練というより試合の解説を受けている。バルバッキも魔法学校の出身だから、自分も散々この訓練はしたものだ。ただ彼女は地方部の魔法学校出身で、このサダン魔法学校ほど高いレベルは経験していない。
彼女の学校からも高等部の選手権大会のへは出場するが、殆どが1回戦負けで賞などは取ったことはないし、彼女は学校の代表選手にもなれないレベルだった。とは言え、無論テレビ放送の試合は見る訳で、それがどういうものかを説明する程度のことは可能である。
審判が声をかける。「いいかな?」2人が頷くのを確認して尚も言う。
「よし始めていいぞ」
その声で、2人とも腕を持ち上げて掌を相手に向けて顔の前で開く。最初に男の子が、「風よ、渦巻け!」そう叫んで手を振るう。ぴゅーと鋭い音がして、空気が渦巻いて女生徒の足元目掛けて走る。その部分の空気の密度が違うのだろう、光が屈折して渦巻きがはっきり見える。
「あれは、風のハンマーね。足元を狙って風の言ってみれば拳骨を叩きつけているのよ。だけど……」
バルダッッキが東に向かって解説するが、赤の女生徒はすっと浮き上がって楽々とそれを避ける。しかし白の男子生徒は、その時は前傾姿勢になって、赤目掛けて突っ込んでいた。
赤の女性徒は、それを見ても慌てずさらに浮き上がりながら水平になって、明らかに身体強化をしている白の突っ込みを避けたが、明らかに姿勢を変える動きが早くなっている。白はしかし、今度はその勢いのまま踏み切って高く跳びあがり、反転しながら赤の女生徒に向けて跳びかかろうとする。
それは明らかに自然ではありえない運動であり、念動力によって体を高く舞い上げかつ大きな円を描く形で反対に帰ってくる。そのままだと、白がほぼ水平になった赤の上から飛び掛かることになる。しかし、赤は素早く床上に飛び降り反転して、白の男生徒に向き直り、彼を目掛けて掌を構えて「風よ!吹き飛ばせ!」と叫ぶ。
その声にまたも空気の渦がはっきり見えて白に向けて走る。それを白は、顔の前で両手の拳を握って叩き返すように念動力で勢いを殺すが、体全体への力は消せず、後ろに飛ばされる。しかし、ぎりぎり柵の内側に足から舞い降りようとするのを、赤の女生徒が風のハンマーで外に押し出そうとする。
それを、白が同じく風のハンマーで迎え撃って相手のそれを相殺して床に降り立つ。そこで、2人は停止して一息入れるが、ほんの1分にもならない攻防であり、初めて近くでこうした攻防を見る東と陳にとっては非常にスリリングなものであった。
ハヤトも正直に言って感心した。この2人の生徒は、どちらも自分の体程度は魔法で浮かせることが出来るから飛行魔法は当然できるのだ。ラーナラにおいても、飛行魔法が出来たらそれなりのレベルと言われていたので、高校生レベルでこれが出来たらたいしたものだ。
地球人でできるとすれば日本人だが、サーダルタ帝国並みのマナ濃度でも飛行魔法ができるのは、多分1000人はいないだろう。このようなマナの濃い世界で、地球人とサーダルタ帝国人が白兵戦をやればまず負けるなと思うハヤトだった。
その休止も一息であり、今度は赤の女生徒が白に全力で駆け寄る。明らかに身体強化をかけた状態で体当たりを狙っているようだが、体格がだいぶ違うので格闘になれば白が強いだろう。しかし、白はそれを防ごうと風を巻き起こして相手を止めようとするが、風は女生徒の体をするりと滑っていく。何かの魔法で、白が起こした風の圧力を体の表面で滑らせているようだ。
遂に女生徒が白の間近に使づいたと思ったら、女生徒の手元から白光が走り、男子生徒が硬直した。それを身体強化した赤の女生徒が、柵の外に楽々押し出して、審判が「赤、シャーリーの勝ち!」と叫ぶ。最後の魔法は電気ショックを起こすもののようで、男子生徒もそれを知っていたので、遠ざけようとしたのだ。男子生徒は直ぐにもぞもぞ動いていたので、それほど強力なショックではなかったらしい。
次の組は、やはり赤の女生徒と白の男子生徒であり、同じ位の身長だが横幅はむしろぽっちゃり型の女生徒が勝る。同じように審判が外から「始めていいよ」と声をかけて、お互いに腕をあげて構えをとったとたんに赤の女生徒が動き始めた。
腰を落として安定した姿勢で、手を突き出した状態で白の男子生徒に、ゆっくりじりじりと歩み寄る。風が、男子生徒に向けてビュービューと吹いて、髪がその風になびき、服がバタついている。すると、まだ女生徒がさわりもしていないのに、男子生徒が押されて靴がずるずる滑り始める。
男子生徒は慌てて、「風よ、渦巻く風よ、押し返せ」と叫ぶが、風の勢いは止まっても靴が滑るのは止まらない。
男子生徒は方向を変えて横に逃げようとするが、女生徒は体の向きを変えて正面に向かうので、後ろに押されるのは変わらない。女生徒は今や男子生徒の1.5mほど前にいて、歯を食いしばり相変わらず腕を付きだしてじりじりと前進する。
男子生徒は柵までの距離が、もはや1mほどになるのを振り返って見て、思い切って「えい!」と叫び横に跳ぶ。彼は、念動力で強く押されている状態で横に跳んだので、バランスを崩して倒れ、ごろごろ転がって横たわった状態で柵に当たって止まる。
「え!ええ!」女生徒が慌てて念動力が途切れるのを感じて、男子生徒は素早く起き上がり、女生徒に抱き着いて、両足を腕で掬い上げてそのまま、すぐ近くの柵から身を乗り出して彼女をそっと下す。
『今度はあまり派手さがないが、それなりに面白い試合だった。男子生徒もなかなか紳士だな』ハヤトは、「白、キシガムイの勝ち!」という叫びを聞いて思った。
『要するに風魔法が中心になるが、風の刃のような相手を傷つけるような魔法は使えないということだな。自分としてはもともと使う気はなかったが。さて、手加減するもの失礼だが、どういう作戦でいくかな』試合場の入口に向かいながらハヤトは考える。
向かい合って、この学校で少なくとも、魔法による対人戦闘のチャンピオンであるという少年を見つめる。身長は180㎝のハヤトに比べ、10㎝低く、体重は75kgのハヤトより10㎏は軽いだろう。サーダルタ帝国に関する情報収集の結果からすると、最大のものでハヤトにはかなり劣るようだから、魔力がハヤトより上ということはないだろう。しかし、この試合場でのこの闘いについては、ハヤトに比べはるかに経験を積んていることは確かだ。
とは言え、久しぶりの魔法でもバトルを楽しもうという気になっている。それに、この闘いになにも掛かっているわけではないのから、仮に負けたところで、どうと言うことはない。別段、サーダルタ帝国との交渉で不利になることもない。
『相手に会わせよう』ハヤトは決めた。相手の動きに合わせて対応していけばよい。
「では、始めてください」
審判役の教師が告げる。
東はドキドキして、ハヤトの闘いを見守っている。実のところ彼女のハヤトの魔法のこうした闘いの実力を知らない。むろん、ハヤトは空間魔法、探知魔法などという、この科学技術の世の中でも極めて有用な魔法を使えることから、地球にとって宝のような存在であることはよく知っている。
一方で、先ほどは生徒たちの戦いを見て驚きはしたし、興奮もしたが所詮はあのような能力は世の中を変えるようなものではないし、戦いにおいてもあの程度では銃器をもった数に勝る敵に勝つことは難しいだろう。だから、仮にハヤトがこの試合(?)に負けても彼の値打ちは全く減じない。
だから、ハヤトがこんな試合を受ける必要は全くないと思っている。理性では判っている。しかし、彼女はハヤトにあの生意気そうな少年に勝って欲しいと思った。始めの声とほぼ同時に、すでに詠唱を済ませていた少年はハヤトに向け風を放った。
それは、ヒュー、ヒューとハヤトに向けて押し出す暴風レベルの一見ただの風であるが、その中に少年は沢山の微小な風の刃を混ぜていた。ハヤトはすでに身体強化は済ませていたが、風が押し寄せるを感じて、体の前に鋭角の風スクリーンを張った。
相手が風魔法を向けてくるときには、それに相手を切り裂くような渦を混ぜるのは普通なので、避けずに受けるときにはハヤトとして普通の対応である。相手から押し寄せる風は、その角度30度程度の尖ったスクリーンの両側に分かれて流れる。先ほどの、女生徒の使った魔法も似たようなものだと思う。
風魔法に効果がないことが解ったカーミナルは直ぐに切り替えた。ハヤトは体が急速に重くなって来たのに気づいて、すぐにグラビティ(重力)の魔法を使われていることを悟り、すぐさま反重力で中和した。さらに、そのついでに少年に反重力をかけて、彼がバランスを崩しかけて慌てて重力魔法で打ち消すのを見てほほ笑んだ。
実際に重力エンジンを実用化して、その作用を熟知しているハヤトに原理を判らず使っている少年にハヤトに重力の取り扱いで敵う術はない。少年がそれに気がつき、顔を赤くしてさらに攻撃する。
見ている東からは、ハヤトが風魔法で風を吹き寄せられているのは判ったし、ハヤトがそれを自分の体の左右に逸らしているのにも気が付いた。しかし、風が止むとともに、何があったのかはよくわからず、少年がバランスを崩したのは、すこし浮き上がりかけた結果なので、ハヤトが何かをしたのだろうと思った。
その解説は、傍のバルダッキから囁かれた。
「あれはグラビティの魔法をハヤトさんが打ち消して、その効果をカーミナル君に及ぼしたのでしょう。それをカーミナル君がさらにグラビティで打ち消したのでしょう。なかなか高度な戦いです」
しかし、次の瞬間ハヤトの顔の前で、まぶしい光が一呼吸の間灯った。東がすぐさま目を閉じても暫く残像が残ったほどであったので、彼女はハヤトへの影響を心配した。さらにすぐさま、ハヤトの背後から風のハンマーが襲い、それを放った少年は「勝った!」と思った。
そのハンマーを食らえば、身体強化をかけていても後頭部を襲うその衝撃には耐えられずに気を失う。しかし、その衝撃で前に飛ばされるはずのハヤトは全く動かないし、彼を見つめているその眼も光にくらんでいる様子はない。明らかにどのようにしてかは分からないが光は無効化され、今は力のスクリーンで防御している。
カーミナルは、とっさに始めて使う禁じ手を放った。ブオー!という音がして、今までの風魔法とは比べものにならない強烈な吸引力で、スクリーンごとにハヤトを吸い上げようとする。周囲で見ている生徒達も引きずられ、彼らから悲鳴があがる。東も引きずられながらも、ハヤトの頭上にぽっかり空いた丸い穴を見つめる。
『あれは多分、空間魔法でどこかの亜宇宙と繋いだのだ。放っておけば大変なことになる』
彼女はそう思ったが、ハヤトはすでに少年が空間魔法を使おうとしているのに気づいていた。空間を繋ごうというほどの魔法を使おうとすれば、どうしても莫大な魔力を用いるので、何か大掛かりなことをしようとしているのは普通の魔法使いには判る。
ハヤトは中でも空間魔法は得意として、サーダルタ帝国との戦いでも散々使ってきたので、その独特の兆候にすぐ気が付いたのだ。だから、自分の頭上に亜宇宙と繋がった穴が生じた時には少年の能力に感心して、折角だから深刻な害がない段階までは放っておこうとした。
無論、穴に引きずり込まれないないように、自分の体は力で固定している。しかし、その穴が明いていたのはほんの30秒足らずだろう。東は自分が引きずられているのに、穴の直下にいるハヤトが宙に浮いているものの殆ど動かないので、念動力で自分の体を固定しているのだろうと思っている。
また彼が平静でかつ面白がっている表情なのを見て、『対処できるのだったら早くすればいいのに』と腹だたしく思う。ハヤトは生徒たちが引きずられ、かつ建物が急激な気圧の変化にギシギシ鳴るのを聞き、かつカーミナルが苦しげな顔をしているのをみて、『限界だな』と思い、超空間の接続に干渉してそれを断ち切る。
さらに、少年を力でひっつかみ、必死で抵抗するのを意に介さずに試合場の外にそっと放り出す。
「ハ、ハヤトさんの勝ち!」
顔色を変えて、吸引に抵抗していた審判が叫ぶ。放り出されたままで、床に座り込んでいるカーミナル少年にハヤトが声をかける。
「なかなか、多彩な魔法が使えるね。大したものだ。だけど最後のものはいささか危ないと思うぞ。もうすこしやっていれば、君の魔力が枯渇して接続を断てなくなったかも知れない。また、この建物も内部の減圧による周囲からの圧力で崩壊していたかもしれないね。あの真空の空間と繋ぐ空間魔法はあまり使わない方がいいよ」
「そうよ。確かにさっきのあなたの魔法は明確に禁じられていないけれど、明らかに観客に危険が及ぶので知られたら禁止になるものです。私も構内での使用は禁止します。いいですか?」
ようやく気持ちを立て直したラーザル校長が少年に向かって厳しく言う。また、それに少年が神妙に頷くのを確認して付け加える。
「それにしても、あなたは空間魔法を使えるようになったのですね。それにしても、あのような使い方は初めて見ましたし、聞いたこともない」
すこし顔色が戻ってきた少年は、ゆっくり立ち上がって校長に応える。
「一年ほど前から空間収納が使えるようになったのです。それから、空間の接続もだんだん距離が伸びてきて、真空の高空と繋いだら面白いのではないかと思って。でもちょっと危ないですね。もう、この戦闘訓練では使いません」
それから、ハヤトに向きなおって言葉を続ける。
「ハヤトさん。私では敵わないのは良く解かりました。最後の風魔法、最初にあれをやられたら防げなかったでしょう。基本のパワーと使える技の幅広さが違います。ありがとうございました。勉強になりました」
そのように言って、頭をさげる少年にほっこりした気持ちを持ったハヤトだった。
しかし、軽々と上に逸らされてさらに迎え撃った魔法に簡単に中和された。さすがに、帝国を打ち負かせた地球の主戦力と言われる魔法使いであり、単なる高等部で注目を浴びている彼とはレベルが違うようだ。また、その後見せられた火魔法は、同様なものを実際に溶かすまではやったことのある彼にとっては、到底手の届かないレベルの魔法である。
その上に彼を庇うような言動も見せており、それが腹立たしい。地球との戦いの中で多くの兵が帰ってこなかった。彼自身の肉親には、そうした兵士はいなかったが、幼馴染の娘がいる隣家の主人がその戦いの犠牲になっている。その幼馴染に彼自身が異性としての好意を持っているわけでないし、彼女の魔力は到底魔法学校に合格するようなレベルでもないが、彼が帰省した時に、彼女を訪問してその悲劇を慰める程度の関係ではある。
元々、無敵と信じていた帝国がまだ惑星世界を統一も出来ていない世界に敗れたということが、彼にとってはショックであったし、そのように身近にその結果を悲しんでいるという点は、彼にハヤトに対する反感を募らせていた。だから、戦闘訓練であれば慣れている自分が有利だと思いながら、彼は教師に申し出た。
「ラーザル校長先生、ハヤトさんと1:1の戦闘訓練をお願いしたいのですが。僕も一応この学校のチャンピオンですが、胸をお借りしてより自分を磨きたいのです」
その言葉に、ラーザル校長はすこし考えた。
カーミナルのハヤトに対する反感には気づいていた。しかし、地球との戦いで彼の近親者が死んだということはないし、取り乱した様子はないので、その感情は反感程度で憎しみはないだろう。さらにハヤトも生徒を庇う様子であるから、戦闘訓練の相手の生徒に手荒なことはしないだろう。
彼女は、高等部の主任を見ると彼も頷くので、ハヤトに話しかける。なにより彼女自身がハヤトの能力を見たかったのだ。
「ハヤトさん、いかがですか。わが校に限らず、魔法学校では高等部になると魔法による戦闘訓練を奨励しています。まあ、そのほかにも精密な魔力の操作、単純な風魔法の力、速さ、威圧の強さ、転移の距離などを競ったりするものもありますがね。
この戦闘訓練というのは、単純に1:1または3人づつで戦って相手を気絶させるか、試合場から追い出したら勝ちというものです。カーミナルはそれを申し込んでいるのです。彼はこの学校のみらなず、2年次の時の世界選手権の高等部のレンジで3位になった実力者で、この学校のチャンピオンです」
「ほお、魔法によるバトルですか?地球ではやれていないから本当に久しぶりだ。いいですよ。どういうルールですか?」
「ルールは基本的に火魔法は禁止で、試合場の外に大きな被害が及ぶような魔法は禁止です。試合場には一応防御の魔法は巡らせていますがね。そして、相手が気絶するか、あの試合場から外に押し出したら勝ちです。そうですね。まず先立って、生徒の訓練を2組ほど見てもらいましょうか」
そう言って、彼女がなにかの操作をしたのだろう。その巨大な建物の隅に、試合場として床から高さ1mほどの柵がせり上がってくる。その広さは大体10m四方だ。校長の意を受けて、高等部の主任が体育館に居た教師に生徒同士の戦闘訓練実施の指示をしている。
やがて、どちらもジャージみたいなベージュの服を着た、小柄でぽっちゃりしている女生徒と中背の筋骨たくましい男子生徒が、試合場の柵の一部を開いて3mほど距離を置いて向かい合う。女生徒は赤い帯を、男子生徒は白い帯を腰に巻いている。審判は中には入らないで、外から声をかける形で仕切るようだ。先ほどは、審判役の女性教師が2人の生徒に中に入るように促していた。
魔法能力開発室長の東晴美は、サーダルタ側の外務省のヨハナ・バルダッキからその訓練というより試合の解説を受けている。バルバッキも魔法学校の出身だから、自分も散々この訓練はしたものだ。ただ彼女は地方部の魔法学校出身で、このサダン魔法学校ほど高いレベルは経験していない。
彼女の学校からも高等部の選手権大会のへは出場するが、殆どが1回戦負けで賞などは取ったことはないし、彼女は学校の代表選手にもなれないレベルだった。とは言え、無論テレビ放送の試合は見る訳で、それがどういうものかを説明する程度のことは可能である。
審判が声をかける。「いいかな?」2人が頷くのを確認して尚も言う。
「よし始めていいぞ」
その声で、2人とも腕を持ち上げて掌を相手に向けて顔の前で開く。最初に男の子が、「風よ、渦巻け!」そう叫んで手を振るう。ぴゅーと鋭い音がして、空気が渦巻いて女生徒の足元目掛けて走る。その部分の空気の密度が違うのだろう、光が屈折して渦巻きがはっきり見える。
「あれは、風のハンマーね。足元を狙って風の言ってみれば拳骨を叩きつけているのよ。だけど……」
バルダッッキが東に向かって解説するが、赤の女生徒はすっと浮き上がって楽々とそれを避ける。しかし白の男子生徒は、その時は前傾姿勢になって、赤目掛けて突っ込んでいた。
赤の女性徒は、それを見ても慌てずさらに浮き上がりながら水平になって、明らかに身体強化をしている白の突っ込みを避けたが、明らかに姿勢を変える動きが早くなっている。白はしかし、今度はその勢いのまま踏み切って高く跳びあがり、反転しながら赤の女生徒に向けて跳びかかろうとする。
それは明らかに自然ではありえない運動であり、念動力によって体を高く舞い上げかつ大きな円を描く形で反対に帰ってくる。そのままだと、白がほぼ水平になった赤の上から飛び掛かることになる。しかし、赤は素早く床上に飛び降り反転して、白の男生徒に向き直り、彼を目掛けて掌を構えて「風よ!吹き飛ばせ!」と叫ぶ。
その声にまたも空気の渦がはっきり見えて白に向けて走る。それを白は、顔の前で両手の拳を握って叩き返すように念動力で勢いを殺すが、体全体への力は消せず、後ろに飛ばされる。しかし、ぎりぎり柵の内側に足から舞い降りようとするのを、赤の女生徒が風のハンマーで外に押し出そうとする。
それを、白が同じく風のハンマーで迎え撃って相手のそれを相殺して床に降り立つ。そこで、2人は停止して一息入れるが、ほんの1分にもならない攻防であり、初めて近くでこうした攻防を見る東と陳にとっては非常にスリリングなものであった。
ハヤトも正直に言って感心した。この2人の生徒は、どちらも自分の体程度は魔法で浮かせることが出来るから飛行魔法は当然できるのだ。ラーナラにおいても、飛行魔法が出来たらそれなりのレベルと言われていたので、高校生レベルでこれが出来たらたいしたものだ。
地球人でできるとすれば日本人だが、サーダルタ帝国並みのマナ濃度でも飛行魔法ができるのは、多分1000人はいないだろう。このようなマナの濃い世界で、地球人とサーダルタ帝国人が白兵戦をやればまず負けるなと思うハヤトだった。
その休止も一息であり、今度は赤の女生徒が白に全力で駆け寄る。明らかに身体強化をかけた状態で体当たりを狙っているようだが、体格がだいぶ違うので格闘になれば白が強いだろう。しかし、白はそれを防ごうと風を巻き起こして相手を止めようとするが、風は女生徒の体をするりと滑っていく。何かの魔法で、白が起こした風の圧力を体の表面で滑らせているようだ。
遂に女生徒が白の間近に使づいたと思ったら、女生徒の手元から白光が走り、男子生徒が硬直した。それを身体強化した赤の女生徒が、柵の外に楽々押し出して、審判が「赤、シャーリーの勝ち!」と叫ぶ。最後の魔法は電気ショックを起こすもののようで、男子生徒もそれを知っていたので、遠ざけようとしたのだ。男子生徒は直ぐにもぞもぞ動いていたので、それほど強力なショックではなかったらしい。
次の組は、やはり赤の女生徒と白の男子生徒であり、同じ位の身長だが横幅はむしろぽっちゃり型の女生徒が勝る。同じように審判が外から「始めていいよ」と声をかけて、お互いに腕をあげて構えをとったとたんに赤の女生徒が動き始めた。
腰を落として安定した姿勢で、手を突き出した状態で白の男子生徒に、ゆっくりじりじりと歩み寄る。風が、男子生徒に向けてビュービューと吹いて、髪がその風になびき、服がバタついている。すると、まだ女生徒がさわりもしていないのに、男子生徒が押されて靴がずるずる滑り始める。
男子生徒は慌てて、「風よ、渦巻く風よ、押し返せ」と叫ぶが、風の勢いは止まっても靴が滑るのは止まらない。
男子生徒は方向を変えて横に逃げようとするが、女生徒は体の向きを変えて正面に向かうので、後ろに押されるのは変わらない。女生徒は今や男子生徒の1.5mほど前にいて、歯を食いしばり相変わらず腕を付きだしてじりじりと前進する。
男子生徒は柵までの距離が、もはや1mほどになるのを振り返って見て、思い切って「えい!」と叫び横に跳ぶ。彼は、念動力で強く押されている状態で横に跳んだので、バランスを崩して倒れ、ごろごろ転がって横たわった状態で柵に当たって止まる。
「え!ええ!」女生徒が慌てて念動力が途切れるのを感じて、男子生徒は素早く起き上がり、女生徒に抱き着いて、両足を腕で掬い上げてそのまま、すぐ近くの柵から身を乗り出して彼女をそっと下す。
『今度はあまり派手さがないが、それなりに面白い試合だった。男子生徒もなかなか紳士だな』ハヤトは、「白、キシガムイの勝ち!」という叫びを聞いて思った。
『要するに風魔法が中心になるが、風の刃のような相手を傷つけるような魔法は使えないということだな。自分としてはもともと使う気はなかったが。さて、手加減するもの失礼だが、どういう作戦でいくかな』試合場の入口に向かいながらハヤトは考える。
向かい合って、この学校で少なくとも、魔法による対人戦闘のチャンピオンであるという少年を見つめる。身長は180㎝のハヤトに比べ、10㎝低く、体重は75kgのハヤトより10㎏は軽いだろう。サーダルタ帝国に関する情報収集の結果からすると、最大のものでハヤトにはかなり劣るようだから、魔力がハヤトより上ということはないだろう。しかし、この試合場でのこの闘いについては、ハヤトに比べはるかに経験を積んていることは確かだ。
とは言え、久しぶりの魔法でもバトルを楽しもうという気になっている。それに、この闘いになにも掛かっているわけではないのから、仮に負けたところで、どうと言うことはない。別段、サーダルタ帝国との交渉で不利になることもない。
『相手に会わせよう』ハヤトは決めた。相手の動きに合わせて対応していけばよい。
「では、始めてください」
審判役の教師が告げる。
東はドキドキして、ハヤトの闘いを見守っている。実のところ彼女のハヤトの魔法のこうした闘いの実力を知らない。むろん、ハヤトは空間魔法、探知魔法などという、この科学技術の世の中でも極めて有用な魔法を使えることから、地球にとって宝のような存在であることはよく知っている。
一方で、先ほどは生徒たちの戦いを見て驚きはしたし、興奮もしたが所詮はあのような能力は世の中を変えるようなものではないし、戦いにおいてもあの程度では銃器をもった数に勝る敵に勝つことは難しいだろう。だから、仮にハヤトがこの試合(?)に負けても彼の値打ちは全く減じない。
だから、ハヤトがこんな試合を受ける必要は全くないと思っている。理性では判っている。しかし、彼女はハヤトにあの生意気そうな少年に勝って欲しいと思った。始めの声とほぼ同時に、すでに詠唱を済ませていた少年はハヤトに向け風を放った。
それは、ヒュー、ヒューとハヤトに向けて押し出す暴風レベルの一見ただの風であるが、その中に少年は沢山の微小な風の刃を混ぜていた。ハヤトはすでに身体強化は済ませていたが、風が押し寄せるを感じて、体の前に鋭角の風スクリーンを張った。
相手が風魔法を向けてくるときには、それに相手を切り裂くような渦を混ぜるのは普通なので、避けずに受けるときにはハヤトとして普通の対応である。相手から押し寄せる風は、その角度30度程度の尖ったスクリーンの両側に分かれて流れる。先ほどの、女生徒の使った魔法も似たようなものだと思う。
風魔法に効果がないことが解ったカーミナルは直ぐに切り替えた。ハヤトは体が急速に重くなって来たのに気づいて、すぐにグラビティ(重力)の魔法を使われていることを悟り、すぐさま反重力で中和した。さらに、そのついでに少年に反重力をかけて、彼がバランスを崩しかけて慌てて重力魔法で打ち消すのを見てほほ笑んだ。
実際に重力エンジンを実用化して、その作用を熟知しているハヤトに原理を判らず使っている少年にハヤトに重力の取り扱いで敵う術はない。少年がそれに気がつき、顔を赤くしてさらに攻撃する。
見ている東からは、ハヤトが風魔法で風を吹き寄せられているのは判ったし、ハヤトがそれを自分の体の左右に逸らしているのにも気が付いた。しかし、風が止むとともに、何があったのかはよくわからず、少年がバランスを崩したのは、すこし浮き上がりかけた結果なので、ハヤトが何かをしたのだろうと思った。
その解説は、傍のバルダッキから囁かれた。
「あれはグラビティの魔法をハヤトさんが打ち消して、その効果をカーミナル君に及ぼしたのでしょう。それをカーミナル君がさらにグラビティで打ち消したのでしょう。なかなか高度な戦いです」
しかし、次の瞬間ハヤトの顔の前で、まぶしい光が一呼吸の間灯った。東がすぐさま目を閉じても暫く残像が残ったほどであったので、彼女はハヤトへの影響を心配した。さらにすぐさま、ハヤトの背後から風のハンマーが襲い、それを放った少年は「勝った!」と思った。
そのハンマーを食らえば、身体強化をかけていても後頭部を襲うその衝撃には耐えられずに気を失う。しかし、その衝撃で前に飛ばされるはずのハヤトは全く動かないし、彼を見つめているその眼も光にくらんでいる様子はない。明らかにどのようにしてかは分からないが光は無効化され、今は力のスクリーンで防御している。
カーミナルは、とっさに始めて使う禁じ手を放った。ブオー!という音がして、今までの風魔法とは比べものにならない強烈な吸引力で、スクリーンごとにハヤトを吸い上げようとする。周囲で見ている生徒達も引きずられ、彼らから悲鳴があがる。東も引きずられながらも、ハヤトの頭上にぽっかり空いた丸い穴を見つめる。
『あれは多分、空間魔法でどこかの亜宇宙と繋いだのだ。放っておけば大変なことになる』
彼女はそう思ったが、ハヤトはすでに少年が空間魔法を使おうとしているのに気づいていた。空間を繋ごうというほどの魔法を使おうとすれば、どうしても莫大な魔力を用いるので、何か大掛かりなことをしようとしているのは普通の魔法使いには判る。
ハヤトは中でも空間魔法は得意として、サーダルタ帝国との戦いでも散々使ってきたので、その独特の兆候にすぐ気が付いたのだ。だから、自分の頭上に亜宇宙と繋がった穴が生じた時には少年の能力に感心して、折角だから深刻な害がない段階までは放っておこうとした。
無論、穴に引きずり込まれないないように、自分の体は力で固定している。しかし、その穴が明いていたのはほんの30秒足らずだろう。東は自分が引きずられているのに、穴の直下にいるハヤトが宙に浮いているものの殆ど動かないので、念動力で自分の体を固定しているのだろうと思っている。
また彼が平静でかつ面白がっている表情なのを見て、『対処できるのだったら早くすればいいのに』と腹だたしく思う。ハヤトは生徒たちが引きずられ、かつ建物が急激な気圧の変化にギシギシ鳴るのを聞き、かつカーミナルが苦しげな顔をしているのをみて、『限界だな』と思い、超空間の接続に干渉してそれを断ち切る。
さらに、少年を力でひっつかみ、必死で抵抗するのを意に介さずに試合場の外にそっと放り出す。
「ハ、ハヤトさんの勝ち!」
顔色を変えて、吸引に抵抗していた審判が叫ぶ。放り出されたままで、床に座り込んでいるカーミナル少年にハヤトが声をかける。
「なかなか、多彩な魔法が使えるね。大したものだ。だけど最後のものはいささか危ないと思うぞ。もうすこしやっていれば、君の魔力が枯渇して接続を断てなくなったかも知れない。また、この建物も内部の減圧による周囲からの圧力で崩壊していたかもしれないね。あの真空の空間と繋ぐ空間魔法はあまり使わない方がいいよ」
「そうよ。確かにさっきのあなたの魔法は明確に禁じられていないけれど、明らかに観客に危険が及ぶので知られたら禁止になるものです。私も構内での使用は禁止します。いいですか?」
ようやく気持ちを立て直したラーザル校長が少年に向かって厳しく言う。また、それに少年が神妙に頷くのを確認して付け加える。
「それにしても、あなたは空間魔法を使えるようになったのですね。それにしても、あのような使い方は初めて見ましたし、聞いたこともない」
すこし顔色が戻ってきた少年は、ゆっくり立ち上がって校長に応える。
「一年ほど前から空間収納が使えるようになったのです。それから、空間の接続もだんだん距離が伸びてきて、真空の高空と繋いだら面白いのではないかと思って。でもちょっと危ないですね。もう、この戦闘訓練では使いません」
それから、ハヤトに向きなおって言葉を続ける。
「ハヤトさん。私では敵わないのは良く解かりました。最後の風魔法、最初にあれをやられたら防げなかったでしょう。基本のパワーと使える技の幅広さが違います。ありがとうございました。勉強になりました」
そのように言って、頭をさげる少年にほっこりした気持ちを持ったハヤトだった。
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