110 / 192
第百十六話 魔王の正体
しおりを挟む僕達はサキュバスを倒した。
それを見て魔王がようやく重い腰を上げた。
そして魔王は斬りかかる。
クリフに……
僕が庇ったお陰で死なずに済んだようだが、受けていたら間違いなく死んでいた。
魔王はネドリアように糸を出して攻撃してくる。
更に、クーデルのような炎まで使ってきた。
その全てを僕は投擲や剣で相殺する。
魔王とは数分間打ち合った。
魔王の攻撃は一撃がとてつもなく重く、今の僕が受けても一瞬倒れそうになるほどだった。
「なんて戦いなの……」
「まったく目で追えないです……」
エルナとクリフはその戦いに参入すら出来なかった。一年半自分たちなりに努力したというのにそれでも無力……
2人はとても耐えられなかった……
ケインは魔王といい勝負をした。
どちらが勝ってもおかしく無いほどに速く重い攻撃を当て続けて、クリフは衝撃波で気を失いそうになっていた。
更に戦いは進み、魔王城はもはや原型を留めてはいなかった。
すると、魔王はエルナに向かってダークレイを放つ。
ケインは縮地でエルナの事を庇った。
いつもなら回復スキルで回復できるはずなのに、ダークレイによる闇が心臓につき刺さっていて抜けない。
このままでは死んでしまう。
エルナは嘆いた。自分はいかに無力なのだ……と。
初めて会った時からケインとは対等の友達であったが、その裏でいつもケインには勝てない。自分に何かあってもケインならなんとかしてくれる。と頼ってしまっていた。
その結果、最終局面で自分を庇ってケインが死にかけている。
「ケイン!ケイン!起きて……ごめんなさい…私のせいで……こんな事に」
「はぁ……気に……すんなよ。この戦いも僕が先走ったせいで起きちまったんだ……僕は…死ぬ……けど、あいつを倒してくれ………」
「そ、そんな……」
「ケインさん!あなたはいつも強敵にあってもどうにかしてきたじゃ無いですか!あなたなら勝てますよね!きっと……」
しかし、エルナが抱くケインの体は既に人の温もりが無くなっていた。
死んだのだ、ケインは。
「ふむ、厄介な者が消えてくれて助かった。これであとは腰抜けと出来損ないの勇者のみか」
「……私は、自分が許せません」
「そう気に病むな少女よ。人生というのは上手く行くことの方が少ない。自分には戦いの才が無かったと今世は諦めて、来世に頼ると良い」
魔王は闇の剣をエルナに向ける。そこから放たれるダークレイによってエルナも殺される……と思ったら、前にクリフが出てきた。
エルナを庇ったのだ。
「クックックッ……本当に愉快な者よのう。民を守るべきである勇者が守られてばかりでは無いか!」
エレナは涙を流す。しかし、泣きはしなかった。
「私に……もっと力があれば!」
エルナの叫びに応えるように光が集まりエルナの中に入っていく……
「な、なんだ!この光は!勇者よ、何をした!」
「分かりません……でも!」
エルナは初めて手に入れたその力をどうするのか本能的に感じて発動する。
光はケインとクリフを包んで、彼等の傷を癒した。生き返ったのだ。
「ガーデンライフ!」
「こ、これが勇者の力……死んですぐとは言え、死者を蘇生させる事ができるとは……」
目を覚ましたケインとクリフはエルナを見ると目を丸くした。
「あれ?僕は死んだ筈じゃ……」
「なんで生きてるんでしょう?」
エルナは笑った。涙ながらに。
「まぁ良いか。あいつを倒そうぜ2人とも」
「「はい!」」
「ふむ……勇者達よ、、中々やるではないか。どうだ?今我の仲間になればこの世界の半分を……」
「なぁ?いい加減その喋り方やめたら?」
ケインはいくらか怒った口調で喋りかける。魔王はさして驚くでもなく少し考え込む。
「いや~まさかバレてるとは思いませんでしたよ。いつからですか?」
「最近かな。ステータスが上がってきたお陰で精神干渉の効果が弱くなったみたいだ」
「成る程……まぁ、いつかバレるかもとは思ってましたよ」
「その喋り方……そ、そんな筈」
エルナとクリフは考えたく無いようにし始める。
しかし、魔王がその漆黒の兜を外したことで2人ともようやく理解したようだった。
「魔王の正体はお前だったんだな……ガルド!」
「………どこから気づいてたんですか?」
「違和感を感じたのはだとけっこう前からだ。でも確信を得たのはつい最近。闇魔法なんて使えるのは実は魔王しかいない。闇魔法とは本来勇者の光魔法と対をなす魔法だからな。しかし、僕達はそれに気付きもしなかった。お前がテクストの精神操作を使って意識出来ないようにしていたんだな?エルナが初めて会った時に様子が変だったのもお前が干渉したからだろう?」
「そうっすよ、一から説明してあげましょうか?」
「ああ」
そして魔王もとい、ガルドは語り始めた。その過去を……
2
あなたにおすすめの小説
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる