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第八十二話 最後に見たのは
しおりを挟む「まさか僕がやられるとはね…」
体がバラバラにされても生きている。
コイツ……まさかアンデッド系か!?
そう思い再度警戒する。
「安心しろよ……僕は別に不死者じゃない。ただのダークゴブリンだ。生命力が高いだけ…直に死ぬさ……」
敵の言葉を信じすぎるのも良くないが、もうコイツが嘘をつくと思えない。それは根拠なんか無く直感でそう感じた。
「お前…ダークゴブリンだったのか」
見た目が随分かけ離れているが……?
「ははっ……お前ら人間は知らないかもしれないが……僕達魔王軍の中でもね、下っ端扱いされてる奴らは奴隷の様な日々さ……毎日毎日上官のご機嫌取り……気に入らなければ簡単に殺される……そんな気分だけで何人の仲間が殺されていったと思う?」
「……」
「ある時ね……親友だと思ってた奴がさ、僕の事を売ったんだ……そいつは不正を僕に押し付けた……僕は魔王城に連れて行かれた。厳しい処罰だったよ……何度も抵抗したが歯が立たなかった……その時の上官の顔は今でも鮮明に覚えてるよ……」
「それでか、仲間を信じられなくなったのは」
「ああ、……ケインちゃん?お前だって同じだぜ……いつ仲間が裏切るかなんて……分からないんだ」
「……お前はその不正を押し付けてきた奴に復讐したのか?」
「出来なかったさ……僕の力が認められ、四天王になった後、故郷の村に復讐に向かっても……アイツはいなかった」
「ダークゴブリンって進化するとゴブリンロードになるよな?」
「…そうだが?」
「ひょっとしてお前の出身ってザルガドリズの近くか?」
「何故知っている!?」
「僕の出身の街の近くに……ゴブリンやダークゴブリンが大量に住み着いている森がある……5年ほど前の話だが、その時に大きめの集落を落とす話が出た……」
「!?」
ゴブリン達はともかく、ダークゴブリンは誇りを忘れない。敵前逃亡など絶対にしない。
だが、あの時は騎士団も来ていたし、戦力差は絶望的だった。
コイツの親友は将来四天王になる器のネドリアを生かす為に、わざと不正を告発したんじゃないか?
魔王軍に連れて行かれればそのまま騎士団達と戦うよりかは生き残れる確率が高い。
「じゃああいつは……」
血塗れのの顔で泣くネドリア。
血と混ざって涙の色は真っ赤に見える……
そのままネドリアは泣き続けた。
幼い頃に戻った様に………
可哀想だとは思わないが、同情はしてやるよ……
「最後に一つ良いことを教えてやる。お前王都は今どうなっていると思う?」
「まさか!?」
「そうさ……四天王の炎孤のクーデルがそっちに行った……今頃は手遅れだぜ」
「そんなはず……王都にはオルトさんがいるんだぞ!」
「そのオルト・メキナは遠征に出ていて居ない……今頃は最後の四天王に殺されているかもな……クックックッ最後にお前のそんな顔が見れて良かったぜ……」
そう言うとネドリアは事切れた。
「早く戻るぞ!」
「「はい!」」
黙って見ていたエルナとクリフが返事をして。
僕は王都の方角へ縮地をした。
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