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#4 先輩の家に誘われて
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週末、ルームメイトの海璃ちゃんに見送られて寮を出発した。集合場所はまさかの空の宮駅北口だった。
駅前商店街が北へ伸び、終点で国道とぶつかる。それ以外にはスポーツジムとかマンションとかが立ち並ぶ、地方の駅って感じの場所なのだが……。
「あの、青木先輩……白石先輩の家って」
「あのマンションの一室だよ」
駅直結の高層マンション、エレベーターすら広く、私、青木先輩、武藤先輩、黒崎さん、みどりちゃんとももかちゃんの六人で乗ってもまだ余裕がある。
「武藤先輩、大荷物ですよね」
「これ和菓子の永木庵の詰め合わせ。ほら、久遠ちゃんの出すケーキってクセがあるから」
私はわりと好きだが白石先輩のケーキはやはり好き嫌いが分かれるらしい。
「いらっしゃい。どうぞ上がって」
白石先輩は白いブラウスに淡いグリーンのロングスカートと、たいへん清楚な恰好をしていた。本当にお嬢様なんだなぁと場違いな感想を抱いてしまう。
「……なんだか物が少ない」
お金持ちの家ってもっとごちゃごちゃしているイメージがあったが、通されたリビングにはダイニングセットとソファ、大きなテレビとブルーレイレコーダーとゲーム機の入ったテレビ台があるくらいだ。
「テレビ、大きい……何インチあるんですか?」
「うーん、65インチだっけかな。正直大きすぎてソファでは見ないね。ダイニングから見るくらいでちょうどいいもの」
確かに、ソファからテレビまで1メートルちょっとくらいの距離だが、その距離ですら近く感じるほど画面が大きい。まだ何も映していないテレビを見ていると、青木先輩がリモコンを操作して地上波のニュースを流し始めた。
「この家、何がすごいかってデジタルチューナーがそこにあるだろ? BSとかCSを見るための。プランが何通りかあって見られるチャンネルに差があるんだけど、一番上のプランに入ってるからどのチャンネルでも見られるんだよ」
そう言って番組表を開くと、確かにそこには邦画、洋画、時代劇、韓流ドラマ、アニメ、音楽ライブなどありとあらゆる専門チャンネルすら視聴可となっていた。
「そして何とAVも見られる」
そう言って先輩がチャンネルを合わせると、画面にはコトに及んでいる男女の映像が流れる。
「ちょ、ちょちょ!! 先輩の家族とかいないんですか!?」
「大丈夫だよ~。妹連れて舞浜に行ってるから」
夢の国!!
「あそこ行ったほーが休みはじゅーじつするのに。しろ先輩、あほだよね」
「みどりちゃん!!」
毒を吐くみどりちゃんと、彼女を窘めるももかちゃん。正直に言えば私も同感だ。夢の国なんて行ったことないけれど……。
「ま、私は妹が生まれる前に何度も連れて行ってもらっているし、いいのよ。お土産も頼んであるし。……さすがにJKとしては親と遊園地って、ね?」
そんな話をしつつもテレビからはがっつりAVが流れており、中学生二人が食い入るように見ている。いや、ダメでしょ。
「そうだ、今日もケーキ用意してるよ。凍らせておいた小松菜砕いて生地に混ぜててね――」
「あいや、それには及ばないよ。日本茶、欲しいな」
武藤先輩が紙袋を掲げる。
「かじゅちゃんいつもそうよね。もう、万梨ちゃんはどうする?」
「あ、じゃあケーキいただきます」
「ありがと。万梨ちゃんはいい後輩ね。そうそう、レコードプレーヤーならそこにあるから、さっそく再生してごらん」
「良かったな、万梨。当初の目的は達成せしめたんだから、これからはAV研で頑張っていこうな」
思わず渋い表情になってしまう。正直、一昨日も集まりに顔を出した(黒崎さんに連れていかれた)わけだが、この集まりが何をする集まりなのかは未だによく分かっていない。ひとまず、レコードプレーヤーにレコードをセットして針を落とす。操作はいたってシンプルで見たままだった。
「愛の挨拶ね」
ティーカップに入った緑茶を乗せたトレイを持った白石先輩が呟く。音楽の授業でも聞く定番のクラシックがレコードから流れている。まぁテレビから流れるAVの方が、音が大きいのだが……。
「じゃ。食べたら活動すっぞ!」
……いや、だから活動ってなんなの!?
駅前商店街が北へ伸び、終点で国道とぶつかる。それ以外にはスポーツジムとかマンションとかが立ち並ぶ、地方の駅って感じの場所なのだが……。
「あの、青木先輩……白石先輩の家って」
「あのマンションの一室だよ」
駅直結の高層マンション、エレベーターすら広く、私、青木先輩、武藤先輩、黒崎さん、みどりちゃんとももかちゃんの六人で乗ってもまだ余裕がある。
「武藤先輩、大荷物ですよね」
「これ和菓子の永木庵の詰め合わせ。ほら、久遠ちゃんの出すケーキってクセがあるから」
私はわりと好きだが白石先輩のケーキはやはり好き嫌いが分かれるらしい。
「いらっしゃい。どうぞ上がって」
白石先輩は白いブラウスに淡いグリーンのロングスカートと、たいへん清楚な恰好をしていた。本当にお嬢様なんだなぁと場違いな感想を抱いてしまう。
「……なんだか物が少ない」
お金持ちの家ってもっとごちゃごちゃしているイメージがあったが、通されたリビングにはダイニングセットとソファ、大きなテレビとブルーレイレコーダーとゲーム機の入ったテレビ台があるくらいだ。
「テレビ、大きい……何インチあるんですか?」
「うーん、65インチだっけかな。正直大きすぎてソファでは見ないね。ダイニングから見るくらいでちょうどいいもの」
確かに、ソファからテレビまで1メートルちょっとくらいの距離だが、その距離ですら近く感じるほど画面が大きい。まだ何も映していないテレビを見ていると、青木先輩がリモコンを操作して地上波のニュースを流し始めた。
「この家、何がすごいかってデジタルチューナーがそこにあるだろ? BSとかCSを見るための。プランが何通りかあって見られるチャンネルに差があるんだけど、一番上のプランに入ってるからどのチャンネルでも見られるんだよ」
そう言って番組表を開くと、確かにそこには邦画、洋画、時代劇、韓流ドラマ、アニメ、音楽ライブなどありとあらゆる専門チャンネルすら視聴可となっていた。
「そして何とAVも見られる」
そう言って先輩がチャンネルを合わせると、画面にはコトに及んでいる男女の映像が流れる。
「ちょ、ちょちょ!! 先輩の家族とかいないんですか!?」
「大丈夫だよ~。妹連れて舞浜に行ってるから」
夢の国!!
「あそこ行ったほーが休みはじゅーじつするのに。しろ先輩、あほだよね」
「みどりちゃん!!」
毒を吐くみどりちゃんと、彼女を窘めるももかちゃん。正直に言えば私も同感だ。夢の国なんて行ったことないけれど……。
「ま、私は妹が生まれる前に何度も連れて行ってもらっているし、いいのよ。お土産も頼んであるし。……さすがにJKとしては親と遊園地って、ね?」
そんな話をしつつもテレビからはがっつりAVが流れており、中学生二人が食い入るように見ている。いや、ダメでしょ。
「そうだ、今日もケーキ用意してるよ。凍らせておいた小松菜砕いて生地に混ぜててね――」
「あいや、それには及ばないよ。日本茶、欲しいな」
武藤先輩が紙袋を掲げる。
「かじゅちゃんいつもそうよね。もう、万梨ちゃんはどうする?」
「あ、じゃあケーキいただきます」
「ありがと。万梨ちゃんはいい後輩ね。そうそう、レコードプレーヤーならそこにあるから、さっそく再生してごらん」
「良かったな、万梨。当初の目的は達成せしめたんだから、これからはAV研で頑張っていこうな」
思わず渋い表情になってしまう。正直、一昨日も集まりに顔を出した(黒崎さんに連れていかれた)わけだが、この集まりが何をする集まりなのかは未だによく分かっていない。ひとまず、レコードプレーヤーにレコードをセットして針を落とす。操作はいたってシンプルで見たままだった。
「愛の挨拶ね」
ティーカップに入った緑茶を乗せたトレイを持った白石先輩が呟く。音楽の授業でも聞く定番のクラシックがレコードから流れている。まぁテレビから流れるAVの方が、音が大きいのだが……。
「じゃ。食べたら活動すっぞ!」
……いや、だから活動ってなんなの!?
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