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外伝23話 圭吾と恭弥
しおりを挟むエルナが誘拐された頃、地球ではケインとアスタルテが全力で戦っていた。
エルナの話を聞かされたケインは怒りが抑えきれず、腰の件に手をかけてしまったのだ。それを見逃すアスタルテでも無い。
「おい、今すぐ僕達から手を引け。今ならまだ許してやる」
既に数名の死者が出ている以上ケインは見逃す気もなかった。アスタルテとしては、ソラ達に地球人の中から有望な人間を探させて、魔王討伐以降行方不明であったケインのスペアにしておくつもりだったのだ。だが、その過程で大量虐殺をしてしまったのはソラ達の暴走だ。ケインはそれを知ってもアスタルテの事を許しはしないだろう。だが、対峙して瞬時にレベルの違いに気づいた。これはケインが頑張っても勝つのは厳しいと……
故に、今自分達から手を引いてくれれば今までの事には目を瞑るという意味になってしまったのだ。
ケインにとってこれは、完全な敗北では無いものの敗北に近い。
一度倒すと決めた人間を見逃すのは自分のよしとするところでは無いからだ。
一方、アスタルテとしてはソラ達の暴走で起きてしまった大量虐殺により、ケインが怒っている状況が好ましくなかった。
子供を作ってもらう以上、無理矢理というわけにもいかず、なし崩しとは言え同意は得たかったのだ。だが、ケインの心は正義そのものでは無いにしろ、悪意に満ちた行為に対して怒りを向ける程度には常識的だ。今のままだと同意は不可能だろう。
「すまんが……それは出来無いな.悪いとは思うがこの件からは手を引けない。だが、以降君が望むなら誰も殺さないし、望む物は何でもあげよう。君は新時代の神……その妻となれんだ」
「あんまり馬鹿にするなよ。そんな条件を飲むと思ったか?」
「そうか……ならばこうしよう。ここで戦って買った方の言うことを聞く。君達が勝てば僕達はこの件から手を引き、君達の前にはもう現れない。僕達が勝ったら君達は計画を手伝う。良いね?」
「……良いぜ。戦って言うこと聞かせるってんなら望むところだ」
こうして、ケインはアスタルテと、
孝勇はソラと
恭弥は圭吾と戦う事になった。
………………………………
………………
……
戦闘が始まり、2組はほぼ拮抗した勝負をした。孝勇対ソラ、ケイン対アスタルテだ。
この2組に関しては実力差があまり無い。能力的にも身体能力的にも似た感じである為決め手にかける。更に言うなら、ケインと孝勇は回復力が凄まじい為若干の劣性くらいなら持久戦に持ち込んで勝ててしまうから、尚更勝負は長引いてしまう。
逆に、恭弥と圭吾……この組は、明らかな実力差があった。
戦闘が始まってから、圭吾がナイフを投げつづける。
一度投げられた物は絶対命中の効果が乗ってしまうので、避ける事は不可能。故に、先に圭吾に魔術を撃ち続けて、致命傷を与えなければいけないのだ。ナイフのダメージ的には魔力が込められており、単なるナイフよりかは殺傷能力が高いが、急所以外の場所なら回復魔術で何とかなるレベル……だから、当たる前に少しずらす事で恭弥は何とかしていた。
しかし、体に刺さるナイフは増える一方で、このままでは負けてしまう。
「ふん、そんな戦い方ではおいらに勝てない。さっさとお前を殺してケインにリベンジさせてもらおう」
「……」
「どうした?反論しないのか?雑魚め。本格的に相手をする価値がなさそうだ。大体貴様のような木っ端如きの為においらが……」
「ああ、もう!うるせえなぁ!」
「!?」
「今集中してるんだから静かにしろ!」
「ちっ……なんだこいつ」
その直後、恭弥に当たりかけたナイフに、ギリギリで魔術を当ててみせた。
そして、ナイフは綺麗に破壊され、恭弥にナイフは刺さっていなかった。
「お前……」
「ようやく出来た。お前が話しかけてくるから時間かかっただろ」
圭吾の投げたナイフは途中で他のものにぶつかりかけても自動で避けてしまう。だから恭弥は、ナイフの先っぽが自分の体に触れた瞬間に横から魔術を叩き込んだのだ。
「ふぅ……じゃあこっちも持久戦と洒落込もう」
「面倒くさくなってきやがった」
いくつかの魔術を試してみた結果、ギリギリナイフを破壊出来て、魔力を抑えることの出来る魔術が『クリスタルバレット』であった。
この魔術でナイフを破壊し続けるが、恭弥の魔力量は多く無い。
尽きるのも時間の問題であった。
更に悪い事に、破壊されたナイフにも、一応は追尾機能が残っており、刺されるほどでは無いにしろ、破片でちょっとしたダメージを受けてしまう。
「どうした?先程は持久戦がどうのと言っていたが、終わりのようだな」
「……クッ、畜生。反則だろそんな力」
「ははは、ようやく負けを認めるか?まあ所詮地球の単なる高校生だ。にしては頑張ったと褒めてやる。トドメだ」
圭吾は、温存していた魔力を解放してナイフに込めた。
今までは全魔力の0.5%を込めていたが、このナイフは違う。15%の魔力を込めて、恭弥を殺すつもりで撃ったのだ。もはや急所以外に当たろうが死ぬ。運が良くても重症だろう。
「さよならだ」
その言葉と同時に、ナイフは圭吾の手から離れた。
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