最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域

文字の大きさ
75 / 192

第八十一話 ネドリアというゴブリン

しおりを挟む

ケインは四天王であるネドリア相手に20分も持ち堪えた。
ステータスで見ればケインに分があるが、この世界の戦いはどちらかといえばスキルの強弱で決まりやすい。
強力な金属で出来た糸を操り、縮地による接近を防いでくるネドリアは相性がケインとはかなり悪い。
だからこそ、勝てなかったとはいえケインがネドリア相手に20分も耐えたのは寧ろ誇るべき事である。
しかし、現実はそう甘くない。

………………………………
………………
……

「クックックッ、どうやら君の体力は底なしの様だが……集中力も同じ様には行かない様だな、これだけ動き回ればいい加減ミスもすると言うものだな」

事実、先程から避け続けていたケインが攻撃を受ける様になった。
すぐに回復するし、腕を切られても回収してくっつけるので、致命傷にはならないが、ケインの集中力は切れ始め、逆にネドリアはケインの動きを見切り始めた。

「そこだ!」

ネドリアは再度魔力による攻撃を試みる。

「チッ、惜しい」

首を切る事はなかったが、上半身と下半身を真っ二つにしてしまった。
繋がったままだったのでなんとかなったが、これではケインが負けるのも時間の問題だ。

「フッ、何が僕の勝者になるだ!偉そうな事言って、逃げ回るだけじゃないか!」

「ああ、僕1人ではお前に勝つのは無理だったかもしれないな」

本当はケインは1人でも勝てたかもしれない。
しかし、その方法はとても危険でケインの勝率は3割をきる程度にしかない。
ケインは1人で戦うのではなく、エルナとクリフに頼る事で勝率を上げる道を選んだのだ。
もう2人に心配をかけない為に……自分が生きていられる為に……
だから、今追い詰められているこの状況もケインにとっては計算内の事……

「負けを認めたな!じゃあいい加減に死……」

「1人で勝てない事は、お前に負けを認めることにはならないぞ、自分の力を磨くのは大事だが時には仲間と協力することも必要だということだ!」

「負け犬の遠吠えだな、この糸を突破もできないくせに……」

「クッ!」

しかし、ケインもやはり追い詰められている。あと10分なら持つが、それ以上は無理だ。
まだクリフ達の方は完成しないのか?
その時エルナが前線に戻った。

「遅くなりすみません!」

「エルナ!クリフの方は……」

「もう少しで完成するそうです」

「!?そうか、ありがとう」

エルナが前線に戻ったことで、大分状況が良くなった。
もうケイン1人で支える必要が無くなったからだ。
エルナの体力と魔力は無限には続かないが、その前にクリフが来てくれる。
もう何も不安はない。
ただ仲間を信じて待つだけだ。

「何をする気か知らないが、僕の糸は無敵だ!」

「うるさいなぁ、ちょっと黙ってろ。お望み通りお前自慢の糸をボロボロにしてやるよ」

「ケインさん!出来ました!この液体をどうすればいいですか?」

ケインは空気で作った器に作った液体を入れて運んできてくれた。

「よし!それをあの糸に投げてくれ!」

「はい!」

勢いよく宙を舞い、液体は糸にぶっかかった

「何を……」

「エルナ!今ならこの糸切れるぞ!」

「分かりました!」

宣言通り、さっきまでとは打って変わって糸はボロボロになっていた。剣を当てれば簡単に切れるほどに……

「どういう事だ!?何をしたんだ貴様ら!」

僕がクリフに命じて作らせたのは王水だ。
塩酸と硝酸の混合物であり、唯一貴金属を溶かす事ができる。
本来なら色々な器具が必要だが、幸い今はクリフがいる。

「そんな簡単に敵に手の内晒すと思うのかよ。こっちはわざわざ自分の能力やら糸の秘密やらを教えたりする馬鹿じゃないんでな!」

わざと煽る様に言う。
すると、冷静さを失ったネドリアは単調な動きで残りの糸を仕向けてきた。

「今だクリフ!全部の糸に王水をかけてくれ!」

「了解です!」

それによって、全ての糸がボロボロになった。
しかし、まだ襲ってくる。

「残りの糸はエルナとクリフで対処してくれ!僕は本体を叩く!」

そう言って縮地で近寄った。

「フッ……ここまで僕を追い詰めたのは君が初めてだよケインちゃん……いや、君達かな?」

「ああ、僕とエルナとクリフ……そしてガルドの力でここまで来たんだ」

「ほんっとにそういうのウザイなぁ……仲間だの絆だの言ってる連中みんなウザイ……ウザイウザイウザイ!」

「お前が何故頑なに仲間を拒絶するのか僕は知らん。だが、僕が信じた仲間をお前が否定するのなら、僕は僕を肯定する為に全力でお前を倒す(否定する)!」

「ふふふ……君なら僕と同類だと思ったんだけどなぁ。その眼、誰かを見限った眼だと思っていたよ」

「一緒にしないで欲しいな。僕は誰彼構わず見限ったりはしないよ」

「ふん、丁度いいや、僕は身体能力にも自信があるんだ。精々僕の最強を証明しろ!」

そう言うと、彼は加速した。とても目では追えぬ様な速度で……
しかしだ、夏休み前の僕では対処出来なかったが、今の僕なら欠伸が出るようなスピードだ。

「死ね!」

「遅いな」

彼が渾身の振りで僕の首元を狙ったが、そんな攻撃では僕を倒すことなどできない。
完全に見切って、カウンターを食らわす。

「なんだと!?」

「その程度で最強を語るとはな……」

僕の頭にはあの男が思い浮かぶ。
決して負けない……無敵の存在が

「じゃあな。あの世で自分の生き方に反省するんだな!」

今度は僕が加速した。
しかし、その初速は既にネドリアの最高速を越え、遥かに精密な動作で確実に相手の命を奪う。

「あの世で詫びろ!」

ネドリアはバラバラになった。
速すぎる攻撃のせいか、肉の断面は彼が殺した者達の様に、綺麗だった。






しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

処理中です...