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第百一話 我儘王子
しおりを挟む旅に出た僕達はまず町の周辺にいるウルフを倒すことにした。
ウルフとは、Dランク魔物に相当するそれなりに強い魔物だ。
僕とエルナにとっては敵ではないが、クリフは戦い方が独特だし、第一王子の実力を知っておく意味でもウルフ退治は丁度いいだろう…
そう思ってウルフ退治を提案した。
エルナとクリフは賛成だったようだ。
「最近体を動かしていませんでしたし、リハビリ代わりとしてウルフは最適ですね」
「僕も特に反対はないです」
しかし、ここにリヒトが不満をあげる。
「でもウルフってDランク魔物だろ?そんな弱い魔物ではリハビリになんかならないじゃないか。僕はAランクのドラゴンとかを討伐したいのだが……」
コイツ舐め腐ってる。
そもそもAランクの魔物なんて滅多に現れないし、現れたら小国では対処出来ずに壊滅するかもしれない。
事実、この間のテクストも国を落としかけた。
Dランクの魔物だって、本来何年も冒険者をやっている熟練者が倒すような強敵だが、王子様には時々BランクやAランクの魔物を倒した報告しか届かないからか、Dランクを低いと思っているようだ。
仕方がないからここで勘違いを正してやろう。そう思っていたら付き人が説明を始める。
「あの、リヒト様?Dランクの魔物というのは本来とても強いのです。リヒト様にとってはあまり強敵でもないでしょうが、この者達には苦しいのでしょう。ここはリヒト様が合わせてやっては?」
なんか馬鹿にされている。
イライラが収まらないが今は置いておこう。
「ハハ、そうであったな、僕が優秀である事をすっかり忘れていたよ……おい、今日はウルフで勘弁してやる。さっさと行くぞ」
「王子様、その前に冒険者登録をしないといけません」
「む?ああ……あの平民共がしている奴か………まあ良かろう、それはどこで出来る?」
「町の中にありますので早速行きましょう」
僕達は王子と付き人に振り回されて冒険者ギルドに行くことになった。
冒険者には誰でもなれるので、すぐに登録が完了したようだが、王子は不満があったようで受付の人間に怒っていた。
「何故王子である僕がFランクなのだ!納得がいかんぞ!責任者を呼べ」
僕とエルナとクリフはAランク、しかし、パーティーで1人だけFランクなのが嫌だったのだろう。
だが、冒険者に身分は関係ないので皆んな当然Fランクからのスタートだ。
それにケチをつけるとは……
同じパーティーであるこちらの身にもなって欲しい。
ランクのアップが不可能な事を知るとリヒトがクリフの元に寄ってきて難癖つけ始めた。
「王子である僕がAランクでないのは絶対におかしい!お前のような平民にはAランクなんて肩書き不要だろう!僕に寄越せ」
頭が悪すぎる。
ランクというのは強さが追いついて初めて名乗れるものなのに、肩書きとして利用しようとしている時点でリヒトは理解していない。
そもそも誰かにあげられるものでもないのにだ。
流石に付き人が静止してくれたがこれもまた腹の立つ内容だった。
「王子様、ギルドというのは無能な事にランクアップは依頼をこなす事でしかあげてくれないのです。しかも人のランクを譲渡する事も不可能、偉大な貴方様がそれに付き合う必要は無いですが、王子様が大人の対応をされても良いのでは?」
当たり前だろうと言いたくなる内容だが、王子は今まで欲しいといえばなんでも手に入ったし、一つしかないなら人から奪えばよかったからか、この制度は意外だったようだ。
「仕方ないな、僕が大人になるとしよう。どうせすぐにSランクになるわけだしな☆」
その後、僕達はウルフ討伐の為ウルフが出るという平原に向かった。
僕とエルナは剣だけで簡単に倒すことができた。
それを見て王子は誉めていた。
「良いぞ!中々のスピードだ。君達はスキル適性はいくつなんだ?ちなみに僕はBだ」
「……私はAですが」
「おお!流石は勇者だな!ケインはどうなんだ?」
「Gですけど何か?」
「Gか、そうか……ん?なんだと?G!?……フフフ、まさかその程度の実力で四天王を討伐出来たとは………これは本当に魔王討伐は楽そうだな☆……ところでクリフ、君はウルフ相手に手こずっていたようだが、そんなんで大丈夫か?パーティー抜けた方がいいだろ」
「あ、すみません…」
クリフが落ち込んでしまった。リヒトは一通り罵った後、自分もウルフ退治をしようとする。
しかし、全然勝負にならない。
まったくウルフの速さに対応出来ずに一方的な戦いになった。
ウルフにボコられて、怪我をした時に彼はこう言った。
「何してる!?早く僕を助けろ」
まったく……あんだけクリフに偉そうにしていたくせに。
僕は石を投げてウルフを倒す。
「はぁはぁ……おいお前達、ウルフを瀕死の状態にして僕の前に持ってこい!それでトドメを刺してレベルを上げる」
なんだそれ……寄生もいいところじゃないか。
「なんだ?僕に逆らう気か?僕はお前達平民如きどうとでも出来るんだぞ!」
仕方なくウルフを瀕死にしてリヒトの前に運ぶ作業が続いた。
当然皆んな納得がいかない様子だった。
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