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第十話 魔王軍
しおりを挟む「事故武器……ですか」
「はい。こちらの鎧と盾、とある貴族の方が愛用しておられたそうですが、その方が馬車に乗っている際に、Bランク魔物のアークデーモンに襲われ乗っていた方々は全員死亡。遺品である装備を私が親族から買い取ったのですが、この装備を持つと幽霊が出るとか、重い病にかかるとか、そんな噂が絶えなくて、結局売れないからこの価格で売ったのですよ。」
「なるほど、そんな理由が……」
ゴーストとかの魔物ならば別だが、あいにく幽霊なんかのオカルトの部類は信じない。死んだ人がゴーストみたいになるなんて話があるわけない。
「じゃあ買います。」
「はい!毎度ありがとうございます。」
サイズの確認をした後に装備を受け取った。
鋼鉄なだけあって、それなりに重い。
なんとか宿まで運んだ僕は、片手剣の存在を思い出す。
「あっ!忘れてた……まぁいいか。スキル取得の為にどうせ色々な武器使うしな……」
財布の中が寂しくなったので、少しグレードを下げた夕食を食べて、もう今日は就寝することにした。
………この間買った装備を身につけてギルドに向かうと、沢山の人がギルドの大広間に集まっていた。
なんだ?なにか問題でもあったのか?
気になって近寄ってみるとギルド職員の人が説明をしていた。
「今この街には魔王軍が襲来しています。手の空いている中級冒険者以上の方は参加してください。」
魔王軍!勇者が生まれたと聞いたから、そのうち何処かで出てくるだろうと思っていたが、まさかたった2ヶ月で動くとは………
それを聞いた冒険者の1人が質問する。
「じゃあ勇者様や騎士団に倒してもらえばいいじゃねえか」
「それは無理ですね。勇者様も騎士団も遠いから来れないでしょうし、今の勇者様はまだ修行からひと月しかたっていません。レベルも10になったばかりだと聞いています。」
ひと月でレベル10もあるなら凄いと思うが、勇者的には不満なのだろうか
「確認できる魔物のレベルはC~Eランクです。数は300ほどですから、中級冒険者の方なら、慎重に戦えば犠牲なく勝てると思っています。もちろん報酬もはずみますので。」
魔王軍にしては確かに数が少ない。
どの時代の魔王も、襲撃の際には必ず1000以上の魔物を動かしていた。
その言葉を聞いたからか、周りの冒険者の顔色が明るくなる。
「なんだ、それならむしろ美味しい儲け話みたいなもんだ。」
「ああ、昔の魔王はBランク以上の魔物を3000匹連れて、勇者様がその半分を倒したと聞いたぞ。」
「この程度なら俺たち、簡単に勝てそうだな」
この街、ゲルトマにはおよそ1000人の冒険者がいる。その中の300人はまだ下級冒険者だが、(冒険者登録だけはして、ランクを上げない人もいる)残りの700人全員が参加せずとも、その半数でも参加すればまず勝てるだろう。
同じランクの冒険者と魔物が戦ったら8割方冒険者が勝つ。これは装備やポーションの関係上、素の実力が拮抗したらかなりの確率で冒険者が有利になるからだ。
相手は高くともCランク。対してこちらは低くともDランクだ。数の上でもおそらく勝つし、余程のことがない限り負けないだろう。
「あ、じゃあ僕も……」
参加を表明しようとしたその時、
「あ?スキル適正ゴミカス野郎が何言ってやがる。」
またあの冒険者か……と思ったが、違った。
なんとその言葉を発したのはギルド職員だった。
「は?」
「は?じゃねえよ。お前が参加しても意味ねぇんだから邪魔すんなよ」
なんという事か、これが世の中の平等を謳うギルドの職員?世も末だな。
「お前この町で有名人だぞ。スキル適性値Gのせいで、家追い出されて、誰ともパーティー組んでもらえず、犬の散歩とか掃除とか雑用みたいなことやってるってよ」
殴りたい
「どうなんだよ、ゴミが。何とか言えよ。スキルだけでなく耳まで悪いのかよw」
殴りたい
「分かったら、俺らの前に顔を出さずに一生泥水啜ってろ」
殴りたい
手を出そうとしたその時、
「何やってるんですか!ガリシアさん!」
いつものお姉さんがやってきた。
「おお!エクレアさん!今日は僕と口聞いてくれるんですね!」
お姉さんの名前はエクレアというのか、初めて知った。
「そんな事より。あなたスキルで人を判断してはいけないと教わらなかったんですか!大体さっきの物言いはなんですか!いつもお世話になってる町の人に対して……」
お姉さんの説教を渋々聞いていたガリシアは、一応謝罪してきた。
「こ、今回は君が少しばかり無能なばかりに、過剰な指導をしてしまって悪かっ、……申し訳ない」
恥かかせやがって……と睨まれて、完全な逆恨みをされた僕は、お姉さんに免じて一応許してやった。
「もうしないでくださいね」
全く反省してなさそうだからすぐまたやるだろうけど……
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