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外伝17話 手
しおりを挟む「早くしなよ。僕は気が長く無い」
「デハミセヨウ……」
そう言って孝勇が取り出したのは魔法の杖。
「それは……」
「コレ、アスタルテ様カラモラッタ」
孝勇が持っている杖はケインの星でよく使われている魔法の杖だ。そのタイプはかつてケインが使っていた盾と同じく、魔力を込めることで予め設定された魔法が使えるというもの。
「それがどうした?ただの魔法で僕を倒すのは厳しいぞ」
「ワカッテイル……コレナラドウダ?」
孝勇は、杖に魔力を込め始めた。しかし、その魔力量が桁違い。明らかにケインより多い。
「……なるほど、お前の場合無限に再生するから魔力器官(魔力を貯蔵する体内器官)を破壊し続ければ魔力も無限ということか」
孝勇は、常に全身から魔力を吸い上げ、杖に送り続けている。身体は無茶な魔力放出に耐え切れず、魔力器官が破壊されるが孝勇の場合無限に再生するので、使った側から魔力も一緒に回復するということだ。
一見強そうに見えるこの戦法の弱点は、魔力のチャージにかなり時間が取られることだ。
その間無防備な姿を晒してしまうが、孝勇は不死者だから問題はそれでは無い。その間に杖を奪われないか?ということである。つまり、孝勇にとって、この戦いは杖を守れるか否かである。しかし、ケインは攻めてこない。
「ナゼ、セメナイ?」
「お前の全力を受けてみたい」
「……コウカイスルゾ」
「かもな」
ケインは久しぶりに気分が昂っていた。ソラとの戦闘の時も、『狂化』こそ使ったが、あれは戦闘を確実に終わらせるためであり、使わなくても勝てるには勝てたのだ。そういう意味では、ガルド戦以降、ケインは全力を出せていない。
(……いつからだろうか?自分がこんなにも戦闘狂になったのは)
ケインは疑問に思っている。元々こんな性格ではなかった気がするが、最近は何だか戦いそのものを楽しんでいる。特に、因縁の無い戦いは久しぶりで後草れなくできる事に喜んでいるのだ。
(多分……考えが変わったのはアイツのせいだろうな……)
その時、孝勇がチャージをやめた。これ以上は杖が持たないと判断したのだ。
「終わったか?」
「アア。カクニンスルが、良インダナ?」
「来い、止めてやる」
「……ファイヤブラスト!」
孝勇の杖から小さな炎が噴き出る。しかし、その大きさとは裏腹に、威力は桁違いだ。それを見たケインが、すぐに『狂化』を発動する。
「『狂化』、25%!」
剣を前に突き出して、構えた。
炎はケインの剣に真っ直ぐぶつかり、溶かし、貫通する。その一撃をケインが生身で受け止めて……爆発した。
「ハァッ……ハァッ……倒……シタ?」
そう思ったが、ケインは立ち上がる。
「危なかったよ。咄嗟に『狂化』を80%にまで引き上げた。もちろん制御出来ないからすぐに解除したが、焼き払われることは無かった」
「クソ……オレの負ケデイイ」
「何でだ?まだ僕はお前に傷ひとつ付けてねえぞ」
「ドノミチ、アレデ倒セヌノナラ、ゼッタイニ勝テナイ」
「でも、僕だってお前を殺す方法は思いつかないぜ?倒す方法ならあるけどな」
「?」
「例えば、お前を太陽の真ん中に連れて行く……とかだな」
それを聞いて孝勇はゾクッとした。
「な、な、ソレハヤメテ!死ナナイカラ!」
「だろうな、例え太陽に焼かれようがお前は死なない。だから、お互い倒せないし引き分けで良くね?」
「ダガ……オレはアノフタリニ……アスタルテ様ニ……」
「お前さ、無理やり付き合ってるだろ?分かるよそれくらい。人を殺したくないって態度が出てるもん」
「ソ、ソンナコト……」
「それと、その片言もやめて良いぞ。聞きにくいから」
「……気付いてたのか」
「いや、下手くそだもん。おおかた心が無いからって理由で理解力を乏しくして、人殺しが上手くいかない理由にしようとしてたんだろうが、多分あんま意味無いぞ」
「……でも、俺にはソラと圭吾が……」
「お前を見捨てて逃げたあの二人に……まだ固執するのか?」
「違う!……ただ、怖いんだ。報復が」
「なら尚更問題ねえよ。僕ですら殺せないお前をアイツら如きに倒せるか。安心しろ、僕が守ってやる」
ケインは手を差し出す。
「……あり…がとう」
差し出された手を、孝勇は受け取った。
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