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第四十四話 峰打ちだ
しおりを挟む「うん、なかなか悪くないぞケイン。その調子で鍛錬を怠るなよ」
勢いよく飛び出したケインだったが、ほとんど勝負にならなかった。
初撃をいとも容易く受け止められると、やはりものすごい速度で斬られた。
なんとか耐えて縮地でさがり、(縮地は左右には行けないが前後、体勢次第では上下にも移動できる)攻撃を見切ろうとした。
しかし、直後に自身の前に現れ、またもものすごい速度で攻撃される。
なんとか数発は捌けたが、パワーでも拮抗していた為手数の差で負けた。
「12秒か……いいぞ、クウガでも10秒しかもたないからな」
「なんだか嫌味に聞こえてくるんですけど…」
「いやいや褒めてるんだよ。君が私と同じくらいになったら、私よりも強くなっているはずだ」
「はぁ……とりあえず頑張ります」
あんな化け物に簡単になれてたまるかい!
試験は明日だというのに、軽く心を折られた僕であった………
………………………………………………
………………………
…………
筆記試験が終わった。
自己採点してみたらケアレスミスが目立ったが、なんとか合格ラインだろう。
筆記が終わり、2時間ほどして実技試験を行うから試験官についてこいと連絡が入った。
ついていった先にあったのは武舞台。
「これより、受験生は持参した武器を用いて教員と1対1の戦いをしてもらう。当然負けたから落ちるなんてことはないから気楽にやれ。ただし気は抜くな。そこんところは間違えるな!」
厳しそうな先生だな……と思っていると後ろからひそひそ声が聞こえてくる。
「そりゃ当たり前だろう。先生ってBランク相当だろ?勝てっこないって」
「つまりどれだけ抵抗出来るかって試験だな……」
全くみんな弱気なんだから。
初めから負けを想定してちゃ勝てるものも勝てないだろうに……
そうして試験は始まった。
「初めは……受験番号701番でなさい」
おっと、いきなり僕だ。
返事をして前に出る。
すると近くの坊主とリーゼント頭がめっちゃ聞こえる声でヒソヒソ話を始めた。
「おい、あいつ弱そうだぜ。あんなひ弱そうな体格で大丈夫なのかよ」
Aランク冒険者なんですけど……
「それにあの装備……ありゃあ鍛冶屋で中古握らされたな……いるんだよたまにああいう値段だけ見て決める馬鹿が」
王家から貰ったものなんですけど……
「流石っすね、テクニさん。見ただけで判断しちまえるとは……」
「まぁ、俺くらいになるとね。経験ってやつかな……」
「カッケェっす。一生ついてきます」
「オラァ!そこ静かにシロォ!」
先生に怒られて黙った坊主とリーゼント。
だが、彼等の今言ったことは周りのみんなの代弁だろう。
みんな興味無さそうな顔をしている。
なら、舐められたままじゃ面白くないよな……
武舞台に上がり剣を構える。
前を立つのは2メートル近くありそうな大男。
「では、構えてください。……準備はいいですね?では、はじめ!」
縮地は使えない。
だが、今の僕なら………
開始の合図と同時に全速力で試験官に近寄る。
彼等からしたら瞬間移動のように見えただろう。
そのまま1秒で12撃入れて終わった。
先生はあちこち叩かれて動けない。
「ちょ、大丈夫ですかクトロ先生!」
もう1人の試験官が近づいてきたので言ってやった。
「安心しろ……峰打ちだ!」
※ケインの剣は日本刀
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