キスから始まる異世界ハーレム冒険譚

楠富 つかさ

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第二十六話 ユールのお悩み相談室(仮)

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 この世界での甘味についてはまだまだ詳しくないのだけれど、出されたケーキはなかなか美味しいものだった。
 甘み自体は砂糖のしっかりとした甘みというよりは芋とかかぼちゃみたいな優しい味わい。これが紅茶らしき飲み物のすっきりとした飲み口とよく合う。見た目はスポンジケーキみたいな感じなのだが、実際に食べてみるとわりと固くてパイやタルトに近い雰囲気なのは驚いたが。

「さぁて、悩みの前にやっぱり名前を聞かせてくれる?」
「は、はい……あの、レイっていいます」

 おぉ、名前も日本風だ。少なくとも私が名乗るユールよりよっぽど、字面が日本人。まぁ、光を英語で言うとレイだっけ。あとハワイでもらう花輪もレイだったような。あと綾波。
 そんなレイが食べているケーキはチーズケーキっぽいものだ。白くて柔らかそうなレアチーズケーキに、ベリーソースがかかっている。地球でもあるような雰囲気のものだが、味はどういった違いがあるのだろうか。

「えっと、一口食べます?」
「いいの? じゃあ、交換ね」

 フォークの形状はこっちの世界も一緒で、突き刺したケーキの欠片を差し出す。少しだけ恥ずかしそうな表情を浮かべながらケーキに食いつく。

「ど、どうぞ」

 私がそうしたからか、レイからあーんしてくれて、私もチーズケーキにぱくつく。わりと酸っぱい。チーズよりヨーグルト寄りな味わい。どちらにせよおそらくミルク由来のものなのだろう、酸っぱさの奥に確かな乳感とコクがある。ベリーソースも若干酸っぱく、後味がさっぱりと言えば聞こえはいいが……。

「流石に地球のものと比べるのは酷か」
「え?」
「あぁ、いやなんでもないよ。ささ、お悩み相談のお時間だよ」

 うっかり口に出いてた感想をごまかしつつ、レイに話を促す。

「私……シスター向いてないかもしれなくて……」
「そんな! さっきの治療だってすごく手際良かったのに」
「……治癒術はわりと得意なんですけど……その、笑わないで聞いてくれますか?」

 真剣な彼女の表情に、私はフォークを皿に置いて深く頷いた。

「実は……私、おっぱいが好きなんです」
「私もだよ!!」
「っぷふ、なんですかその力強い同意は。私が笑っちゃったじゃないですか」

 聞けばレイは幼い頃に母を亡くして孤児院で育ったらしい。そのまま見習いを経てシスターになったレイだったが、見習いの頃からすでにおっぱい好きだったらしい。

「本当にたまたま偶然だと思うんですけど、私の勤める教会には豊かな人が多くて……その、母性というか女性らしさというか、そういうのに劣情を抱いてしまって……集中できなくて。シスターの服って肌は隠すわりに体形は隠さないから、気になってしまって……。もう、シスターなんてやめて冒険者になろうかと……。主は同性愛には寛容ですが怠惰な者には厳しいので」

 主はおそらくハートロード教の唯一神である女神ハートロードのことだろう。シスターって簡単に辞められるのだろうか。ソニアに質問してみると、

「主は来るもの拒まず去るもの追わず、なので」

 という返答だった。ある意味これも、主の導きというやつだろうか。

「じゃあさレイ、私たちと一緒に来ない?」
「……え?」

 逡巡するソニアは紅茶を一口飲んでから口を開いた。

「ユールさんたちは、あと何日この街に滞在しますか?」
「逆に聞くけど、レイは何日欲しいの? 考える時間が欲しいんでしょう?」
「……えぇ、では、その……三日、やっぱり二日ください」

 そう答えたレイに、私は宿泊している宿の名前を告げ、会計を済ませてカフェを去った。
 来るか来ないかは、あとはレイ次第だ。
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