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第5章 銀河宇宙との出会い
5.14 銀河防衛機構、イーター退治法開発
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通常空間に超空間が繋ぐための良く知られている方法は、超空間ジャンプと通信、さらに超空間タグを貼る動作である。これらについて、いままでその現象そのものを検知する方法についての研究成果がないかの検索が研究室頭脳によりかけられた。
これは銀河協議会の構成メンバーが、それぞれ研究結果を取りまとめた頭脳を持っており、それに研究室頭脳が超空間通信を通じてコンタクトして検索できるようになっているのだ。すなわち、研究室頭脳はいわば、銀河協議会の構成メンバーのすべての研究結果について集積されているデータベースをもっていることになるわけで、一番古いデータは十万年以上前のものまである。
その結果、やはりそれに類する研究がいくつも行われており、そうした現象が空間にエネルギーにより空間をゆがめて穴を無理に明けるわけであるため、空間のゆがめる過程が理論的に明らかにされており、そうしたゆがみを直接測定する手法が提示されていた。
しかし、それは超空間ジャンプ・通信は重力または電波で容易に検知できるので、その測定の意味がないということで、そこまでの研究に留まっていた。しかし、この空間のゆがみを測定する方法の提案は、現象そのものを理論的に解明していることもあって理にかなっており、その装置化のために通信・電気・電子等の専門家を集めてマドンナを使うことにより、わずか2週間でプロトタイプが作られた。
これによって、実際の超空間通信、ジャンプを数多く観測し、実際に測定することでモニター装置の改良もされて空間のゆがみが正確に測定でき、いわば3次元での可視化ができることになった。この装置は、超空間測定装置として直ちに量産化され送りだした調査船に出発後1か月後には届けられて、直ちに観測・試験に使われた。
しばらくして、続々と調査船からのデータが届き始めた。想定転移点に送り出した調査船は、当初は待機するのみであったが、超空間測定装置が届いてからは、特異点そのものの測定が行われ始めた。その結果、1点については明らかに自然状態で通常空間と超空間との通り道ができていてエネルギーによる空間に穴を明ける操作なしに超空間ジャンプを行える点であることが分かった。
そして、その1点については、三次元の特異点の穴のマップがつくられたので、より的確な観測が行われることになる。また、超空間測定装置の開発によってイーターに侵された特異点についても調査が行われて、やはり1か所が自然の穴があることが分かったが、他の2か所はそのようなものはないことも分かった。したがって、イーターはモデル上の特異点であれば往来が可能であることから、今選んでいる3カ所の特異点の観測は継続する必要がある。
さらに、十二カ所のイーターに支配されている惑星の調査の結果以下のような結果を得た。
1) イーターの体は非常に密度が低いが宇宙の真空とは明確な境界がある。すなわち、全体に吸引力を働かせて体を構成している物質を繋ぎとめている。
2) この吸引力は集中して極めて大きな力を発揮して惑星表面を改造する力にも使えるし、無人観測機を惑星に引
きずり下ろす力にも使える。
3) 12カ所の惑星表面を覆うイーターの体の連続画像は緩やかに表面が揺れ動いている。それは無人機を近づけ
ると一部を引き延ばして追ってきて、10Gの加速では簡単に追いつかれる。また吸引力等の力はイーターの体
に触れていないと使えない模様であり、一旦そういう状態になると無人機の斥力装置では抵抗不可能。
4) イーターの体に実験動物を乗せた船を近づけると直ちに取り込み、超空間に穴を明けて宇宙船内に入り込ん
で、動物の生命力を吸い取り、そのことで、イーターの体の質量が増す。
5) 熱線・光線照射については効果なし。牽引力、斥力によって体を変形させることは可能であるが、体の物質を
希散させることはできない。
6) 特定の波長の放射線の放射を明らかに嫌がって体を退ける。
以上の結果から、イーターの移動のメカニズムと方法が次のように推論された。
1) 宇宙船内等の物理的に閉ざされた空間に入り込むには、その対象を体に取り込んで壁に超空間の穴をあけて連
続した状態で入り込む。
2) 通常空間の移動は基本的には体を引き延ばして移動する。しかし、その速度は光速を越えないと考えられるの
に移動の速度が明らかに光束を上回っているのは、超空間を経由して体を引き延ばしているせいだと考えられ
る。
3) また、一定の質量を越えると独立して存続できる、すなわち空間を一個の存在として飛翔でき、このような独
立した存在が特異点を使うと大距離を越えることができ、生命を吸収して増殖する。
推論については、マドンナを使ってほぼ正しいことが結論付けられた。
また、イーターが明らかに嫌がる放射線、ゼータ線、が確認されたことから以下の開発が決定された。
1) この放射線を宇宙船のバリヤーとして使うシステム、ゼータ線バリヤーの開発、
2) イーターの体物質を、ゼータ線を放射している炉に吸引するシステム、イーター吸引機を開発、
3) 大出力ゼータ線照射砲の開発
これらの開発が一斉に始まった。マドンナの活用、研究所頭脳の管理・指導及び、大人数の同時並行による作業ですべての開発が2ヵ月で終了し、プロトタイプが完成した。これらは、適当な大きさの艦としてガイア型艦に設置されて、直ちにイーターに支配された惑星に向かった。
そのガイア335号艦では、皆川義彦艦長が特設された3次元モニターによる重力波により観測されたイーターの像を見つめていた。この艦には10人ほどの研究者も乗っており同様に同じ像を見つめている。
イーターは惑星表面より約20万㎞上空までを覆っているが、まだ距離的には700万㎞離れた地点に達した段階で、ガイア335号艦をすでに検知したらしくそちらの方に触手を伸ばし始めている。
「実験機射出!」皆川が命じる。実験機には試験動物が乗せられ、ゼータ線バリヤーが巡らされている。実験機は重力エンジンによってまっしぐらに伸ばされている触手に向かうが、明らかに触手は試験機を避ける動きをする。
試験機はイーターの体に突っ込むが、イーターの体に大きな空洞が出来てその中に試験機が突っ込んでいく形になる。
「イーターの侵入はありません」
試験機内の計器をモニターしていた研究者が大声で言う。
試験機は最終的に地上から10万㎞の真空中に停止した。モニターを見守っていた皆は顔を見合わせて「これでゼータ線バリヤーの効果は確かめられたな」と頷きあう。
さらに、実験主任のシーラムム帝国人が命じる。
「ではイーター吸引機をON」
「イーター吸引機をON」
さらに研究者がスイッチを入れる。
試験機の外板のカバーが開いて斥力装置が強力に星間物質、この場合はイーターの体成分を吸引して、ゼータ線炉に投入し始める。
「順調に吸引中、百g、1㎏、あ!大質量の物質が下から接近中」
観測員の叫びに、望遠鏡で見られたそれは大きな岩の塊だ。
「よし、接近中の岩に向けてゼータ線照射砲を最大集束にて発射!」
皆川が命じる。
赤黒い放射が500万㎞の距離から放たれ、イーターの体の位置、地表から20万㎞では直径1㎞のシャワーになって光速で降り注ぐ。その効果は大きく、惑星全体を覆うイーター表面全体が揺れ動き、さらに接近していた岩が落下する。
しかし、さらに巨大な質量の塊が地上から高速で登って来て実験機を巻き込み、さらにゼータ砲の放射に沿ってガイア335号艦を目指す。
「あれは、海水です。質量2百万トン!速度は秒速千㎞、実験機は破壊されました。また、ゼータ砲の放射はあれに遮られて無効化されています」
観測員の叫びだ。
「よし、ゼータ線の集束度を落とせ。あの海水の塊全体を覆え!」
さらなる皆川の命令に復唱する。
「集束度を落とします」
すぐに結果が出る。
「水塊が分裂していきます」
観測員の報告だ。
「やはり、自分の体から離れると力は出せないのだな」
皆川が言い研究員たちは頷く。その後、ガイア335号艦は2日に渡って様々な実験を繰り返し貴重なデータを採取して引き上げた。
この実験によって得られた結果は以下のようなことが分かった。
1) ゼータ線バリヤーは明らかに有効である
2) ゼータ線照射砲はイーターに苦痛らしきものをあたえるが、照射部から極めて素早く体を退けるので継続的な
害を与えることはむつかしい
3) 実験機に積んだイーター吸引機によって三十分で約二十㎏のイーターの体物質の吸引と無効化が出来た。
これは十体の生命力を吸引した際に増加する質量と同等である
4) イーターは、大質量を極めて早く動かせるが、その対象に体を触れている必要がある
5) イーターが、触手を動かす速さは加速度として百Gを越える
6) イーターは、宇宙船の接近には7百万㎞程度の距離で反応を示す
この結果は、デカタル星に持ち帰られ、対策会議が開かれ、ゼータ線という有効な武器が得られたことから最終的な方針が策定された。
結果として、イーターを滅ぼすための最終的な対策としては大容量のイーター吸引機によるものとして、大出力の動力を出せるシーラムム帝国の巨大戦闘艦スムズラス級以上の艦に試験機に設置した容量の1万倍の出力の吸引機を設置することにした。
これで、1秒間に0.1ンのイーターの体内物質を不活性化することが可能なので、百万トンの物質を吸引するとすれば約120日の運転が必要になる。しかし、イーターは物を投げつける等の抵抗をすると考えられるので、巨大戦闘艦にもゼータ線照射砲を設置するほか、ゼータ線照射砲を設置した2隻程度のガイア級程度の護衛を付けることになった。
この吸引機設置戦闘艦として千艦が改修されるが、酸素呼吸人と巨大惑星人のイーターに侵略された惑星数は同程度だったので、それぞれ、シーラムム帝国等の酸素呼吸生物の星間国家が5百艦、巨大惑星人国家が5百艦を改修して用意した。
護衛艦も同様に予備及予想転移予想点のための予備を含めて、酸素呼吸人と巨大惑星人がそれぞれ1500艦を用意した。さすがにこの改修には1年間以上の時間がかかったが、吸引機設置戦闘艦が50艦改修を終わるごとに出動して、イーターに占領された星系の処理にかかることになった。
しかし、最初のロットが完成する前に、転移予想点の1か所に超空間の形成がキャッチされた。現状で準備が整っていた、シーラムム帝国の巨大戦闘艦スムズラス級艦2艦にガイア335号艦を含むガイア型6艦が直ちに出動した。
観測船の誘導に従い、出来るだけの近距離でジャンプから現れた8隻で構成された艦隊は、ちょうど超空間に明けた穴をくぐろうとするイーターをキャッチする。
質量88万トンの体を持つイーターは、すでに体長が百万㎞にも達しており、距離3百万㎞に満たない観測船を感知して触手を伸ばしているが、すでにゼータ線バリヤーを巡らせている観測船には触れすことができない。また、さらに近づいてくる艦体も感知して、激しく体をうねらせて先端が突然消えはじめた。
「超空間が繋がりました!」
ガイア335号艦では観測員が叫ぶ。
「こちら艦隊司令官、シムロム・ジガル中将、全艦、ゼータ照射砲を、最大集束にて今できた超空間開口部に向かって撃て!」
「指示通りに撃て!」
皆川艦長が叫ぶ。
24門のゼータ照射砲が超空間に潜ろうとしているイーターの頭に集中する。イーターはぎりぎりの大きさに明けた超空間の穴に頭を突っ込んでいるため、逃げられずにまともにゼータ照射砲を浴びる。
「イーターの体が分解しています」
観測員が言ったとたん、再度旗艦から連絡がある。
「こちら、艦隊司令官、各艦、未分解のイーターの体を狙え。集束度は適宜変更のこと。スムズラス級艦2艦は最大速度でイーターの体に突入し吸引を開始せよ。ガイア型艦はスムズラス級艦に追い込むように射撃のこと」
これは銀河協議会の構成メンバーが、それぞれ研究結果を取りまとめた頭脳を持っており、それに研究室頭脳が超空間通信を通じてコンタクトして検索できるようになっているのだ。すなわち、研究室頭脳はいわば、銀河協議会の構成メンバーのすべての研究結果について集積されているデータベースをもっていることになるわけで、一番古いデータは十万年以上前のものまである。
その結果、やはりそれに類する研究がいくつも行われており、そうした現象が空間にエネルギーにより空間をゆがめて穴を無理に明けるわけであるため、空間のゆがめる過程が理論的に明らかにされており、そうしたゆがみを直接測定する手法が提示されていた。
しかし、それは超空間ジャンプ・通信は重力または電波で容易に検知できるので、その測定の意味がないということで、そこまでの研究に留まっていた。しかし、この空間のゆがみを測定する方法の提案は、現象そのものを理論的に解明していることもあって理にかなっており、その装置化のために通信・電気・電子等の専門家を集めてマドンナを使うことにより、わずか2週間でプロトタイプが作られた。
これによって、実際の超空間通信、ジャンプを数多く観測し、実際に測定することでモニター装置の改良もされて空間のゆがみが正確に測定でき、いわば3次元での可視化ができることになった。この装置は、超空間測定装置として直ちに量産化され送りだした調査船に出発後1か月後には届けられて、直ちに観測・試験に使われた。
しばらくして、続々と調査船からのデータが届き始めた。想定転移点に送り出した調査船は、当初は待機するのみであったが、超空間測定装置が届いてからは、特異点そのものの測定が行われ始めた。その結果、1点については明らかに自然状態で通常空間と超空間との通り道ができていてエネルギーによる空間に穴を明ける操作なしに超空間ジャンプを行える点であることが分かった。
そして、その1点については、三次元の特異点の穴のマップがつくられたので、より的確な観測が行われることになる。また、超空間測定装置の開発によってイーターに侵された特異点についても調査が行われて、やはり1か所が自然の穴があることが分かったが、他の2か所はそのようなものはないことも分かった。したがって、イーターはモデル上の特異点であれば往来が可能であることから、今選んでいる3カ所の特異点の観測は継続する必要がある。
さらに、十二カ所のイーターに支配されている惑星の調査の結果以下のような結果を得た。
1) イーターの体は非常に密度が低いが宇宙の真空とは明確な境界がある。すなわち、全体に吸引力を働かせて体を構成している物質を繋ぎとめている。
2) この吸引力は集中して極めて大きな力を発揮して惑星表面を改造する力にも使えるし、無人観測機を惑星に引
きずり下ろす力にも使える。
3) 12カ所の惑星表面を覆うイーターの体の連続画像は緩やかに表面が揺れ動いている。それは無人機を近づけ
ると一部を引き延ばして追ってきて、10Gの加速では簡単に追いつかれる。また吸引力等の力はイーターの体
に触れていないと使えない模様であり、一旦そういう状態になると無人機の斥力装置では抵抗不可能。
4) イーターの体に実験動物を乗せた船を近づけると直ちに取り込み、超空間に穴を明けて宇宙船内に入り込ん
で、動物の生命力を吸い取り、そのことで、イーターの体の質量が増す。
5) 熱線・光線照射については効果なし。牽引力、斥力によって体を変形させることは可能であるが、体の物質を
希散させることはできない。
6) 特定の波長の放射線の放射を明らかに嫌がって体を退ける。
以上の結果から、イーターの移動のメカニズムと方法が次のように推論された。
1) 宇宙船内等の物理的に閉ざされた空間に入り込むには、その対象を体に取り込んで壁に超空間の穴をあけて連
続した状態で入り込む。
2) 通常空間の移動は基本的には体を引き延ばして移動する。しかし、その速度は光速を越えないと考えられるの
に移動の速度が明らかに光束を上回っているのは、超空間を経由して体を引き延ばしているせいだと考えられ
る。
3) また、一定の質量を越えると独立して存続できる、すなわち空間を一個の存在として飛翔でき、このような独
立した存在が特異点を使うと大距離を越えることができ、生命を吸収して増殖する。
推論については、マドンナを使ってほぼ正しいことが結論付けられた。
また、イーターが明らかに嫌がる放射線、ゼータ線、が確認されたことから以下の開発が決定された。
1) この放射線を宇宙船のバリヤーとして使うシステム、ゼータ線バリヤーの開発、
2) イーターの体物質を、ゼータ線を放射している炉に吸引するシステム、イーター吸引機を開発、
3) 大出力ゼータ線照射砲の開発
これらの開発が一斉に始まった。マドンナの活用、研究所頭脳の管理・指導及び、大人数の同時並行による作業ですべての開発が2ヵ月で終了し、プロトタイプが完成した。これらは、適当な大きさの艦としてガイア型艦に設置されて、直ちにイーターに支配された惑星に向かった。
そのガイア335号艦では、皆川義彦艦長が特設された3次元モニターによる重力波により観測されたイーターの像を見つめていた。この艦には10人ほどの研究者も乗っており同様に同じ像を見つめている。
イーターは惑星表面より約20万㎞上空までを覆っているが、まだ距離的には700万㎞離れた地点に達した段階で、ガイア335号艦をすでに検知したらしくそちらの方に触手を伸ばし始めている。
「実験機射出!」皆川が命じる。実験機には試験動物が乗せられ、ゼータ線バリヤーが巡らされている。実験機は重力エンジンによってまっしぐらに伸ばされている触手に向かうが、明らかに触手は試験機を避ける動きをする。
試験機はイーターの体に突っ込むが、イーターの体に大きな空洞が出来てその中に試験機が突っ込んでいく形になる。
「イーターの侵入はありません」
試験機内の計器をモニターしていた研究者が大声で言う。
試験機は最終的に地上から10万㎞の真空中に停止した。モニターを見守っていた皆は顔を見合わせて「これでゼータ線バリヤーの効果は確かめられたな」と頷きあう。
さらに、実験主任のシーラムム帝国人が命じる。
「ではイーター吸引機をON」
「イーター吸引機をON」
さらに研究者がスイッチを入れる。
試験機の外板のカバーが開いて斥力装置が強力に星間物質、この場合はイーターの体成分を吸引して、ゼータ線炉に投入し始める。
「順調に吸引中、百g、1㎏、あ!大質量の物質が下から接近中」
観測員の叫びに、望遠鏡で見られたそれは大きな岩の塊だ。
「よし、接近中の岩に向けてゼータ線照射砲を最大集束にて発射!」
皆川が命じる。
赤黒い放射が500万㎞の距離から放たれ、イーターの体の位置、地表から20万㎞では直径1㎞のシャワーになって光速で降り注ぐ。その効果は大きく、惑星全体を覆うイーター表面全体が揺れ動き、さらに接近していた岩が落下する。
しかし、さらに巨大な質量の塊が地上から高速で登って来て実験機を巻き込み、さらにゼータ砲の放射に沿ってガイア335号艦を目指す。
「あれは、海水です。質量2百万トン!速度は秒速千㎞、実験機は破壊されました。また、ゼータ砲の放射はあれに遮られて無効化されています」
観測員の叫びだ。
「よし、ゼータ線の集束度を落とせ。あの海水の塊全体を覆え!」
さらなる皆川の命令に復唱する。
「集束度を落とします」
すぐに結果が出る。
「水塊が分裂していきます」
観測員の報告だ。
「やはり、自分の体から離れると力は出せないのだな」
皆川が言い研究員たちは頷く。その後、ガイア335号艦は2日に渡って様々な実験を繰り返し貴重なデータを採取して引き上げた。
この実験によって得られた結果は以下のようなことが分かった。
1) ゼータ線バリヤーは明らかに有効である
2) ゼータ線照射砲はイーターに苦痛らしきものをあたえるが、照射部から極めて素早く体を退けるので継続的な
害を与えることはむつかしい
3) 実験機に積んだイーター吸引機によって三十分で約二十㎏のイーターの体物質の吸引と無効化が出来た。
これは十体の生命力を吸引した際に増加する質量と同等である
4) イーターは、大質量を極めて早く動かせるが、その対象に体を触れている必要がある
5) イーターが、触手を動かす速さは加速度として百Gを越える
6) イーターは、宇宙船の接近には7百万㎞程度の距離で反応を示す
この結果は、デカタル星に持ち帰られ、対策会議が開かれ、ゼータ線という有効な武器が得られたことから最終的な方針が策定された。
結果として、イーターを滅ぼすための最終的な対策としては大容量のイーター吸引機によるものとして、大出力の動力を出せるシーラムム帝国の巨大戦闘艦スムズラス級以上の艦に試験機に設置した容量の1万倍の出力の吸引機を設置することにした。
これで、1秒間に0.1ンのイーターの体内物質を不活性化することが可能なので、百万トンの物質を吸引するとすれば約120日の運転が必要になる。しかし、イーターは物を投げつける等の抵抗をすると考えられるので、巨大戦闘艦にもゼータ線照射砲を設置するほか、ゼータ線照射砲を設置した2隻程度のガイア級程度の護衛を付けることになった。
この吸引機設置戦闘艦として千艦が改修されるが、酸素呼吸人と巨大惑星人のイーターに侵略された惑星数は同程度だったので、それぞれ、シーラムム帝国等の酸素呼吸生物の星間国家が5百艦、巨大惑星人国家が5百艦を改修して用意した。
護衛艦も同様に予備及予想転移予想点のための予備を含めて、酸素呼吸人と巨大惑星人がそれぞれ1500艦を用意した。さすがにこの改修には1年間以上の時間がかかったが、吸引機設置戦闘艦が50艦改修を終わるごとに出動して、イーターに占領された星系の処理にかかることになった。
しかし、最初のロットが完成する前に、転移予想点の1か所に超空間の形成がキャッチされた。現状で準備が整っていた、シーラムム帝国の巨大戦闘艦スムズラス級艦2艦にガイア335号艦を含むガイア型6艦が直ちに出動した。
観測船の誘導に従い、出来るだけの近距離でジャンプから現れた8隻で構成された艦隊は、ちょうど超空間に明けた穴をくぐろうとするイーターをキャッチする。
質量88万トンの体を持つイーターは、すでに体長が百万㎞にも達しており、距離3百万㎞に満たない観測船を感知して触手を伸ばしているが、すでにゼータ線バリヤーを巡らせている観測船には触れすことができない。また、さらに近づいてくる艦体も感知して、激しく体をうねらせて先端が突然消えはじめた。
「超空間が繋がりました!」
ガイア335号艦では観測員が叫ぶ。
「こちら艦隊司令官、シムロム・ジガル中将、全艦、ゼータ照射砲を、最大集束にて今できた超空間開口部に向かって撃て!」
「指示通りに撃て!」
皆川艦長が叫ぶ。
24門のゼータ照射砲が超空間に潜ろうとしているイーターの頭に集中する。イーターはぎりぎりの大きさに明けた超空間の穴に頭を突っ込んでいるため、逃げられずにまともにゼータ照射砲を浴びる。
「イーターの体が分解しています」
観測員が言ったとたん、再度旗艦から連絡がある。
「こちら、艦隊司令官、各艦、未分解のイーターの体を狙え。集束度は適宜変更のこと。スムズラス級艦2艦は最大速度でイーターの体に突入し吸引を開始せよ。ガイア型艦はスムズラス級艦に追い込むように射撃のこと」
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