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第八十一話 ネドリアというゴブリン
しおりを挟むケインは四天王であるネドリア相手に20分も持ち堪えた。
ステータスで見ればケインに分があるが、この世界の戦いはどちらかといえばスキルの強弱で決まりやすい。
強力な金属で出来た糸を操り、縮地による接近を防いでくるネドリアは相性がケインとはかなり悪い。
だからこそ、勝てなかったとはいえケインがネドリア相手に20分も耐えたのは寧ろ誇るべき事である。
しかし、現実はそう甘くない。
………………………………
………………
……
「クックックッ、どうやら君の体力は底なしの様だが……集中力も同じ様には行かない様だな、これだけ動き回ればいい加減ミスもすると言うものだな」
事実、先程から避け続けていたケインが攻撃を受ける様になった。
すぐに回復するし、腕を切られても回収してくっつけるので、致命傷にはならないが、ケインの集中力は切れ始め、逆にネドリアはケインの動きを見切り始めた。
「そこだ!」
ネドリアは再度魔力による攻撃を試みる。
「チッ、惜しい」
首を切る事はなかったが、上半身と下半身を真っ二つにしてしまった。
繋がったままだったのでなんとかなったが、これではケインが負けるのも時間の問題だ。
「フッ、何が僕の勝者になるだ!偉そうな事言って、逃げ回るだけじゃないか!」
「ああ、僕1人ではお前に勝つのは無理だったかもしれないな」
本当はケインは1人でも勝てたかもしれない。
しかし、その方法はとても危険でケインの勝率は3割をきる程度にしかない。
ケインは1人で戦うのではなく、エルナとクリフに頼る事で勝率を上げる道を選んだのだ。
もう2人に心配をかけない為に……自分が生きていられる為に……
だから、今追い詰められているこの状況もケインにとっては計算内の事……
「負けを認めたな!じゃあいい加減に死……」
「1人で勝てない事は、お前に負けを認めることにはならないぞ、自分の力を磨くのは大事だが時には仲間と協力することも必要だということだ!」
「負け犬の遠吠えだな、この糸を突破もできないくせに……」
「クッ!」
しかし、ケインもやはり追い詰められている。あと10分なら持つが、それ以上は無理だ。
まだクリフ達の方は完成しないのか?
その時エルナが前線に戻った。
「遅くなりすみません!」
「エルナ!クリフの方は……」
「もう少しで完成するそうです」
「!?そうか、ありがとう」
エルナが前線に戻ったことで、大分状況が良くなった。
もうケイン1人で支える必要が無くなったからだ。
エルナの体力と魔力は無限には続かないが、その前にクリフが来てくれる。
もう何も不安はない。
ただ仲間を信じて待つだけだ。
「何をする気か知らないが、僕の糸は無敵だ!」
「うるさいなぁ、ちょっと黙ってろ。お望み通りお前自慢の糸をボロボロにしてやるよ」
「ケインさん!出来ました!この液体をどうすればいいですか?」
ケインは空気で作った器に作った液体を入れて運んできてくれた。
「よし!それをあの糸に投げてくれ!」
「はい!」
勢いよく宙を舞い、液体は糸にぶっかかった
「何を……」
「エルナ!今ならこの糸切れるぞ!」
「分かりました!」
宣言通り、さっきまでとは打って変わって糸はボロボロになっていた。剣を当てれば簡単に切れるほどに……
「どういう事だ!?何をしたんだ貴様ら!」
僕がクリフに命じて作らせたのは王水だ。
塩酸と硝酸の混合物であり、唯一貴金属を溶かす事ができる。
本来なら色々な器具が必要だが、幸い今はクリフがいる。
「そんな簡単に敵に手の内晒すと思うのかよ。こっちはわざわざ自分の能力やら糸の秘密やらを教えたりする馬鹿じゃないんでな!」
わざと煽る様に言う。
すると、冷静さを失ったネドリアは単調な動きで残りの糸を仕向けてきた。
「今だクリフ!全部の糸に王水をかけてくれ!」
「了解です!」
それによって、全ての糸がボロボロになった。
しかし、まだ襲ってくる。
「残りの糸はエルナとクリフで対処してくれ!僕は本体を叩く!」
そう言って縮地で近寄った。
「フッ……ここまで僕を追い詰めたのは君が初めてだよケインちゃん……いや、君達かな?」
「ああ、僕とエルナとクリフ……そしてガルドの力でここまで来たんだ」
「ほんっとにそういうのウザイなぁ……仲間だの絆だの言ってる連中みんなウザイ……ウザイウザイウザイ!」
「お前が何故頑なに仲間を拒絶するのか僕は知らん。だが、僕が信じた仲間をお前が否定するのなら、僕は僕を肯定する為に全力でお前を倒す(否定する)!」
「ふふふ……君なら僕と同類だと思ったんだけどなぁ。その眼、誰かを見限った眼だと思っていたよ」
「一緒にしないで欲しいな。僕は誰彼構わず見限ったりはしないよ」
「ふん、丁度いいや、僕は身体能力にも自信があるんだ。精々僕の最強を証明しろ!」
そう言うと、彼は加速した。とても目では追えぬ様な速度で……
しかしだ、夏休み前の僕では対処出来なかったが、今の僕なら欠伸が出るようなスピードだ。
「死ね!」
「遅いな」
彼が渾身の振りで僕の首元を狙ったが、そんな攻撃では僕を倒すことなどできない。
完全に見切って、カウンターを食らわす。
「なんだと!?」
「その程度で最強を語るとはな……」
僕の頭にはあの男が思い浮かぶ。
決して負けない……無敵の存在が
「じゃあな。あの世で自分の生き方に反省するんだな!」
今度は僕が加速した。
しかし、その初速は既にネドリアの最高速を越え、遥かに精密な動作で確実に相手の命を奪う。
「あの世で詫びろ!」
ネドリアはバラバラになった。
速すぎる攻撃のせいか、肉の断面は彼が殺した者達の様に、綺麗だった。
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