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外伝60話 『黒色の世界』
しおりを挟む「シム……いくらあんたが強くてもね、アタシはあんたの好きな様にはさせないよっ」
そう言って神鈴木はドームを展開する。
そのドームは半透明で、所々光り、シムを包み込んでいた。
「HAHAHA……これは?」
「アタシのオリジナルスキルで作り出した『不可侵領域』さ。中と外が完全に隔絶されてアタシの許可なしには出られない……あんたがどうやって灰色の世界から出たか知らないが、ここからの脱出は諦めな」
「NO、脱出する必要はない。ワタシはね」
「は?」
「HAHAHA、まだ気づかないですか?足元を見てみると良いですよ?」
「なっ!?」
いつの間にやら、神鈴木の身体は粒子となって消滅し始めていた。
「くっ!こんな物!アタシの無効化能力で……」
「NO、無駄です。それはワタシが貴方の『灰色の世界』をヒントに作り出した別の能力、あえて名をつけるとすれば『黒色の世界』。効果はほぼ同じですが、誰でも自由に入る事が出来るという制限の代わりに出る事は難しい」
「何を……」
「その上、このスキルは無効化スキルの効果を受けにくい。そうなる様にワタシが『全能神』の効果を使って改造したのでね……」
「やめっ」
「NO、暫くさよならです。鈴木」
その言葉を最後に神鈴木はこの世界から消し去られた。
知っての通り、この世界で最強は神鈴木である。それは揺るがない。
例えシムがどれだけ強くなろうと、神鈴木に勝つ事は不可能に近い。
だが、少しの間拘束する事なら今のシムならばどうにか出来る。
その為に作ったのが『黒色の世界』である。
これは、『灰色の世界』の上位互換能力では無く、むしろ下位互換の能力だ。
消費する魔力量も莫大であるし、相手を強制的にその世界に引き込むのも制限がかかる。
マスター権限もアクセス権限も無く、入るだけならその気になれば誰でも出来てしまうのだ。
だが、問題は出る方である。
ここまでの制限を設けたが、無効化スキルを持つ神鈴木なら脱出に数分程度しかかからない。
だが、仮に鈴木が元の世界に戻ってきたら、同じ手は二度食わないであろうから、今度こそシムの封印は免れないのだ。
逆に言うと鈴木でも数分は動けないと言う事……
これ以上のチャンスは恐らく今後来ない。
そう考えたシムはこの策を実行したのだ。
「YES、計画通り。あとは貴方達を始末すれば終わりです。戻ってきた鈴木には絶望してもらいましょうか」
まずルーナが殺された。
なんということもない単なる蹴りであった。
しかし、そのあまりの速度にルーナは対応する事が出来ず、思いっきり頭を吹き飛ばされた。
ステータス平均200万もあるルーナがである。
ガルドを除いた他の者はその事実に気付くことすら出来なかった。
否、唯一気づいたガルドも何かをされたという事しか分からなかったのだ。
ガルドはすぐさま『ベンタブラック』の発動をしようとする。
「ベン…」
だが、遅すぎた。
「今の貴方はケインでは無くガルド……ならばこれも通じるでしょう『即死』!」
「しまっ!」
ガルドに向けて放たれた即死。
体はケインであるが、魂はガルド故、恐らく今の状態なら2人とも死ぬ。
良くてガルドの意識の消滅である。
だが、それを咄嗟に救ったのは孝勇であった。
反応出来たわけではないが、身体が勝手に動きガルドを庇ったのだ。
結果、『即死』は孝勇に当たった。
本来『不死』の効果を持つ事によって死ぬ事はない孝勇……
だが、何か異変があったようだ。
「あ、頭が……」
頭を抱えて苦しんでいる。
「な、孝勇に何をしたっすか!」
「別に……『即死』を改造して無効化スキルに対する対抗手段にしただけです。しかし……驚きました。まさか『全能神』で改造した『即死』が防がれるとは」
どうやら、孝勇は後遺症で頭痛がするようだが、スキルの相殺には成功したようだ。
しかし、これでは最早戦力にはならない。
「孝勇!早く逃げてくれっす!」
「NO、逃げるとここにいる全員を皆殺しにしますよ」
シムは悪辣に笑う。
どうやら、戦闘力ではシムに適う者はいないと分かり、安堵した様である。
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